↑「偽装スクイズ!」と変顔でバント練習をし、周囲を笑わせた矢野
プロ野球選手、サッカー選手、芸能人、一般の方々まで、様々な人たちの表情を写真に収めてきたが、こんな表情を後にも先にも私は撮影したことがない。現在日本ハムで活躍する矢野謙次(37)が、巨人時代に見せた表情だが、あまりにすごすぎて後に「呪われた写真」になってしまったエピソードがある。
矢野は、07年に代打の切り札、左殺し的な存在で活躍し、リーグ優勝に貢献。私もそのプレーを撮影し、何度も一面を飾らせてもらったが、その写真ではない。あれは、08年の巨人キャンプ中だった。バント練習では「無死一、二塁」など様々なシチュエーションを考え、マシン相手にバントをする…。そんな真剣な姿を撮影しようとしていたとき、星孝典(34=現西武2軍育成コーチ)が「偽装スクイズ!」とわざと空振りをしてみせた。これに対し、矢野が「そんなの偽装じゃない」と、やってみせたのがこの表情だった。偽装は顔までと、先輩の威厳を見せた矢野。後に星はこのときの模様を自身のブログの中で写真付きで紹介。矢野のあまりのすごい表情は話題を呼び、多くのファンが彼のブログを訪問したそうだ。
写真をパネルにして贈呈するのがルーティンになっていた。だから、この写真を撮影した後も、彼は私に「必ず東京ドームに持ってきてくださいよ!」とキャンプ中に何度も言っていた。
キャンプを終え東京ドームで再会。約束通り、写真を矢野に手渡すと「これ、これっ!」とニコニコしながら、あっという間にベンチ裏に消えてしまった。そんな一瞬の出来事だったので、その写真の行方に、私はさほど興味を持たなかった。
だが、数日後に東京ドームで球団関係者やナインから「あの矢野の写真ってすごくないですか?」と声をかけられた。矢野はあの写真を高橋由(現巨人監督)のロッカーに飾っていたそうなのだ。
この写真の“呪い”はここからはじまる。連覇を狙う巨人は、ラミレスら外国人選手を加入させる大補強もスタートダッシュに失敗。前年に大活躍した矢野とパネルを掲げられた高橋由は共にケガに苦しみ、2軍生活。この表情を導き出した星は、開幕早々に西武へトレード。巨人ナインらを和ませる世紀の一枚は、関わる人すべてを混乱におとしめる「呪われた写真」と一部でささやかれ始めた。
撮影したカメラマンとしては「チームの不調の原因ははあの写真か?」と真剣に悩んだ。多くの球団関係者に「あの写真をいただけませんか?」と依頼を受けても、「あの写真は呪われた写真です」と断っていた。
それでも写真がほしいと引かない人がいた。ラミレス(横浜DeNA監督)の通訳だった宮村俊介さんだ。あまりのご執心についに根負けし、パネルを贈呈した。宮村さんは写真に矢野のサインを入れるほどの喜びようだった。
そんな心苦しい思いをしていたその年の初夏。私はジャイアンツ球場でリハビリを続ける矢野に再会した。写真の悩みを話すと「あんなに面白いのないでしょう?あれを越えるものをまた撮りましょう。あれが呪われた写真なわけないじゃないですか?」と笑い飛ばしていた。
現在、日本ハムでプレーしている矢野。今でも球場などで会えば、この「偽装スクイズ」写真の話になる。「あれは、呪われた写真ではありませんから…。今でも、現役やってるんですから」と笑顔で話してくれる。昨年の契約更改の席で「2017年はスタメンの座を狙う」と熱く語った矢野。37歳を迎える今季も闘志満々だ。浅間、近藤、谷口など若手の台頭が著しい日本ハムの外野陣の中で、代打の切り札で終わろうとはみじんも思っていないのだ。
矢野のこうした勇姿を見ていると、あの写真は「呪われた写真」ではないと思えてくる。矢野は08、09年とけがで苦しんだが、今でも現役。その存在感は少しも衰えてない。また、写真を導き出した星は、今シーズンから西武のコーチに就任。写真をロッカーに飾られた高橋由は、ご存じの通り巨人の監督である。写真にサインまでしてもらった宮村通訳は現在、巨人軍の国際編成部で活躍中だ。みんなの現在の活躍を見れば、あの写真は“呪われた写真”ではないはずだ。
ただ、少しだけ呪われているのかなぁと今でも思うことがある。この写真を自宅玄関に飾っている宮村さんのことだ。写真入手当時から結婚願望が強かったが、未だ独身という点である。そこだけ、あの写真は呪われた写真かもしれない。
プロ野球選手、サッカー選手、芸能人、一般の方々まで、様々な人たちの表情を写真に収めてきたが、こんな表情を後にも先にも私は撮影したことがない。現在日本ハムで活躍する矢野謙次(37)が、巨人時代に見せた表情だが、あまりにすごすぎて後に「呪われた写真」になってしまったエピソードがある。
矢野は、07年に代打の切り札、左殺し的な存在で活躍し、リーグ優勝に貢献。私もそのプレーを撮影し、何度も一面を飾らせてもらったが、その写真ではない。あれは、08年の巨人キャンプ中だった。バント練習では「無死一、二塁」など様々なシチュエーションを考え、マシン相手にバントをする…。そんな真剣な姿を撮影しようとしていたとき、星孝典(34=現西武2軍育成コーチ)が「偽装スクイズ!」とわざと空振りをしてみせた。これに対し、矢野が「そんなの偽装じゃない」と、やってみせたのがこの表情だった。偽装は顔までと、先輩の威厳を見せた矢野。後に星はこのときの模様を自身のブログの中で写真付きで紹介。矢野のあまりのすごい表情は話題を呼び、多くのファンが彼のブログを訪問したそうだ。
写真をパネルにして贈呈するのがルーティンになっていた。だから、この写真を撮影した後も、彼は私に「必ず東京ドームに持ってきてくださいよ!」とキャンプ中に何度も言っていた。
キャンプを終え東京ドームで再会。約束通り、写真を矢野に手渡すと「これ、これっ!」とニコニコしながら、あっという間にベンチ裏に消えてしまった。そんな一瞬の出来事だったので、その写真の行方に、私はさほど興味を持たなかった。
だが、数日後に東京ドームで球団関係者やナインから「あの矢野の写真ってすごくないですか?」と声をかけられた。矢野はあの写真を高橋由(現巨人監督)のロッカーに飾っていたそうなのだ。
この写真の“呪い”はここからはじまる。連覇を狙う巨人は、ラミレスら外国人選手を加入させる大補強もスタートダッシュに失敗。前年に大活躍した矢野とパネルを掲げられた高橋由は共にケガに苦しみ、2軍生活。この表情を導き出した星は、開幕早々に西武へトレード。巨人ナインらを和ませる世紀の一枚は、関わる人すべてを混乱におとしめる「呪われた写真」と一部でささやかれ始めた。
撮影したカメラマンとしては「チームの不調の原因ははあの写真か?」と真剣に悩んだ。多くの球団関係者に「あの写真をいただけませんか?」と依頼を受けても、「あの写真は呪われた写真です」と断っていた。
それでも写真がほしいと引かない人がいた。ラミレス(横浜DeNA監督)の通訳だった宮村俊介さんだ。あまりのご執心についに根負けし、パネルを贈呈した。宮村さんは写真に矢野のサインを入れるほどの喜びようだった。
そんな心苦しい思いをしていたその年の初夏。私はジャイアンツ球場でリハビリを続ける矢野に再会した。写真の悩みを話すと「あんなに面白いのないでしょう?あれを越えるものをまた撮りましょう。あれが呪われた写真なわけないじゃないですか?」と笑い飛ばしていた。
現在、日本ハムでプレーしている矢野。今でも球場などで会えば、この「偽装スクイズ」写真の話になる。「あれは、呪われた写真ではありませんから…。今でも、現役やってるんですから」と笑顔で話してくれる。昨年の契約更改の席で「2017年はスタメンの座を狙う」と熱く語った矢野。37歳を迎える今季も闘志満々だ。浅間、近藤、谷口など若手の台頭が著しい日本ハムの外野陣の中で、代打の切り札で終わろうとはみじんも思っていないのだ。
矢野のこうした勇姿を見ていると、あの写真は「呪われた写真」ではないと思えてくる。矢野は08、09年とけがで苦しんだが、今でも現役。その存在感は少しも衰えてない。また、写真を導き出した星は、今シーズンから西武のコーチに就任。写真をロッカーに飾られた高橋由は、ご存じの通り巨人の監督である。写真にサインまでしてもらった宮村通訳は現在、巨人軍の国際編成部で活躍中だ。みんなの現在の活躍を見れば、あの写真は“呪われた写真”ではないはずだ。
ただ、少しだけ呪われているのかなぁと今でも思うことがある。この写真を自宅玄関に飾っている宮村さんのことだ。写真入手当時から結婚願望が強かったが、未だ独身という点である。そこだけ、あの写真は呪われた写真かもしれない。