ヤンキー・スタジアム前で写真撮影に応じる松井秀喜氏(カメラ・楢崎 豊)
巨人、ヤンキースなどで活躍した松井秀喜氏(43)=ヤンキースGM付特別アドバイザー=が史上最年少43歳7か月で野球殿堂入りを果たした。日米通算507本塁打を放った松井氏は、史上最多336票を集め、野茂英雄氏の45歳4か月を抜いて、史上最年少で選出された(プレーヤー表彰)。スポーツ報知では、松井氏の殿堂入りを記念して、「独占激白!松井秀喜」を連載する。
今回は、ヤンキースでの“コーチ業”について語った。2017年にメジャー新人記録となる52本塁打を放ったアーロン・ジャッジ外野手(25)を15年に指導していたが、教えることの難しさとは―。
2017年、ヤンキースは若手の戦力が充実していた。メジャー新人記録となる52本塁打を放った25歳のジャッジ外野手を筆頭に、リーグチャンピオンシップにまで進出した。松井氏はその大砲を同職になった1年目の15年に、2Aで指導した。
「持っているポテンシャルは当時からすごかったです。どうにかならないかな、とずっと思っていました。飛ばす能力はズバ抜けていましたが、ボールを見極める能力が低かった。打席でいい感覚をつかむために自分の体をどう使うか。そういうことをキチンと説明してあげないといけない。ボールを長く見て、甘い所に来たら打ちにいき、ボールになる変化球を見送れるか。彼だけではなく、そういう感覚は自分でつかんでもらうしかないですから」
ジャッジは今年、一気にスターダムへと駆け上がった。ここまでの活躍は、予想していたのだろうか。
「その能力はあると感じていましたが、結果は予想以上でした。何かを自分の中で得たのでしょう。一番は、選球眼がよくなりましたね。三振はたくさんしますが、その分、四球も選ぶようにもなりました。甘い球は確実に打つようになった。打率3割近く打って、本塁打を52本も打っているのだから、三振を200個しても、問題はありません。素晴らしい成績です」
ジャッジだけではない。ともに25歳のゲーリー・サンチェス捕手やグレッグ・バード一塁手らほかの主力も当時、松井氏の指導を仰いでいた。しかし、現在の立ち位置は本人たちの努力のたまものだ、と松井氏は繰り返す。
「一番大切なことは、もちろん結果を出すことです。でも、ただ漠然とやって、結果を出せる選手もいるかもしれませんが、それで継続して結果を出し続ける選手はおそらくいないでしょう。大事なのは、出ている結果の理由を自分自身が理解しているかどうか。理由が分からずに結果が出ているだけでは危うい。何がよくて、何がダメか。選手が自分で分かるようにコーチは指導していかないといけません」
指導する上での軸がある。
「自分は、自信を持って正しいと思えることは伝えています。それをどういうふうに伝えるかです。心に響くような伝え方をしなければいけません。たとえば、ジーターは、Aロッド(アレックス・ロドリゲス)は、なぜこれだけいい選手なのか。選手と一緒に写真や映像を見ます。ボール球を振る、振らないは、あくまで結果です。振らないためにどういう形で打っているか。どういう体の使い方をしているか。自分でもすごく勉強になります。でも、自分でやるわけじゃないので、ストレスはたまります。選手がなかなか打てないと『たまには打てよ!』とか思いますよ(笑い)」
個々の性格や能力によって、スター選手のいい例を挙げる場合もあれば、ジャッジのように特定の選手ではなく、一般的な強打者の共通点を伝えることもある。コミュニケーションや空気感を大切にしながら、選手の不完全な部分を埋めていく作業をしている。
「正しい打ち方をどう気付かせてあげるか。指導のポイントは大きく分けて、フォームの観点から見る打ち方と、打席内での相手投手攻略へのアプローチ法という“2本柱”です。いい打ち方でも、試合で打てなかったら何にもなりません。試合で打つための戦略も大切です」=つづく=(取材・構成=鈴村 雄一郎、楢崎 豊)
◆松井 秀喜(まつい・ひでき)1974年6月12日、石川県生まれ。43歳。星稜高では甲子園4度出場し高校通算60発。92年ドラフト1位で巨人入団。MVP3度、首位打者1度、本塁打王、打点王各3度獲得。2003年にFAでヤンキース移籍。09年ワールドシリーズMVP。エンゼルス、アスレチックス、レイズを経て12年限りで現役引退。13年に国民栄誉賞受賞。15年にヤンキースGM付特別アドバイザー就任。
◆アーロン・ジャッジ 1992年米カリフォルニア州生まれ。25歳。生後まもなく教師だった夫婦の養子に入った。2013年ドラフト1巡指名でヤ軍入り。新人王の資格のある2年目の昨年、一気にブレイク。52本塁打でタイトルを獲得し、満票で新人王に選ばれた。右投右打。201センチ、125キロ。昨季年俸は54万4500ドル(約6000万円)。
※1月25日まで毎日午後4時配信
巨人、ヤンキースなどで活躍した松井秀喜氏(43)=ヤンキースGM付特別アドバイザー=が史上最年少43歳7か月で野球殿堂入りを果たした。日米通算507本塁打を放った松井氏は、史上最多336票を集め、野茂英雄氏の45歳4か月を抜いて、史上最年少で選出された(プレーヤー表彰)。スポーツ報知では、松井氏の殿堂入りを記念して、「独占激白!松井秀喜」を連載する。
今回は、ヤンキースでの“コーチ業”について語った。2017年にメジャー新人記録となる52本塁打を放ったアーロン・ジャッジ外野手(25)を15年に指導していたが、教えることの難しさとは―。
2017年、ヤンキースは若手の戦力が充実していた。メジャー新人記録となる52本塁打を放った25歳のジャッジ外野手を筆頭に、リーグチャンピオンシップにまで進出した。松井氏はその大砲を同職になった1年目の15年に、2Aで指導した。
「持っているポテンシャルは当時からすごかったです。どうにかならないかな、とずっと思っていました。飛ばす能力はズバ抜けていましたが、ボールを見極める能力が低かった。打席でいい感覚をつかむために自分の体をどう使うか。そういうことをキチンと説明してあげないといけない。ボールを長く見て、甘い所に来たら打ちにいき、ボールになる変化球を見送れるか。彼だけではなく、そういう感覚は自分でつかんでもらうしかないですから」
ジャッジは今年、一気にスターダムへと駆け上がった。ここまでの活躍は、予想していたのだろうか。
「その能力はあると感じていましたが、結果は予想以上でした。何かを自分の中で得たのでしょう。一番は、選球眼がよくなりましたね。三振はたくさんしますが、その分、四球も選ぶようにもなりました。甘い球は確実に打つようになった。打率3割近く打って、本塁打を52本も打っているのだから、三振を200個しても、問題はありません。素晴らしい成績です」
ジャッジだけではない。ともに25歳のゲーリー・サンチェス捕手やグレッグ・バード一塁手らほかの主力も当時、松井氏の指導を仰いでいた。しかし、現在の立ち位置は本人たちの努力のたまものだ、と松井氏は繰り返す。
「一番大切なことは、もちろん結果を出すことです。でも、ただ漠然とやって、結果を出せる選手もいるかもしれませんが、それで継続して結果を出し続ける選手はおそらくいないでしょう。大事なのは、出ている結果の理由を自分自身が理解しているかどうか。理由が分からずに結果が出ているだけでは危うい。何がよくて、何がダメか。選手が自分で分かるようにコーチは指導していかないといけません」
指導する上での軸がある。
「自分は、自信を持って正しいと思えることは伝えています。それをどういうふうに伝えるかです。心に響くような伝え方をしなければいけません。たとえば、ジーターは、Aロッド(アレックス・ロドリゲス)は、なぜこれだけいい選手なのか。選手と一緒に写真や映像を見ます。ボール球を振る、振らないは、あくまで結果です。振らないためにどういう形で打っているか。どういう体の使い方をしているか。自分でもすごく勉強になります。でも、自分でやるわけじゃないので、ストレスはたまります。選手がなかなか打てないと『たまには打てよ!』とか思いますよ(笑い)」
個々の性格や能力によって、スター選手のいい例を挙げる場合もあれば、ジャッジのように特定の選手ではなく、一般的な強打者の共通点を伝えることもある。コミュニケーションや空気感を大切にしながら、選手の不完全な部分を埋めていく作業をしている。
「正しい打ち方をどう気付かせてあげるか。指導のポイントは大きく分けて、フォームの観点から見る打ち方と、打席内での相手投手攻略へのアプローチ法という“2本柱”です。いい打ち方でも、試合で打てなかったら何にもなりません。試合で打つための戦略も大切です」=つづく=(取材・構成=鈴村 雄一郎、楢崎 豊)
◆松井 秀喜(まつい・ひでき)1974年6月12日、石川県生まれ。43歳。星稜高では甲子園4度出場し高校通算60発。92年ドラフト1位で巨人入団。MVP3度、首位打者1度、本塁打王、打点王各3度獲得。2003年にFAでヤンキース移籍。09年ワールドシリーズMVP。エンゼルス、アスレチックス、レイズを経て12年限りで現役引退。13年に国民栄誉賞受賞。15年にヤンキースGM付特別アドバイザー就任。
◆アーロン・ジャッジ 1992年米カリフォルニア州生まれ。25歳。生後まもなく教師だった夫婦の養子に入った。2013年ドラフト1巡指名でヤ軍入り。新人王の資格のある2年目の昨年、一気にブレイク。52本塁打でタイトルを獲得し、満票で新人王に選ばれた。右投右打。201センチ、125キロ。昨季年俸は54万4500ドル(約6000万円)。
※1月25日まで毎日午後4時配信