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桑田真澄さんが甲子園の未来へ提言…球数制限導入、女子野球との共催、タイブレイク反対

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↑甲子園には5季全てに出場し、戦後最多の通算20勝を挙げたPL時代の桑田氏

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↑高校球児の肩肘を守るためには球数制限しかないと、提言を行った桑田氏

 高校野球のよりよい未来のためにも「球数制限」導入を―。今週の「週刊報知高校野球」には、PL学園の投手として5季連続で甲子園に出場し、優勝2度、準優勝2度を成し遂げたスポーツ報知評論家・桑田真澄氏(49)が登場。戦後最多の甲子園通算20勝を挙げたエースは「プレイヤーズ・ファースト」の見地から、故障予防に配慮した改革を行うべきと主張し、さらなる発展へ提言を行った。(構成・加藤 弘士)

 甲子園大会は日本の誇るべき文化。だからこそ選手第一の見地に立ち、時代にあった仕組みに変えていかねばならない。成長期の投球過多は肩や肘の故障に直結することから桑田氏は球数制限の必要性を訴える。

 「投手の故障を防ぐアイデアはいくつか提案されていますが、僕はスポーツ医科学の視点に立って球数制限に踏み込むべきだと考えています。日本学生野球憲章には『部員の健康を維持・増進させる施策を奨励・支援し、スポーツ障害予防への取り組みを推進する』と明記されています。そう宣言している以上、高野連には連投や投げすぎから選手の体を守る義務があると思います」

 なぜ球数制限なのか。

 「僕は体が出来上がったプロ野球選手なら100球以上投げて完投してもいいと思う。僕がプロ野球の監督やコーチだったら、そういう采配をすると思います。なぜ学童野球や学生野球ではダメなのかといえば、成長期だからです。シンプルな目安を言うなら、100球以上は負担が大きい。高校時代、誰よりも甲子園で投げてきた僕が言うんですから、わかってもらえると思います(笑い)」

 もし球数制限が導入されれば、「待球作戦で100球以上投げさせ、エースを降板させよう」という戦術で臨む指導者が出てくるかもしれない。

 「日本学生野球憲章では『フェアプレーの精神を理念とする』とも定められています。教育の一環ですから、そういう卑怯(ひきょう)な戦術には高野連が注意し、初球からフルスイングする野球を奨励してほしい。高野連には総合的な視点で『スポーツマンシップ』の大切さを教えてほしいと思います」

 夏の甲子園を勝ち抜くために、投手は投げ込みが必須との定説もある。

 「何事もため込むというのは人間には無理だと思います。投げ込み、走り込み、飲み込み、食べ込み、寝込み…って、もたない。1週間寝たから、あとの1か月寝るなよといっても無理です。食事もそう。おなかいっぱい3日分食べろといっても、2日目、3日目になればおなかはすく。投げ込みも一緒です。アマチュア時代には、僕よりも素質に恵まれた選手が、投げ込みが理由で肘や肩を壊し、たくさん消えていきました。練習はもちろん大切ですが、体力の回復や故障予防とのバランスを見極める判断力が必要だと思います」

 桑田氏はPL学園1年の夏に全国制覇後、中村順司監督(当時)に全体練習の時間を短くし、個人練習を増やしたいと訴えた。

 「僕も小中から高1まで、朝から晩まで猛練習をやってきた。ところが、一番劇的に成長したのは甲子園前の練習でした。ベンチ入りメンバーは午前10時から正午まで2時間程度の練習しかやらない。その時期に劇的にうまくなったんです。そんな成功体験があるから、練習は長時間やるよりも短時間で集中してやるべきだと気がついた。2時間しか練習しないから、食欲もある。昼寝もするから体も元気だし、次の日も集中して練習できる。その時期に僕はグーンと伸びた。長時間練習で疲れたら、体力も食欲も意欲もなくなる。練習は短時間集中が一番いいと確信したんです」

 連戦連投を余儀なくされるのは過密日程が原因だ。とはいえ主催者側からすれば、日程消化をスムーズに行いたいとの思惑もある。

 「これは高野連だけの問題じゃない。日本の野球界全体の問題です。なぜなら、プロ野球の人材供給源は学生野球。彼らが壊れてしまったら、日本プロ野球の発展もない。国際大会で最高の競技力を発揮するのも難しくなる。だから日本の野球界全体で考えていくことが大事なんです」

 解決方法はシンプルだ。

 「8月の1か月間、甲子園を高校野球に使用させてあげるのです」

 甲子園期間中はタイガースが本拠地で試合ができないことから「死のロード」と呼ばれてきた。桑田氏はこれにも異を唱える。

 「全然、死じゃない。むしろ天国のロードですよ(笑い)。だって8月は暑すぎて、屋外の甲子園は、プロ野球選手にとってはあまりに過酷だからです。それよりも、ロードのドーム球場でプレーする方がいい。京セラドームなら阪神の選手も家から通えますからね」

 アイデアはさらに広がる。現在、全国高校女子硬式野球連盟の加盟校は全26校。夏の全国大会は兵庫県丹波市で行われたが、女子高校野球にスポットライトを当ててほしいと願う。

 「現状の甲子園大会に加え、僕は女子の全国大会も甲子園でやれたらいいと思います。女子は参加校が少ない。男子も2回戦を終えるまでは連戦がないから、3回戦が始まるあたりから男子と女子の試合を交互に開催すれば、投手の連投も自然に防げるんです」

 日程が過密になる3回戦以降は女子の試合を挟んでいく―。これなら選手の肉体的負担も緩和され、さらには女子選手にとってもモチベーション増につながる。そして日本球界の未来を考えた時、このやり方は大きな意味をもたらすという。

 「現在、野球人口の減少が叫ばれていますが、女子野球を発展させれば、野球人口あるいは野球ファンは間違いなく増えるんです。女子選手たちが将来、結婚して母になった時、彼女たちは子供と気軽にキャッチボールができる。これはすごいことだと思います。そうやって育った子供は野球を観に行くだろうし、野球選手になることが将来の夢になるかもしれません」

 「日本のアマチュア野球は『お母さん命』なんです。お母さんがユニホームを洗濯して、お弁当を作って、つらい時も励ましてくれる。お母さんが野球経験者だったら、我が子を全面的にサポートしてくれるじゃないですか。野球の楽しさも苦しさもつらさも、全部分かっているから、最高のコーチになる。だから日本の野球界を今後も発展させるには、女子野球の発展が大きな意味を持つんです」

 来春センバツからは早期決着を促すルール・タイブレイクの導入が決定的だ。

 「僕は基本的に反対ですね。タイブレイクで試合時間は短くなるかもしれませんが、投手の故障予防には根本的な解決法が必要です。球数制限と連投禁止を導入すれば、2番手や3番手の投手が登板するから、点が入りやすい。タイブレイクなしに、試合時間も短くなるでしょう。投手の故障予防という課題には、最優先に取り組んでほしいと思います」

 ◆桑田 真澄(くわた・ますみ)1968年4月1日、大阪・八尾市出身。49歳。PL学園では甲子園に全5季出場。1年夏、3年夏に全国制覇。甲子園通算20勝は戦後最多。85年ドラフト1位で巨人に入団。21年間で通算173勝141敗14セーブ。2年目の87年にベストナインと沢村賞獲得。94年はセMVP。02年は防御率2・22で2度目の最優秀防御率。ゴールデン・グラブ賞8度。2007年には米大リーグ・パイレーツに入団。6月にメジャー昇格。08年3月末に現役引退。スポーツ報知評論家。

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