埼玉・久喜市「多宝堂」を開院した元日本ハムトレーナーの福田修一さん
福田さんが開院した治療院「多宝堂」は南栗橋駅前にある
室内練習場で福田トレーナーと投球フォームを確認する日本ハム・大谷(2017年11月29日撮影)
投打の“二刀流”で活躍し、今季メジャーに挑戦しているエンゼルス・大谷翔平(23)は昨年は左太もも裏を肉離れするなどケガで苦しむ日々を送った。そのリハビリを担当した福田修一トレーナー(46)も昨年限りで日本ハムを退団、埼玉・久喜市で治療院「多宝堂」を開院した。大谷をそばで見続けてきた福田さんに、大谷の素顔とすごさを聞いた。
昨年2軍のチーフトレーナーを務めていた福田さんは、左太もも裏を肉離れした大谷とリハビリで多くの時間を過ごした。「春先に左のハムストリングにケガしたけど、グレードの大きな肉離れで、引き抜き損傷ってあるんだけど、付け根から引き抜かれたようなそれに近い状態だった。何とかシーズン中に復帰できるように頑張ろうということでした」。
懸命かつ慎重なリハビリが進むと、今度は復帰の時期に注目が集まった。「大谷の復帰をみんなが望んでいた。どうしてもチームの中心選手がいなくなると1軍の勝ち負けに影響を与えるし、現場は起爆剤をほしがっていた」。とりわけ大谷は二刀流で投打でチームの中心だった。下位に低迷していたこともあり、復帰が急がれた。
通常、打者は20打席、投手では20イニングを目安に2軍で調整して復帰するが、大谷はわずか1試合の登板で昇格し、1軍で状態を見極めることになった。「ちゃんと治して100の力が出せるようになって試合に出たいと思っているけど、環境がそうはさせなかったりする。大谷は普通の選手とは違うし、本人も自覚していた。葛藤がないと言ったらウソになると思うけど、本人も80(の状態)で出るしかないと思っていた部分があると思う」
福田さんから見た大谷は素直な好青年だった。「ちゃんと周りの人にも気遣いができるし、ここでこういうことを言っちゃだめだと言うときはグッと我慢出来るし、自分の感情を抑えることも出来る。そして子供のように素直な気持ちを持ち続けて目標に向かえる人だった」。リハビリを進めるにあたって、日本ハムでトレーニングコーチを務め、17年2月にパドレスに“移籍”した中垣征一郎さんと連絡を密にアドバイスをもらった。「中垣さんとは常に相談していました」
福田さんは中垣さんを「体力トレーニングの世界地図を広げられる人」と評して全幅の信頼を置いている。中垣さんのトレーニングメニューで、大谷はスケールアップしたという。大谷の体の特性について福田さんは「可動域が広く柔軟性があるけど、バネをかたく使えることができる」と表現し具体的に説明してくれた。「バネをかたく使うっていうのは、例えば上に跳ぶときに、グニャッ、グニャッって跳ぶのではなく、キッ、キッって跳ぶようなこと。野球は短い時間に大きな力を発揮することが大事でそれができると大きい」
練習メニューをこなしても誰でもそうなれるわけではないという。「トレーニングで出来ても、打つ、投げるといった動作でもそれが出来る選手はそうはいない。頭で分かっていても身に着けられない選手もいる。大谷はあんなに体が大きくても、走って、投げて、打っても自分の体の動きをコントロール出来る」と大谷の素質を語る。そして練習に取り組む姿勢も認めている。「良く練習するしね。グラウンド上だけでなく、見えないところでもちゃんとやっている。ウエートもガッツリやるし、食事も節制できるしコンスタントに取り組んでいる。そういう選手に生き残って欲しいと思ってみていた」。
福田さんは21年間、日本ハムでトレーナーを務めた。多くの選手と接してきた中で天才と思う選手がいる。大谷とダルビッシュだ。「大谷は天才だけど、ダルビッシュはより天才。大谷が頑張って身に着けたことを、ダルは頑張らなくても身に着けてしまう。例えば絵を見て、その横でそっくりに絵を描ける、絵描きで言ったらそういうことが出来るのがダルビッシュ。この人の動きがいいねと思ったら体にそのまま“入れて”表現できる。特徴をつかむのがうまい。みんなが出来ないことができちゃう。大谷も天才だけどダルビッシュと比べたらちょっと泥臭いかな」。2006年はダルビッシュの活躍で、16年は大谷の活躍で日本一を経験しただけに、福田さんにとっては2人とも思い出深い選手だ。
福田さんは昨年末で日本ハムを退団し、埼玉・久喜市の東武線・南栗橋駅近くに治療院「多宝堂」をオープンし代表を務める。妻・照子さんとともに、鍼灸(しんきゅう)、スポーツマッサージなどを施す。肩やひじを痛めた野球少年の治療に加え、経験をもとにケガをしない体作りなどのアドバイスを行う。その一方で地元の高齢者を対象に、いつまでも自力で動くための体作りや健康サポートも行うなど、様々な取り組みを行っている。
5月には渡米して、中垣さんと面会し大谷の活躍を見届ける予定だ。「頑張って欲しいよね。日本を代表する選手だし、昨年大きなケガをした中でもいっぱい学んで吸収したこともあるだろうし、その経験が絶対生きると思う」。大谷のメジャー挑戦と時を同じく、福田さんも環境を変えた。今まで培ってきた経験を次のステージで“還元”するために、新たな一歩を踏み出している。(コンテンツ編集部・高柳 義人)
福田さんが開院した治療院「多宝堂」は南栗橋駅前にある
室内練習場で福田トレーナーと投球フォームを確認する日本ハム・大谷(2017年11月29日撮影)
投打の“二刀流”で活躍し、今季メジャーに挑戦しているエンゼルス・大谷翔平(23)は昨年は左太もも裏を肉離れするなどケガで苦しむ日々を送った。そのリハビリを担当した福田修一トレーナー(46)も昨年限りで日本ハムを退団、埼玉・久喜市で治療院「多宝堂」を開院した。大谷をそばで見続けてきた福田さんに、大谷の素顔とすごさを聞いた。
昨年2軍のチーフトレーナーを務めていた福田さんは、左太もも裏を肉離れした大谷とリハビリで多くの時間を過ごした。「春先に左のハムストリングにケガしたけど、グレードの大きな肉離れで、引き抜き損傷ってあるんだけど、付け根から引き抜かれたようなそれに近い状態だった。何とかシーズン中に復帰できるように頑張ろうということでした」。
懸命かつ慎重なリハビリが進むと、今度は復帰の時期に注目が集まった。「大谷の復帰をみんなが望んでいた。どうしてもチームの中心選手がいなくなると1軍の勝ち負けに影響を与えるし、現場は起爆剤をほしがっていた」。とりわけ大谷は二刀流で投打でチームの中心だった。下位に低迷していたこともあり、復帰が急がれた。
通常、打者は20打席、投手では20イニングを目安に2軍で調整して復帰するが、大谷はわずか1試合の登板で昇格し、1軍で状態を見極めることになった。「ちゃんと治して100の力が出せるようになって試合に出たいと思っているけど、環境がそうはさせなかったりする。大谷は普通の選手とは違うし、本人も自覚していた。葛藤がないと言ったらウソになると思うけど、本人も80(の状態)で出るしかないと思っていた部分があると思う」
福田さんから見た大谷は素直な好青年だった。「ちゃんと周りの人にも気遣いができるし、ここでこういうことを言っちゃだめだと言うときはグッと我慢出来るし、自分の感情を抑えることも出来る。そして子供のように素直な気持ちを持ち続けて目標に向かえる人だった」。リハビリを進めるにあたって、日本ハムでトレーニングコーチを務め、17年2月にパドレスに“移籍”した中垣征一郎さんと連絡を密にアドバイスをもらった。「中垣さんとは常に相談していました」
福田さんは中垣さんを「体力トレーニングの世界地図を広げられる人」と評して全幅の信頼を置いている。中垣さんのトレーニングメニューで、大谷はスケールアップしたという。大谷の体の特性について福田さんは「可動域が広く柔軟性があるけど、バネをかたく使えることができる」と表現し具体的に説明してくれた。「バネをかたく使うっていうのは、例えば上に跳ぶときに、グニャッ、グニャッって跳ぶのではなく、キッ、キッって跳ぶようなこと。野球は短い時間に大きな力を発揮することが大事でそれができると大きい」
練習メニューをこなしても誰でもそうなれるわけではないという。「トレーニングで出来ても、打つ、投げるといった動作でもそれが出来る選手はそうはいない。頭で分かっていても身に着けられない選手もいる。大谷はあんなに体が大きくても、走って、投げて、打っても自分の体の動きをコントロール出来る」と大谷の素質を語る。そして練習に取り組む姿勢も認めている。「良く練習するしね。グラウンド上だけでなく、見えないところでもちゃんとやっている。ウエートもガッツリやるし、食事も節制できるしコンスタントに取り組んでいる。そういう選手に生き残って欲しいと思ってみていた」。
福田さんは21年間、日本ハムでトレーナーを務めた。多くの選手と接してきた中で天才と思う選手がいる。大谷とダルビッシュだ。「大谷は天才だけど、ダルビッシュはより天才。大谷が頑張って身に着けたことを、ダルは頑張らなくても身に着けてしまう。例えば絵を見て、その横でそっくりに絵を描ける、絵描きで言ったらそういうことが出来るのがダルビッシュ。この人の動きがいいねと思ったら体にそのまま“入れて”表現できる。特徴をつかむのがうまい。みんなが出来ないことができちゃう。大谷も天才だけどダルビッシュと比べたらちょっと泥臭いかな」。2006年はダルビッシュの活躍で、16年は大谷の活躍で日本一を経験しただけに、福田さんにとっては2人とも思い出深い選手だ。
福田さんは昨年末で日本ハムを退団し、埼玉・久喜市の東武線・南栗橋駅近くに治療院「多宝堂」をオープンし代表を務める。妻・照子さんとともに、鍼灸(しんきゅう)、スポーツマッサージなどを施す。肩やひじを痛めた野球少年の治療に加え、経験をもとにケガをしない体作りなどのアドバイスを行う。その一方で地元の高齢者を対象に、いつまでも自力で動くための体作りや健康サポートも行うなど、様々な取り組みを行っている。
5月には渡米して、中垣さんと面会し大谷の活躍を見届ける予定だ。「頑張って欲しいよね。日本を代表する選手だし、昨年大きなケガをした中でもいっぱい学んで吸収したこともあるだろうし、その経験が絶対生きると思う」。大谷のメジャー挑戦と時を同じく、福田さんも環境を変えた。今まで培ってきた経験を次のステージで“還元”するために、新たな一歩を踏み出している。(コンテンツ編集部・高柳 義人)