↑「桑田パイレーツ」の桑田真澄投手
甲子園が終わり、秋の到来を感じていた夏の最後に、1人の伝説のエースが私の心を躍らせた。元巨人や米パイレーツなどで活躍したスポーツ報知評論家の桑田真澄氏(49)だ。「プレー」「言葉」「態度」。3つの一流さに触れ、スーパースター性を目前で感じた瞬間だった。
現役時代、大勢の観客の前で背番号18を背負った男は3日、国内最大級の軟式野球大会「MLBドリームカップ2017」に参加した。自身が会長を務めていた「麻生ジャイアンツボーイズ」の教え子や、東大野球部OBらと結成した「桑田パイレーツ」というチームで、1回戦のヴィクトリア選抜戦に先発出場した。
硬式野球経験者の桑田氏からすると、軟式野球は不慣れなはずだ。ボールの形状も違うことから、さすがに慣れるまでは手こずってしまうのではと感じていた。だが、その私の考えは一瞬にして打ち崩された。あの頃をほうふつとさせる投球に思わず、対戦する打者もニヤけていた。先頭打者を、宝刀のカーブで空振り三振に斬ると、2番、3番を二飛に打ち取り3者凡退。1球ごとに観客から歓声があがり、1回を終えベンチに戻ると、拍手に包まれた。
2回からは遊撃でプレーした。相手の野手がフライを捕球ミスする場面を見て「軟式の球はグラブの網の部分で捕らないとうまく取れない」と試合中に判断。その後、自らにフライが飛んできたが、きっちりと捕球した。試合は惜しくも3―4で敗れたが、軟式の癖を試合中に見抜き、難なくプレーする姿には思わず私も、観客とともに拍手をしてしまった。
桑田氏が残したいくつかの言葉に胸が熱くなった。「やっぱり野球は楽しいなと感じました」。試合後の第一声、野球少年に戻ったかのような笑顔で言った。語り出すと止まらなかった。「野球には2つが大事。プレーを楽しむこと。勝負の厳しさを味わうこと」。野球が大好きだということが表情と言葉から伝わってきた。そして最後に、この日の試合について「ん~悔しかったけど、楽しかったですね」。桑田氏自身も改めて2つの大事なことを再確認したようだった。
「神対応」ぶりにも人柄を感じた。試合前練習で、桑田氏を見ようと駆けつけたファンに時折、声をかけるなど丁寧に対応した。試合後には自らの意志で「少し時間を取ろう。サイン対応するよ」とマネジャーに提案。一瞬にして長蛇の列が出来上がった。
取材後、マネジャーが桑田氏に、私を紹介してくれた。桑田氏は、その「伝説の右腕」で私の右肩を2度叩いて、柔らかな表情でこう言った。「がんばってね」。たった6文字だったが、その言葉が、その表情が、そのにおいが、ずっとその場に残り、しばらく動けない自分がいた。今も忘れられない。自分のなりたかった「背中で語る男」ってこういうことか。桑田氏から教えてもらった、記者1年目の夏の終わりだった。(記者コラム・小林 圭太)
甲子園が終わり、秋の到来を感じていた夏の最後に、1人の伝説のエースが私の心を躍らせた。元巨人や米パイレーツなどで活躍したスポーツ報知評論家の桑田真澄氏(49)だ。「プレー」「言葉」「態度」。3つの一流さに触れ、スーパースター性を目前で感じた瞬間だった。
現役時代、大勢の観客の前で背番号18を背負った男は3日、国内最大級の軟式野球大会「MLBドリームカップ2017」に参加した。自身が会長を務めていた「麻生ジャイアンツボーイズ」の教え子や、東大野球部OBらと結成した「桑田パイレーツ」というチームで、1回戦のヴィクトリア選抜戦に先発出場した。
硬式野球経験者の桑田氏からすると、軟式野球は不慣れなはずだ。ボールの形状も違うことから、さすがに慣れるまでは手こずってしまうのではと感じていた。だが、その私の考えは一瞬にして打ち崩された。あの頃をほうふつとさせる投球に思わず、対戦する打者もニヤけていた。先頭打者を、宝刀のカーブで空振り三振に斬ると、2番、3番を二飛に打ち取り3者凡退。1球ごとに観客から歓声があがり、1回を終えベンチに戻ると、拍手に包まれた。
2回からは遊撃でプレーした。相手の野手がフライを捕球ミスする場面を見て「軟式の球はグラブの網の部分で捕らないとうまく取れない」と試合中に判断。その後、自らにフライが飛んできたが、きっちりと捕球した。試合は惜しくも3―4で敗れたが、軟式の癖を試合中に見抜き、難なくプレーする姿には思わず私も、観客とともに拍手をしてしまった。
桑田氏が残したいくつかの言葉に胸が熱くなった。「やっぱり野球は楽しいなと感じました」。試合後の第一声、野球少年に戻ったかのような笑顔で言った。語り出すと止まらなかった。「野球には2つが大事。プレーを楽しむこと。勝負の厳しさを味わうこと」。野球が大好きだということが表情と言葉から伝わってきた。そして最後に、この日の試合について「ん~悔しかったけど、楽しかったですね」。桑田氏自身も改めて2つの大事なことを再確認したようだった。
「神対応」ぶりにも人柄を感じた。試合前練習で、桑田氏を見ようと駆けつけたファンに時折、声をかけるなど丁寧に対応した。試合後には自らの意志で「少し時間を取ろう。サイン対応するよ」とマネジャーに提案。一瞬にして長蛇の列が出来上がった。
取材後、マネジャーが桑田氏に、私を紹介してくれた。桑田氏は、その「伝説の右腕」で私の右肩を2度叩いて、柔らかな表情でこう言った。「がんばってね」。たった6文字だったが、その言葉が、その表情が、そのにおいが、ずっとその場に残り、しばらく動けない自分がいた。今も忘れられない。自分のなりたかった「背中で語る男」ってこういうことか。桑田氏から教えてもらった、記者1年目の夏の終わりだった。(記者コラム・小林 圭太)