↑秋からは遊撃に挑戦中の和光高・室橋。逆一本足打法は健在だ
↑これが逆一本足打法の連続写真
「逆一本足打法」を覚えているだろうか。昨夏の西東京大会2回戦、町田小野路球場で行われた和光・狛江戦。和光の「2番・捕手」だった室橋達人(むろはし・たつと、2年)=164センチ、58キロ、右投両打=が、軸足の左足を上げてタイミングを取る打法で、中越え三塁打を放った。珍打法を報じた記事と写真はすぐにヤフートップに上がり、爆発的なページビューを記録。一躍、高校野球ファンの関心を集める事態となった。季節は巡り、室橋は、そして珍打法は今―。個性派球児の現在地を追う。
夏に出会った逆一本足男・室橋は、我が道を進み続けていた。ヘルメットから襟足が飛び出るほど長かった髪は、さっぱりとした短髪に。夏は正捕手だったが、遊撃でノックを受けていた。「ショートは、内野の先輩が抜けたので、秋から挑戦しています」。選手10人という、新チーム事情を受けてのチャレンジだった。
ノックでは、全く構えない体勢から素早くグラブを出してさばくと、一塁へ正確に送球。渡辺忠生監督(49)は「やること、みんな目立っちゃう。遊撃の守備も普通と違うでしょ」と笑う。ひときわ目立つ存在感は、あの夏のままだ。
あくなき好奇心と独創性が、逆一本足打法を生んだ。誕生は高1の冬。「もともと軸足への体重移動が苦手で、いろいろと試していました」。全て自分自身で試行錯誤し、たどり着いた。初めは矯正されると思い、こっそりと“闇練”を重ね、春の練習試合で披露。確かな結果を残した。初見で面食らった指揮官も「おふざけかと思って話を聞いたら、本人は大真面目で。自分で考えて、それで打てているのなら」と後押しした。
夏に珍打法が報道されると、当初は反響の大きさに戸惑った。それでも渡辺監督やナインは「そのままでいい」と励ましてくれた。親戚はスポーツ報知に載った写真を用いて「Break the common sense」(常識を破れ)と記した写真入りTシャツを作ってくれた。「自分はこれで大丈夫」と思えるようになり、今では迷うことなく、己のやり方を貫き通す。
野球以外でも異才を発揮する。絵画では細さが特徴のミリペンで、好きな自動車をデッサン。中学からギター、ベースに熱中し、高1の文化祭では「the pillows」の曲をステージで披露した。休日は趣味の自転車で、自宅のある町田から江の島まで旅に出る。「朝は自転車で学校に行って、授業受けて、部活して。帰ったら絵を描いて、ギターの練習して…毎日、本当に忙しいです」。やりたいことが多すぎて、24時間では足りない。
将来も進みたい道がたくさんある。「この前、美大と農大の見学に行って、どちらも面白そうと思いました。進路は本当に迷っています」。高校野球には最後まで打ち込むと決めている。
野球での目標に、サク越えの本塁打と即答した。「小柄なので打ったことがないんです。できないことをやってみたいし、できるようになりたい」。チームは11年を最後に夏の大会で未勝利。「最後の夏は勝ちたい」と室橋。逆一本足球児の青春は、これからが本番を迎える。(原島 海)
◆教育方針は個性の尊重
和光高は東京・町田市にある私立高。幼小中高大を幅広く手がける学校法人和光学園を母体とし、1950年に開校した。教育方針に「個性の尊重」を掲げ、私服校、体験型授業や選択学習などの特徴がある。卒業生には数多くの芸能人、文化人を輩出。主な卒業生にはミッキー・カーチス(歌手)、佐藤琢磨(レーシングドライバー)、渡辺裕太(俳優)、菅井円加(バレリーナ)らがいる。
↑これが逆一本足打法の連続写真
「逆一本足打法」を覚えているだろうか。昨夏の西東京大会2回戦、町田小野路球場で行われた和光・狛江戦。和光の「2番・捕手」だった室橋達人(むろはし・たつと、2年)=164センチ、58キロ、右投両打=が、軸足の左足を上げてタイミングを取る打法で、中越え三塁打を放った。珍打法を報じた記事と写真はすぐにヤフートップに上がり、爆発的なページビューを記録。一躍、高校野球ファンの関心を集める事態となった。季節は巡り、室橋は、そして珍打法は今―。個性派球児の現在地を追う。
夏に出会った逆一本足男・室橋は、我が道を進み続けていた。ヘルメットから襟足が飛び出るほど長かった髪は、さっぱりとした短髪に。夏は正捕手だったが、遊撃でノックを受けていた。「ショートは、内野の先輩が抜けたので、秋から挑戦しています」。選手10人という、新チーム事情を受けてのチャレンジだった。
ノックでは、全く構えない体勢から素早くグラブを出してさばくと、一塁へ正確に送球。渡辺忠生監督(49)は「やること、みんな目立っちゃう。遊撃の守備も普通と違うでしょ」と笑う。ひときわ目立つ存在感は、あの夏のままだ。
あくなき好奇心と独創性が、逆一本足打法を生んだ。誕生は高1の冬。「もともと軸足への体重移動が苦手で、いろいろと試していました」。全て自分自身で試行錯誤し、たどり着いた。初めは矯正されると思い、こっそりと“闇練”を重ね、春の練習試合で披露。確かな結果を残した。初見で面食らった指揮官も「おふざけかと思って話を聞いたら、本人は大真面目で。自分で考えて、それで打てているのなら」と後押しした。
夏に珍打法が報道されると、当初は反響の大きさに戸惑った。それでも渡辺監督やナインは「そのままでいい」と励ましてくれた。親戚はスポーツ報知に載った写真を用いて「Break the common sense」(常識を破れ)と記した写真入りTシャツを作ってくれた。「自分はこれで大丈夫」と思えるようになり、今では迷うことなく、己のやり方を貫き通す。
野球以外でも異才を発揮する。絵画では細さが特徴のミリペンで、好きな自動車をデッサン。中学からギター、ベースに熱中し、高1の文化祭では「the pillows」の曲をステージで披露した。休日は趣味の自転車で、自宅のある町田から江の島まで旅に出る。「朝は自転車で学校に行って、授業受けて、部活して。帰ったら絵を描いて、ギターの練習して…毎日、本当に忙しいです」。やりたいことが多すぎて、24時間では足りない。
将来も進みたい道がたくさんある。「この前、美大と農大の見学に行って、どちらも面白そうと思いました。進路は本当に迷っています」。高校野球には最後まで打ち込むと決めている。
野球での目標に、サク越えの本塁打と即答した。「小柄なので打ったことがないんです。できないことをやってみたいし、できるようになりたい」。チームは11年を最後に夏の大会で未勝利。「最後の夏は勝ちたい」と室橋。逆一本足球児の青春は、これからが本番を迎える。(原島 海)
◆教育方針は個性の尊重
和光高は東京・町田市にある私立高。幼小中高大を幅広く手がける学校法人和光学園を母体とし、1950年に開校した。教育方針に「個性の尊重」を掲げ、私服校、体験型授業や選択学習などの特徴がある。卒業生には数多くの芸能人、文化人を輩出。主な卒業生にはミッキー・カーチス(歌手)、佐藤琢磨(レーシングドライバー)、渡辺裕太(俳優)、菅井円加(バレリーナ)らがいる。