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スポーツの産業化に不可欠なこと…慶大野球部・大久保監督の提言

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↑慶大・大久保秀昭監督

 「指導者は安全や医療について、もっともっと勉強しなくてはいけない」。18日、都内で行われた日本スポーツ臨床医学会の講演で、慶応大野球部の大久保秀昭監督は強調した。同野球部は東京六大学秋のリーグ戦で、2014年春以来7季ぶり35度目の優勝を果たした。大久保監督は近鉄でプレーし、社会人のJX―ENEOSの監督として都市対抗で3度優勝した実績がある。

 2015年に監督に就任した大久保氏は大学野球部を運営する上で、けがの予防と対策が大きな課題と感じている。投手では球数管理、球速、フォームの観察などを徹底しているが、それでも安全確保やけがの予防などに様々なリスクを抱えている。慶応大には医学部はあるが、部活動との連携は不十分だという。名門を率いる大久保氏でも安全管理において難しいマネジメントを強いられている。

 味の素ナショナルトレーニングセンター(東京・北区)での事故も相次いでいる。6月にはバレーボールの合宿中に、剥がれた床板が男子選手の右太ももに刺さる大けがをした。9月には、男子レスリング日本代表の合宿中、拓大の男子選手が頸椎(けいつい)損傷の重傷を負った。国が管理する場所でさえ、事故は起こる。けがの予防と早期の治療、支援のための制度設計…など課題は山積する。

 メジャースポーツの中では、野球の育成システムが一番遅れているのではないか。新聞には「5連投、完全燃焼」、「200球熱投」などの見出しが躍る。現場の監督や選手は勝つことを追求するのは当然だろう。ただ、かつての慣習や組織の規模が大きいことも一因となり安全管理が徹底されていないケースもある。

 法政大アメリカンフットボール部では、医療分野とITを組み合わせた連携を行っている。慈恵医科大などの研究チームと共同で脳しんとうの状況を現場で記録し、確認できるアプリを開発した。激しい衝突を伴うアメフットでは死亡事故につながる可能性もある。選手の体調を関係者で共有することで、予防や対策を取ることが可能となる。

 スポーツの価値は他産業との協力によって、今後もさらに高まることが期待されている。スポーツ団体のガバナンスが整備されれば、スポーツ市場への参入を目指す民間事業者にとっては「投資」の価値も生まれてくる。医療、IT関係者ら外部からの参加者が増えれば必ず変わる。

 「みなさんと一緒にやりましょう」。スポーツ庁の鈴木大地長官はあいさつなどでこう呼び掛けている。各団体、各業界との「協調」こそが、今後のスポーツ界に必要なことではないか。(記者コラム)

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