日本野球機構（ＮＰＢ）と米大リーグ機構（ＭＬＢ）間のポスティングシステムに関する改定交渉が大筋合意したことが９日、分かった。
今オフはＭＬＢ球団がＮＰＢ球団に支払う譲渡金を最大２０００万ドル（約２３億円）とする現行ルールを継続し、来オフから新制度採用の見通し。今オフは日本ハムの大谷翔平投手（２３）らがメジャー移籍を目指すが、球団に従来通りの譲渡金が入る事実上の「大谷ルール」導入で、移籍への流れが加速しそうだ。
情勢が不透明だったポスティング改定に、着地点が見えてきた。米国時間８日のＡＰ通信によると、ＭＬＢとＮＰＢは、今オフは従来通りに日本の球団が譲渡金の上限を２０００万ドルに設定し、支払う意思のある全ての大リーグ球団が選手と交渉できる内容で合意したという。最終的にはＭＬＢ選手会の同意を得た上で、オーナー会議での承認が必要だとしている。システムの根本的な変更も予想されていたが、“据え置き”という形になったことで、今後の手続きはスムーズに進むとみられる。
ポスティング制度について定めた「日米間選手契約に関する協定」は、５月から改定協議を進めてきたが、１０月３１日でいったん失効。協議は継続されており、日米間の合意により申請手続きなどの動きは“凍結”されていた。すでに大谷や西武・牧田がポスティングによるメジャー行きの意思を示しており、それぞれ球団も容認の構えを見せていたが、移籍先の大リーグ球団から支払われる譲渡金に関するルールが定まらないままだった。
ＮＰＢの井原敦事務局長は「最終的な回答をＭＬＢ側に送り、返答を待っている状態」としており、９日までにＭＬＢからの回答は来ていないという。
譲渡金を巡ってはこれまでの交渉で「契約金と総年俸、出来高払いを含めた総額の１５％」とするＡ案と、「契約総額１億ドル（約１１０億円）未満なら１５％、１億ドル以上なら一律２０００万ドル」とするＢ案がＭＬＢ側から示され、ＮＰＢ側はＡ案を軸に検討を重ね、交渉は最終段階を迎えていた。
仮にＡ案が今オフから適用された場合、ＭＬＢとＭＬＢ選手会の新労使協定により、２５歳未満の海外選手である大谷は契約金が最大５７５万ドル（約６億４０００万円）のマイナー契約しか結べないことから、日本ハムに渡る１５％の譲渡金もきわめて低額にとどまる可能性があった。今回は事実上の「大谷ルール」として、新協定に添える覚書などの形で、１年限りの現状維持が認められる見通し。日本ハムは“満額”の２０００万ドルを得ることが確実。大谷はすでに代理人の選定も済ませるなど準備を進めているが、これで移籍への障害はほぼなくなった。
◆ポスティング・システム（入札制度）の変遷
▼１９９８年 ＦＡ権行使もしくは自由契約以外の選択肢として入札制度を同年１１月１日から実施することを日米間で合意。所属球団への譲渡金に上限はなく、最高額を提示した１球団が交渉権を得ることになった。
▼２０００年 オフにオリックス・イチローが同制度によりマリナーズに移籍。
▼１３年 入札金の高騰と入札球団との破談を防ぐため、日米間で見直し交渉を開始し、同年１２月に新制度を正式に締結。譲渡金の最高額を２０００万ドルとし、支払う意思のあるすべてのメジャー球団と交渉できることになった。この新制度により楽天・田中がヤンキースに移籍。
▼１７年 ５月にＭＬＢ側から改定の申し入れがあり、協議を開始。