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【巨人コラム・Gペン】2007年3月30日、ヨシノブVS番長

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「ハマの番長」ことDeNAの三浦大輔投手が引退を表明した。直接取材した経験のない私が一報に触れて思い出したのは、誠に失礼ながら、マウンド上でぼう然とした表情を浮かべて大飛球を見送るシーンだった。

 バックネット裏の記者席で聞いた「カキーン!」という打球音を、今も鼓膜の奥が覚えている。2007年3月30日。横浜スタジアムで行われた横浜―巨人の開幕戦。セレモニーが終わり、主審がプレーボールを告げ、開幕投手の三浦が投げ込んだ初球のスライダーは、珍しく甘く入ったかと思うと次の瞬間には夜空を高々と舞っていた。

 オープニングゲームの初球を狙い打ったのは、トップバッターに起用された高橋由伸現監督だった。普段、あまり感情をあらわにしない男は高々と上げた右手にサムアップポーズを決め、ホームベースを踏んだ後はネクストバッターズサークルにいた谷佳知(現・野球解説者)とハイタッチをしながら雄たけびを上げた。

 開幕戦初回先頭打者初球本塁打。今にして思えば、前年まで2年連続Bクラスに落ち込んだチームを再び常勝軍団に引き上げる号砲になった気がしてならない。

 打率・308、35本塁打、88打点。そして日本記録の初回先頭打者本塁打9本。07年のヨシノブは輝きまくっていた。先輩が番記者を務めていたため、私は野手担当の2番手という立ち位置だったが、何しろ打ちまくったため、記事を書く機会も多かった。

 ある夜、先輩に連れられ、一緒に食事をする機会があった。5歳年上のスーパースターは隣に座った私の緊張を察知したのか、自ら進んで話し掛けてくれた。「北野は慎之助の担当だろ? ちゃんとよくしてもらってるか~?」「実はオレもけっこう書いてもらってるよな。ちゃんと読んでるよ」。手元のおわんがカラになる度、鍋を取り分けてくれる優しさも見せてくれたりも。楽しそうに満面の笑みでトークを展開する姿を見て、クールなイメージは変わった。

 気配りのある優しさと、あの雄たけびに象徴される熱さをもっとファンに伝えたいと思ったが、十分にできなかったのは今も心残りだ。

 24日、横浜スタジアムでの横浜―巨人戦。三浦は引退登板に臨む。由伸監督は思い出すだろうか。あの美しい放物線のことを。

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