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世界最速170キロは出したいではなく出すんだよ…長嶋さん×大谷翔平スペシャル対談前編

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↑笑顔でポーズをとる大谷(右)と長嶋茂雄・読売巨人軍終身名誉監督

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↑大谷の体にタッチする長嶋茂雄・読売巨人軍終身名誉監督

 日本ハム・大谷翔平投手(22)と、巨人・長嶋茂雄終身名誉監督(80)=報知新聞社客員=のスペシャル対談が実現した。2人の顔合わせはもちろん初。4年目の昨季は10勝&22本塁打など投打で圧倒的なパフォーマンスを見せ、チームを4年ぶりのリーグVと10年ぶりの日本一に導いた。スーパースター論やメジャーリーグ、今年3月に開催されるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)まで大いに語り合った。(取材・構成=小谷 真弥)

 ―会うのは初めて。

 長嶋さん(以下長)「初めてだと思う。いつも写真、テレビなどで見ているけどね」

 大谷(以下大)「(長嶋さんは)テレビの中の人。小さい頃から大スターみたいな感じです。岩手(のテレビ中継)は巨人戦が主。本当に巨人戦ばかり見てました。僕が好きだったのは高橋由伸さん。1番を打っていた時とか。二岡さんもそうですし。その時の監督は長嶋監督で。(13年に)プロ入りした時に二岡さんが日本ハムにいたので、『うわ、二岡さんだ』となりました。(長嶋さんがアテネ五輪監督だった)代表の時もテレビで見ていました」

 長「今年で5年目? 大したものだね。高校の時は正直、分からなかった。すごい選手がいると見始めて、『あ、これはすごい選手になるな』と。3年ぐらい前から、すごい投手になるとみていました」

 ―長嶋さんは15年開幕前に「メジャーでいくなら投手で」と話していた。

 大「はい。紙面で見させてもらいました」

 長「あの頃は、160キロ前後を出したと思うけど、今年は165キロ。5キロアップだからね。チャップマン(現ヤンキース、世界最速169キロ)を追い越そうという気持ちで今年もやってもらいたいね。若いし、体もあるし、何もかもいい」

 大「ハハハ」

 長「できる力を持っている。自由自在にやってほしい。もしできたら、プロ野球には80年以上の歴史があるけど、初めての選手、初めての記録。ファンも(世界最速の更新を)見たいと思っているはず。大谷君はどう思ってますか?」

 大「いずれは出してみたいなと思っています」

 長「出してみたいではなく、出すんだよ。出す。そのくらいの力量があるし、肩も強いから大丈夫。あとは精神力をもっともっと強く持ってやれば、その気持ちは(力となって)出ますから」

 大「165キロを出した時は投げ心地が良くなかった。あの時はCSの最後でお客さんがすごかった。僕の力ではないところで出た記録。それを自力で出せるようになったら、また次、そういう場面で、もう一段階、上にいけるかなと思います」

 長「だんだん気持ちが強くなってくる。肉体も一緒に強くなっていくからね。そこに初めての記録が生まれるんだよ」

 大「僕はまだ22歳。いけるところまでいってみたいです。(私生活も)普通なら普通に終わってしまう。普通ではないこと、周りがやらないことをやらないと、上へいけないと思っています」

 ―野球以外に趣味があるのか、と思ってしまう。

 長「それもいいよね。時代とともに選手の生活スタイルが変わってくるけど、大谷君の考え、気持ちは素晴らしい。そういう形(野球一筋)でやるべきだよね。50~60年前は話をすれば野球。1日24時間、野球の話だった。今はいろいろな娯楽があるけど、その中で野球ばかりの話をするというのは。これはもう169キロを出したい気持ちがあるからだろうね」

 ―打撃の成長は目覚ましかった。

 長「打撃もいいね。背が高い上に、バットの出し方が非常にスムーズ。(球のインパクトまで)短く、前に(フォロースルーが)大きい。いつもテレビで見てますが、ほとんど体が前に出ない。(体重を)軸足でためて、軸足で打っている。もし、米国で打撃を披露したら、ビックリするよ。本物。投手なのに、打撃もすごい、ということになる」

 大「ありがとうございます」

 長「打撃はいいところばかりで悪いところは何もない。外角はレフトへ、内角はライトへ。広さ(打球方向)が非常に大きい。打撃に関しては何も言うことはないね。教え子だったら? 教えることなんてないよ。ないもん(笑い)。あるとすれば肉体よりも精神力。精神力を強くしようという気持ちがあればいい」

 大「僕は長嶋監督に打撃を聞いてみたかったです。打席での心構えというか、どういう気持ちで打席に立っているか。配球を考えるのか、自分がどういうスイングをしたいかを優先するのかを聞いてみたいです」

 長「我々の頃は何もなかった。来た球を打つ。そして走る。今とは全然違う。投手の中には内角、外角と嫌らしい投手がいるけど、大した問題ではない。あと一つ、僕の場合は初球から打つ。1ボールからも打ちにいく。2ボールだったら打たないかな…。2ボールになれば打者の勝ち。1ストライク2ボール、1ストライク3ボールの時は勝負。そのカウントでは、その投手が一番いい球を投げてくる。それを必ず打つ、と思っていましたね」

 大「僕はすごくカウントを考えています。投手をやっているので余計に」

 長「僕と勝負したら、どうだろうね。勝負にならないな(笑い)。160キロのすごい球を投げるから、そう簡単には打てない。バットに当たることは当たるけど、本塁打、安打はなかなか難しい。それでも打てないとプロとしてダメ。打てない中で自分の持ち味をどう発揮していくかを考えるだろうね」

 ―投手・大谷として打者・大谷と対戦したら。

 大「お互いの弱点を生かすべきかなと。自分は打者なら投手がどういう球を投げるかをカウント別に考える。投手だったら打者がカウントごとにどういう打撃をしたいかを考える。それは自分対自分でも同じ。打者なら直球狙い? もちろん初球の直球を思い切り振りにいく。球速が何キロだろうが、そこは関係ないです」

 ―長嶋さんにとってのスーパースターとは。

 長「最高の力を持っている人がスーパースターだけど、それは人が言うもの。だから(スーパースターと認められるには)自分だけでなく、選手間の目、ファンの見方もある。やっぱりファンあってのプロ野球。まずファンを大切にする気持ちが必要。それがスーパースターに近づいていくんじゃないかな」

 大「僕にとってスーパースターはイチローさんや、松井さん…。左打者というのもありましたし、発言もいつも誠実に答えていた。テレビ画面越しですけど、そういうのは伝わりますし、見ていて単純に『かっこいい、こういう人になりたい』と思っていました」

 ―長嶋さんはプレーする上で空振りする時にヘルメットを飛ばしたり、ファンへの見せ方を意識していた。

 長「いつも思っていた。立大3年、4年の時から『オレがプロに入れば、どういうことをやればいいのか』と思って、それを作っていた。巨人に入ってからは『プロとはこういうもの。よく見てください』という形でファンにアピールしていました」

 大「僕は自分が持っている最高のものを出したいと思っています。僕自身が出せる全力を打席でもマウンドでも。(プレー以外では)基本的には変わらないですけど、ただ発言や態度は注意しています。それは自分の仲のいい友達といる時とは違う。まだまだ長嶋さんのように視座の高い所で物事は見えないですけど、ゆくゆくは必要なのかなと。選手としてだけではなく、どういうふうに見られるのか、どうすれば子どもたちの目標になれるのか。それが大事だと思っています」

 長「なるほどね。やっぱり4年目が終わったところですからね。これから(野球人生の)中盤、後半へ入っていくわけだからね。今すでに大谷君は(ファンを大切にする気持ち、スターはどうあるべきかという)気持ちがある。持っている気持ちのままにやっていけばいい。そうすれば、自然に大谷くんらしいスーパースターの型ができる。スーパースターはファンが作るもの。早くそういう場所(スーパースターの地位)へいけるといいよね。オフも忙しいのは仕方ない。ファンのために、マスコミなどにサービスするのは大事な要素だよ」(後編に続く)

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