↑「オカダ・カズチカを見ていれば間違いないですから!」と言い切る新日本プロレスの主役・オカダ・カズチカ
記者をしていると、聞いたとたん「野暮なこと聞いたなあ」と思う瞬間が数多くある。
新日本プロレスにカネの雨を降らせる「レインメーカー」IWGP王者のオカダ・カズチカ(29)には、何回も交際中の女性アナウンサーのことを聞いては「相手もあることなんで、簡単に答えられなくてすみません」と謝られ、「大ケガをすることの怖さは?」と聞いては、「怖さ? 全然ないですよ。僕、元気ですから。プロレスラーは超人ですから」と何回も一笑に付されてきた。
でも、こちらもしつこさでは負けていない。8月29日の夜、本紙の大型インタビュー欄の取材で72分間に渡って、じっくり話を聞く機会ができた。これはチャンスだ―。意気込んで、インタビューに臨んだ。
主題は10月9日、東京・両国国技館でEVIL(30)の挑戦を受けるIWGPヘビー級選手権試合への思いだったが、やはり「あの事」は聞かざるを得ない。
今年に入って、本間朋晃(40)が中心性頸椎(けいつい)損傷、柴田勝頼(37)が硬膜下血腫と新日のスター選手がリング上で負った大ケガで次々と離脱。かつてのスター・高山善廣(50)までも試合中の事故で頸髄(ずい)完全損傷。オカダ自身も新日真夏のシングル総当たり戦「G1クライマックス27」で3度目の優勝を逃した原因は、EVIL戦で負った左首のケガだった。
いまだ患部にサポーターをしてリングに上がるチャンピオン。少なくとも今後10年は日本のプロレス界を引っ張っていくはずの逸材中の逸材に再起不能のケガなんて負って欲しくない―。そんな勝手な思いもあって、また聞いた。
「大ケガをすることの怖さはないですか?」
身長191センチのナイスガイは「またですか」なんて表情は全く見せずに、むしろ笑顔で答えてくれた。
「全然、平気です。最近、プロレスが激しくなったと言われますけど、昔から激しいんですよ。激しく見える派手な技が増えただけで。僕が棚橋(弘至)さんとやっていた時、激しくなかったかと言えば、全然、激しかったですし。試合時間も長くなってますけど、短かったら、ケガしないかと言えば、ケガしますし―」一気に言うと、「正直、プロレスって危険じゃないことってない。蹴ることでも頭ぶつけちゃったら、もしかしたら危ないし。僕は大丈夫ですから」と続けた。
さらに「相手に大きなケガさせてしまう怖さは?」と聞くと、「ケガが怖くてって、ピッチャーで言えば内角禁止って言っているようなもんじゃないですか。外角しか投げないみたいな。お互いケガさせてやるなんて思ってないし―」。さすがは2014年の西武―日本ハム戦で始球式に登場した際、リングコスチュームで106キロの速球を投げ込んだ野球好きらしい言葉で答えてくれた。
「チャンピオンとして記憶に残ることが一番大事。今だにプロレスは痛そうだから見られないとか、血が出るんでしょとか、もちろん痛いし、血が出ることもあるんですけど、そういう人ほど実際、見ちゃうと熱くなっている気がするんです。生でライブで味わってもらいたいってのがありますよね」と熱く語る「レインメーカー」にとって、ケガより怖いものがあることが、じっくり話しているうちに分かってきた。
「いろんな人に知ってもらいたいです。プロレスを、オカダ・カズチカを。こうやって一生懸命戦っている中で見てもらえないと、戦っている意味もないですし。一生懸命、60分戦っても地球上で10人しか見てなかったら、たまらないじゃないですか」
これこそがスーパースターの本音。もし、常に命がけで相手の技を受け、かわし、そして、自身のフィニッシュ・ホールドで相手をマットに沈める最高の瞬間に、誰も関心を示してくれなくなったら―。
身体一つでリングに上がり、時には東京ドームを埋めた2万人の視線を一身に集めるオカダにとって、ケガより怖いのは、観客の自身のファイトへの無関心なのだ。
オカダの思いは全ての誇り高きプロレスラーの思いでもある。2009年6月13日、タッグマッチで受けた相手選手の急角度バックドロップのため、頸髄離断で亡くなった三沢光晴さん(享年46)もまた、ケガを全く恐れないファイターだった。
自身に降り注ぐファンの歓声のためだけにある全力ファイト。全ての答えは「オカダ・カズチカを見ていれば間違いないですから!」と言う本気そのものの言葉の中にある。
「レインメーカー」の本音をたっぷり聞けた72分間。こちらも、もう「ケガの恐怖は?」と言う野暮な質問とは、サヨナラをしよう。(記者コラム・中村 健吾)
記者をしていると、聞いたとたん「野暮なこと聞いたなあ」と思う瞬間が数多くある。
新日本プロレスにカネの雨を降らせる「レインメーカー」IWGP王者のオカダ・カズチカ(29)には、何回も交際中の女性アナウンサーのことを聞いては「相手もあることなんで、簡単に答えられなくてすみません」と謝られ、「大ケガをすることの怖さは?」と聞いては、「怖さ? 全然ないですよ。僕、元気ですから。プロレスラーは超人ですから」と何回も一笑に付されてきた。
でも、こちらもしつこさでは負けていない。8月29日の夜、本紙の大型インタビュー欄の取材で72分間に渡って、じっくり話を聞く機会ができた。これはチャンスだ―。意気込んで、インタビューに臨んだ。
主題は10月9日、東京・両国国技館でEVIL(30)の挑戦を受けるIWGPヘビー級選手権試合への思いだったが、やはり「あの事」は聞かざるを得ない。
今年に入って、本間朋晃(40)が中心性頸椎(けいつい)損傷、柴田勝頼(37)が硬膜下血腫と新日のスター選手がリング上で負った大ケガで次々と離脱。かつてのスター・高山善廣(50)までも試合中の事故で頸髄(ずい)完全損傷。オカダ自身も新日真夏のシングル総当たり戦「G1クライマックス27」で3度目の優勝を逃した原因は、EVIL戦で負った左首のケガだった。
いまだ患部にサポーターをしてリングに上がるチャンピオン。少なくとも今後10年は日本のプロレス界を引っ張っていくはずの逸材中の逸材に再起不能のケガなんて負って欲しくない―。そんな勝手な思いもあって、また聞いた。
「大ケガをすることの怖さはないですか?」
身長191センチのナイスガイは「またですか」なんて表情は全く見せずに、むしろ笑顔で答えてくれた。
「全然、平気です。最近、プロレスが激しくなったと言われますけど、昔から激しいんですよ。激しく見える派手な技が増えただけで。僕が棚橋(弘至)さんとやっていた時、激しくなかったかと言えば、全然、激しかったですし。試合時間も長くなってますけど、短かったら、ケガしないかと言えば、ケガしますし―」一気に言うと、「正直、プロレスって危険じゃないことってない。蹴ることでも頭ぶつけちゃったら、もしかしたら危ないし。僕は大丈夫ですから」と続けた。
さらに「相手に大きなケガさせてしまう怖さは?」と聞くと、「ケガが怖くてって、ピッチャーで言えば内角禁止って言っているようなもんじゃないですか。外角しか投げないみたいな。お互いケガさせてやるなんて思ってないし―」。さすがは2014年の西武―日本ハム戦で始球式に登場した際、リングコスチュームで106キロの速球を投げ込んだ野球好きらしい言葉で答えてくれた。
「チャンピオンとして記憶に残ることが一番大事。今だにプロレスは痛そうだから見られないとか、血が出るんでしょとか、もちろん痛いし、血が出ることもあるんですけど、そういう人ほど実際、見ちゃうと熱くなっている気がするんです。生でライブで味わってもらいたいってのがありますよね」と熱く語る「レインメーカー」にとって、ケガより怖いものがあることが、じっくり話しているうちに分かってきた。
「いろんな人に知ってもらいたいです。プロレスを、オカダ・カズチカを。こうやって一生懸命戦っている中で見てもらえないと、戦っている意味もないですし。一生懸命、60分戦っても地球上で10人しか見てなかったら、たまらないじゃないですか」
これこそがスーパースターの本音。もし、常に命がけで相手の技を受け、かわし、そして、自身のフィニッシュ・ホールドで相手をマットに沈める最高の瞬間に、誰も関心を示してくれなくなったら―。
身体一つでリングに上がり、時には東京ドームを埋めた2万人の視線を一身に集めるオカダにとって、ケガより怖いのは、観客の自身のファイトへの無関心なのだ。
オカダの思いは全ての誇り高きプロレスラーの思いでもある。2009年6月13日、タッグマッチで受けた相手選手の急角度バックドロップのため、頸髄離断で亡くなった三沢光晴さん(享年46)もまた、ケガを全く恐れないファイターだった。
自身に降り注ぐファンの歓声のためだけにある全力ファイト。全ての答えは「オカダ・カズチカを見ていれば間違いないですから!」と言う本気そのものの言葉の中にある。
「レインメーカー」の本音をたっぷり聞けた72分間。こちらも、もう「ケガの恐怖は?」と言う野暮な質問とは、サヨナラをしよう。(記者コラム・中村 健吾)