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常勝軍団復活へ、2万5000スイングの地獄キャンプを乗り越えたG戦士が得たもの

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↑17日間使い込んだ、穴のあいたバッティンググローブ

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↑ロングティーする石川

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↑オリジナルで制作したトンボを見せるキーパーさん

 全体練習後も黙々とバットを構える姿があった。120個ほどボールの入ったケースが6個、みるみる空になった。「そんなに打ったかなぁ?」2012年の高橋由伸は笑った。1日2000スイングにのぼり、球団関係者の中には「そんなにやらなくても」と心配する声も上がった。これこそプロとアマチュアの差なんだと感じた。そしてこの年、巨人はリーグ優勝と日本一に輝いた。

 あれから5年半、高橋監督が「地獄のキャンプになる」と明言した今年の秋季キャンプ。若手の技術向上と意識改革を目標に、用意された2万球ものボールが、次々と打ち込まれた。いつもなら4勤1休の日程が6勤1休と、キャンプ期間中に2日しか休みのない、まさに野球三昧となった。

 「昨年秋の練習量が感覚的に少なかった」という二岡智宏打撃コーチ(41)は、低い態勢での連続打ちやハーフスイング(バットを止める打撃)、右手、左手だけの打撃や反対方向に打つ打撃など7~10種類のメニューを用意。バットを振っていない待ち時間を減らした効率よい練習で、1人あたり1500スイング以上を確保した。常に鍛え抜いているG戦士でさえ、練習が終わる午後6時半にはへろへろ。さらに宿舎に戻っても、夕食の間もバットを振る意識を持ち、1日で消費した運動量に合う高タンパク質の料理を食べ体調を管理。睡眠をとるのも大事と、外出を控える選手も多かった。まさに意識改革が浸透している様子だった。

 裏方さんも、そんな選手の頑張りをサポートした。スタンドや場外に拾いに行くボールは、毎日300球近くなるという。グラウンドに転がるボールは、東京からボール拾いに特化したオリジナルのトンボを運び込み対応した。「中腰になりボールを拾うより体(腰)に優しいし、短時間で何百ものボールを集められる。みんなの役にたてば」と入野久彦一軍用具係。チームから大変重宝された上、時間短縮できたことで次の練習までの間隔も短くすることができた。練習後は、新しいボールと、使い込んだものや水分を含んだり痛んだものを区分。「選手はもちろん、打撃投手に良い状態、そして気持ちよく練習してもらいたい」。仕事が終わる頃はいつも真っ暗になっていた。

 キャンプ5日目、そろそろ1万スイングを超えたであろう石川慎吾(24)に手の状態を聞いた。テーピングをとると、左手の甲には3センチほどの大きな豆ができ、右手の人差し指と中指の間の豆はつぶれ、出血していた。石川や橋本到(27)を担当しているミズノのスタッフは、初日から「バッティンググローブが足りなくなりそう」と言われ、10枚ほど追加し対応した。中井大介(27)も通年のキャンプ期間中、10枚ほど交換するバッティンググローブを5枚ほど追加。バットも本社から急きょ取り寄せたとSSKの担当者が明かした。

 第2クールに入ると、石川の手は更に逞しく、分厚くなった。「人間って凄いよね。豆が更に硬くなって、この前以上に手が綺麗になったよ」と見せてくれた。球団専属トレーナーによると、今年は驚くほど手のマメをケアしているそうで、シーズン中はほとんど手に巻くことのないテーピングを使う選手が増えたという。5メートルのテープ6個入りの箱が、いつもなら1週間で1箱なくなるのが、今キャンプでは1日もたなかったこともあったとか。

 17日間のキャンプで2万5000スイング以上振ったG戦士たち。二岡コーチは「1球1球、しっかり振れている。結果はついてくる。みんな力をつけた」と満足そう。村田真一ヘッドコーチは、参加した小林誠司、宇佐見真吾、田中貴也の捕手3人を挙げて「レベルアップしている。来年に繋がるだろう。3人が頑張ってくれなきゃ」と話した。

 「最後までやり遂げた。みんなよく頑張った」とキャンプを総括した高橋監督は、どうして打撃強化のキャンプだったのか問われると「振るのはあたりまえのこと」と力強く話した。あの時、誰よりも”意識”を持ち、バットを振っていた由伸選手だったからこその言葉だった。みんなの力で乗り越えた地獄キャンプ。常勝軍団復活へ、若手の躍進を激写する日は近いだろう。(記者コラム 写真部巨人担当・橋口 真)

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