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【巨人ドラ1・吉川尚輝】〈中〉中学卒業で野球をやめよう―

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↑吉川尚輝

 中学時代の吉川は、父・好(このむ、58)さんが監督を務める羽島フジボーイズ(現・岐阜南ボーイズ)でプレーした。文武両道を掲げるチームで、野球以上に学力へのプレッシャーがのしかかり、3年の夏には野球すら楽しめなくなっていた。家での口数も減り、表情も暗くなっていった。

 中学卒業と共に野球をやめようか―。頭の片隅にそんなことが浮かんだことを、母・陽子さん(51)は見逃さなかった。野球を続けてほしいと思っていた陽子さんは、7月中旬に2週間ほど練習を休ませて、高校野球の地方大会に何試合も吉川を連れて行った。「気持ちが変わってくれればいいと思ったんです」

 母の作戦は当たった。8月になると吉川は両親の前で突然口を開いた。「中京高校に行きたいです」。親元を離れ、寮生活をしなければいけない甲子園の常連校。最初は両親も驚いた。「甲子園に行ける高校で野球をしたかった」。両親は、吉川の人生初めてのお願いを受け入れた。

 中学時代は“転機”が多かった。体が小さかったため、入学と同時に投手を断念。ショートを定位置とするようになった。俊足を生かすため、2年の冬から左打ちに変更した。初のフリー打撃でいきなり右に左に快音を連発し、父も「器用だなと思って、ビックリしちゃった」と目を丸くした。

 中京高進学後は、1年夏からレギュラーを奪取。小中では負けてばかりの弱小チームに所属していたとあって、勝つことの楽しさを覚え、より一層野球に打ち込むようになった。高校1年の頃から気にかけていた中京学院大・近藤正監督(69)も「絶対将来はいい選手になる」と確信していた。甲子園出場の目標はかなわず、3年夏の岐阜大会ベスト4が最高成績。それまで感情を表に出さなかったが、この頃から試合に負けると涙を流すようになった。本気で野球と向き合うようになった証しだった。(安藤 宏太)

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