↑CSで敗退し引き揚げる鈴木
↑カメラを向けると、防球ネットにぶら下がり懸垂を始めた鈴木
↑真剣な表情を見せる鈴木
度肝を抜かれた。「この前、見かけたぞ!」
8月のとある日、巨人の試合前練習の最中。振り返ると声の主は巨人・鈴木尚広(38)だった。もしや巨人担当カメラマンの身でありながら、友人に誘われ、広島の応援席にいたことでもばれたのか? よく聞くとそうではない。鈴木が都内で車を運転中、パジャマ姿で信号待ちをしている私に気づいたという。時間も場所もまさしく、休日に自宅前のコンビニへ朝食を買いに行っていた私に間違いはなかった。
広島の応援席にいたことがばれていないことにほっと胸をなでおろすと同時に、走行中の風景から私に気づくその観察眼に心底驚いた。「いつも気を張っているからだよ。お前は気を抜きすぎだけどな」。鈴木は冗談っぽく笑っていたが、プロ野球選手の察知力には巨人担当のこの一年、何度も感服させられてきた。
巨人担当の私は、試合だけではなく日常の練習、キャンプ、オフのイベントなど一年中様々な場面で選手の写真を撮り続けている。
その中でファンや読者に良い写真を届けるため、私が心がけていることは“気づかれずに近づく”ことだ。
野球が本業である選手にとって、写真を撮られることはいつまでも慣れないものらしい。自然な表情を撮影するためには、まず気づかれないこと。そして、迫力のある絵を撮るためには近づいて撮影しなければならない。
高い動体視力と鋭い観察眼を持つ選手に気づかれずに近づくことは至難の業だ。身を隠しながら近づいてもすぐに気づかれ、そっぽを向かれたり、時には集中を切らせてしまい怒られることもある。挙句に球場外でも“発見”され、カメラマンとしては恥ずかしい限り。
鈴木は「集中するということは、ぼんやり周りが見えているということ。一方向だけ見ていると盗塁も上手くいかない」と語った。普段からこうした意識で周りを見ていたからこそだろう、練習中に身を隠しながら近づき撮影するカメラマンに気づくと、試合前でも必ず様々なリアクションを取ってくれた。自然な表情を撮ろうという努力はパーだったが、楽しい写真をたくさん撮らせてもらえた。
鈴木を最後に撮ったのは10月10日。CSで敗退したことでシーズンが終了し、東京ドームを引き揚げていく姿だ。引退を決めていたのか、どこか納得のいった安堵したような表情が印象的だった。
思えばこの時初めて自然な表情を撮らせてもらえたのかもしれない。痛いほど思い知らされたプロ野球選手の観察眼。これからも自然な表情を狙って選手にどんどん迫っていきたいと思う。
↑カメラを向けると、防球ネットにぶら下がり懸垂を始めた鈴木
↑真剣な表情を見せる鈴木
度肝を抜かれた。「この前、見かけたぞ!」
8月のとある日、巨人の試合前練習の最中。振り返ると声の主は巨人・鈴木尚広(38)だった。もしや巨人担当カメラマンの身でありながら、友人に誘われ、広島の応援席にいたことでもばれたのか? よく聞くとそうではない。鈴木が都内で車を運転中、パジャマ姿で信号待ちをしている私に気づいたという。時間も場所もまさしく、休日に自宅前のコンビニへ朝食を買いに行っていた私に間違いはなかった。
広島の応援席にいたことがばれていないことにほっと胸をなでおろすと同時に、走行中の風景から私に気づくその観察眼に心底驚いた。「いつも気を張っているからだよ。お前は気を抜きすぎだけどな」。鈴木は冗談っぽく笑っていたが、プロ野球選手の察知力には巨人担当のこの一年、何度も感服させられてきた。
巨人担当の私は、試合だけではなく日常の練習、キャンプ、オフのイベントなど一年中様々な場面で選手の写真を撮り続けている。
その中でファンや読者に良い写真を届けるため、私が心がけていることは“気づかれずに近づく”ことだ。
野球が本業である選手にとって、写真を撮られることはいつまでも慣れないものらしい。自然な表情を撮影するためには、まず気づかれないこと。そして、迫力のある絵を撮るためには近づいて撮影しなければならない。
高い動体視力と鋭い観察眼を持つ選手に気づかれずに近づくことは至難の業だ。身を隠しながら近づいてもすぐに気づかれ、そっぽを向かれたり、時には集中を切らせてしまい怒られることもある。挙句に球場外でも“発見”され、カメラマンとしては恥ずかしい限り。
鈴木は「集中するということは、ぼんやり周りが見えているということ。一方向だけ見ていると盗塁も上手くいかない」と語った。普段からこうした意識で周りを見ていたからこそだろう、練習中に身を隠しながら近づき撮影するカメラマンに気づくと、試合前でも必ず様々なリアクションを取ってくれた。自然な表情を撮ろうという努力はパーだったが、楽しい写真をたくさん撮らせてもらえた。
鈴木を最後に撮ったのは10月10日。CSで敗退したことでシーズンが終了し、東京ドームを引き揚げていく姿だ。引退を決めていたのか、どこか納得のいった安堵したような表情が印象的だった。
思えばこの時初めて自然な表情を撮らせてもらえたのかもしれない。痛いほど思い知らされたプロ野球選手の観察眼。これからも自然な表情を狙って選手にどんどん迫っていきたいと思う。