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3軍スタートのドラ1鍬原を支える大先輩・阿部からの言葉「一緒にお立ち台」

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阿部との対談時の写真とメッセージ入りの色紙を手に笑顔を見せる鍬原(カメラ・中島 傑)

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中大の先輩である高木豊氏(左)と阿部(右)の話を緊張した表情で聞く鍬原

 昨年末、都内のホテルの一室で、巨人からドラフト1位指名を受けた鍬原拓也投手(21=中大)が、緊張した面持ちで母校の大先輩を待っていた。今年の正月の紙面を飾る阿部慎之助選手との対談のためだ。そして進行役には、さらに先輩で野球解説者の高木豊氏。緊張するのが当たり前の環境だった。

 対談の前に食事をとった。当然のごとく鍬原投手の食事のペースが遅い。食べ物がのどを通らないのだろう。カメラマンの私はファインダー越しに鍬原投手の緊張が手に取るように分かった。笑い声は聞こえるが顔が引きつっていて笑えていない。対談の最後に阿部選手、鍬原投手の2人での写真撮影を予定していたので、それまでに緊張がほぐれて欲しいと願ったが、最後まで引きつった表情はそのままだった。

 撮影で阿部選手が鍬原投手にメッセージを書いた色紙を手渡した。そこに書かれていた言葉は「一緒にお立ち台」だった。お立ち台は1軍に登録され、さらに試合に出場し、そして試合を決めたヒーローのみが上がれる特別な場所だ。ルーキーの鍬原投手には乗り越えなければならない壁がいくつもある。しかし、昨年2000安打を達成し400本塁打まであと12本に迫るなど、いくつもの場面で活躍し何度もお立ち台に上った阿部選手がだからこそ、プロ野球界の「厳しい壁を乗り越えてこい!」というメッセージを送ったのだろう。色紙を手にした鍬原投手からは、この日一番の笑顔が見られた。そのおかげで撮影も順調に進み、とても良い表情の写真が撮影できた。

 今年に入って鍬原投手は、上半身のコンディション不良でキャンプは3軍の沖縄からのスタートとなった。しかし最近になってジャイアンツ球場での自主トレで状態は上向き、すでに「9割前後」だという。キャッチボールでは力の入ったボールをビシビシ投げ込んでいた。このまま順調に回復すれば、2月のキャンプ期間中に1軍昇格もあるかもしれない。

 対談後、しばらくして鍬原投手に阿部選手と撮影した写真をプレゼントした。鍬原投手は入寮した際に阿部選手からの色紙を持参し部屋の出入り口に置いている。「練習に行く前にこの色紙を見ると、”一緒にお立ち台”を実現するために必死に頑張らなきゃなと思う」と話し、ツーショット写真も隣に飾るそうだ。

 阿部選手の短い言葉に込められたメッセージはしっかりと後輩の鍬原投手に伝わっていた。いつの日か、お立ち台で2人の最高の笑顔を撮りたいと思った。(記者コラム・中島 傑)

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