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北の大地、無名の高校球児からもらった「感謝の言葉」

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↑16年、相川記者が撮影した高校野球の一コマ

 東京ではなく北海道から見てしまう癖が、どうしても抜けない。ニュース番組での天気予報。気象予報士の「それでは全国のお天気です」という言葉と同時に札幌の天気予報に目が行ってしまう。今年3月末まで4年3ヶ月間、北海道支局で勤務した。

 入社してから丸6年経つが、2/3以上を北の大地で過ごしてきた。主にアマチュアスポーツを担当。高校野球では春と夏の甲子園で各1度ずつ、準優勝した高校につきっきりで帯同させてもらった。ウインタースポーツでは、スキージャンプ界のレジェンド・葛西紀明(44)=土屋ホーム=や、来年の平昌五輪(韓国)に日本勢一番乗りを決めたアイスホッケー女子日本代表を取材させてもらった。

 どの取材も勉強になることばかりだったが、最も「記者をやっていて良かった」と思えたのは、甲子園の決勝に進んだことでも、五輪メダリストを取材したことでもない。まったく無名の高校球児から感謝の言葉をもらった時だった。

 今年1月。取材の空き時間にコンビニに立ち寄った。買った物は飲み物とガム。数百円の支払いを終えて立ち去ろうとした時だった。「間違っていたらすみません。報知の記者さんですよね?」

レジを担当していた20歳前後の男性店員が不意に話しかけてきた。記者「えっ?そうですけど、どうして知ってるの?」

男性「札幌円山球場で何度も見たことがあります。○○高校の野球部だったんですけど、取材されたこともありますよ」

記者「そうなの?ごめん。覚えてなくて…」

男性「いえ、いいんです。記事にしてくれてありがとうございました」

 立ち去る時、ネームプレートを確認。すぐに過去の記事を調べた。確かに以前、記事にしていた。ただ、記事はものすごく小さく、失礼だが、どんな試合だったかを思い出すことはできない。それでも男性店員は、その記事を切り抜き、大切に保管してくれているという。

 北海道で勤務していた頃、読者に「へー」「おー」と思わせる記事を書くことが記者の仕事だと思い、取材を続けてきた。大きな記事を書いた時、取材対象者にお礼を言われることはあったが、男性店員のように、とても小さな記事で「ありがとう」と言われるのは、初めての経験だった。もしかしたら、取材対象者や読者に記事の大きさは関係ないのかもしれない。一つの取材、一つの記事にオンリーワンのドラマがある。この事実を伝えることが記者の使命だと考えさせられた。

 4月から4年3ヶ月ぶりに写真部に復帰した。久しぶりのカメラマンの仕事に悪戦苦闘しながら日々、現場を回っている。今度は記事ではなく、写真で“勝負”する世界。記者が撮影した写真が、取材対象者や読者の心に残る1枚になってほしい。(記者コラム 写真部・相川 和寛)

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