↑笑顔でポーズをとる大谷(右)と長嶋茂雄・読売巨人軍終身名誉監督
↑バッティングを披露する大谷(左)とミートポイントを確認する長嶋茂雄・読売巨人軍終身名誉監督
日本ハム・大谷翔平投手(22)と、巨人・長嶋茂雄終身名誉監督(80)=報知新聞社客員=のスペシャル対談が実現した。2人の顔合わせはもちろん初。4年目の昨季は10勝&22本塁打など投打で圧倒的なパフォーマンスを見せ、チームを4年ぶりのリーグVと10年ぶりの日本一に導いた。スーパースター論やメジャーリーグ、今年3月に開催されるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)まで大いに語り合った。(取材・構成=小谷 真弥)
―長嶋さんは「ファンの声援が力になって、実力よりもすごい結果を出せる」と話していた。ファンの力が自分のパフォーマンスにつながったことはあるか。
大谷(以下大)「ありますね。165キロを出した時は本当にそういう感覚だったので。雰囲気だったりとか、声援が後押しみたいなものを感じました。あの時は特別でした。野球をやってきて一番の声援でした」
長嶋さん(以下長)「球場のコールが何ともいえない、間合いというかがあるんだよね。大谷君と同じ気持ちになったね。それは本人が全部作り出すものだからね」
大「本当に打たれる気もしなかったです。それは僕の力がどうこうではなく、球場全体がそういう雰囲気にさせてくれた。相手の打者も嫌だったと思います。球場のそういう雰囲気を、札幌のファンが作ってくれた」
―栗山監督は「次世代のミスターを作る」と話している。
長「どうぞ、作ってください(笑い)」
大「監督からは素晴らしい人間になってほしいと言われますけど、自分ではそんな人間になれると思っていないです。精いっぱい努力はしますけど、それを評価してくれるのは周りの人かなと思っています」
―長嶋さんはアテネ五輪(予選)で監督だった時に初めて負けられない重圧を感じたと言っていた。
長「初めてだね。重圧を感じたのは。あの時のアテネ五輪の試合は。(現役時代に)国内では全く重圧を感じたことはない。全然、普通にやっていましたけどね」
大「それこそ今年、WBCが僕にとっては初めての大きな国際大会。どのくらい緊張するのかなというのは楽しみだと思っています」
長「ああいう国際試合の場合、自分自身の力があるかないか。やっぱり大きな国際的な試合になると、重圧を感じますよ。でも、それは(大谷にとって)初めての良い経験になるよ」
大「(侍ジャパンでは)年齢も下。どういう気持ちでというか、日の丸を背負って戦うか。大会に臨むのは僕自身初めてなので、そういう時にゲームに臨むのかというのは気になりますね」
長「そういう気持ちは誰しも起きること。日の丸を背負って戦う時は、日本の野球、日本の国のために頑張るんだということを思ってやればいいかと。そういう気持ちを持ってやることで、また大きくなれる」
―日本ハムが大谷の今オフ以降のポスティングシステムによるメジャー挑戦を容認した。
大「今季が終わって、どう思うかは分からないですけど、そう(メジャーに行くと)思うのかもしれない。その時に球団は『応援する』と言ってくれている。僕の意思、気持ちを尊重してくれるのは、ありがたいことですし、うれしいことです」
長「『いずれ米国へ行くんだろう』という話を大リーグの人はしていた。2、3年では早いなと思っていたが、昨年(の成績)ならもう仕方ないね。栗山監督と話をするけど、(成長して)『違う』と話していた。(今オフ以降のメジャー挑戦を容認したのは)昨年の活躍があるからだろうね」
―長嶋さんもメジャーリーグに憧れていた。
長「昭和36年(1961年)、巨人がドジャータウンで1か月キャンプ、オープン戦をやって、ドジャースが日本の野球を見て。それで『長嶋を米国へ行かせて(メジャーでプレーさせて)みないか』と。でも、諸条件が合わなくて結局ダメだった。学生の時からよくメジャーの話をしたり、立大3年時は『メジャーに行ったらどうか』という話があった。あの時、行けば(長嶋監督自身、日本の球界が)変わっていたかもしれないね。もし、大谷君とメジャーでプレーできたら? やってみたいと思うね。そりゃ、そう思うよ」
―大谷は12年ドラフト前に一度はメジャー挑戦を表明。ドジャースから熱心に誘われていた。なぜメジャーへ憧れたか。
大「日本のプロ野球よりは先に『やってみないか』という誘いをもらっていたので。一番最初に、というのが大きかった。高校1年で入って、何もない状態で、どこもすごくなかった。ただ僕の可能性だけを見て誘ってくれた。良くなってから誘いをもらうケースはたくさんあるけど、早い段階から僕の可能性にかけてくれた人たちに、かけてみたい気持ちがありました。そこはすごく大きかったです」
長「高校1年で? なるほどね。ドジャースもいいからね。新聞紙上ではシカゴ・カブスとかドジャースだと言っているけど、米国の場合はどこのチームを選ぶかが難しい。ヤンキースもいい。(ファンが熱いから)勝った、負けたでいろいろ言われるけど、名門だからね。ユニホームも昔から変わらなくてね。カブスもそうだけど。歴史があるチームは、いいもの(雰囲気や伝統)がある」
―1年でも早く挑戦すべきだと思うか。
長「そう思う。決まっている以上はやるべき。栗山監督もそういう気持ちがあると思う。球団全体がいい仕上げ、いいゲームをして(メジャーへと)思っていますからね」
―メジャーでも二刀流でやりたいか。
大「それは向こう側(メジャー球団)がどう使うかの問題。僕は提供するものは提供しますし、自分は打撃も投球も最高のものをつくり上げるだけ。ただ、投打両方で使いたい、と思うだけのものを提供できればいい」
長「そりゃメジャーでも(二刀流で)見たいね。栗山監督も投手も野手もやってほしい気持ちを持っている。投打両方を評価して、これまで4年間挑戦させたんだから。えらいよね。(二刀流の素質のある選手と)ご縁があってもできなかった監督も多かったと思うけど、栗山監督は社長やGMにも言うことはビシッと言う。そして(二刀流のような斬新な手を)やる。今の(二刀流での成功は)栗山監督の力が大きいね」
―将来的にも二刀流を貫きたいか。
大「今もそうですけど、入団してから、自分がどういう活躍をするかは全然想像できなかった。10年後のことを想像しますけど、なかなか明確にやるのは難しい。本当に今頑張って、1年後どうなりたいかが精いっぱい。その継続でいいかなと今は思っています」
長「もし米国へ行ったら、先に評価されるのは投手。そこから打撃に入っていくことになるだろうね。165キロを投げる力を持っているんだから、170キロを出すようなこともあると思う。169キロまで出たらチャップマンと同じ(評価)。169キロが出たら、次は170キロと、いつも最高を目指そうという気持ちになれば。プロとして大切なのは、その気持ち」
―世界一の選手になりたいと言っている。
大「やるからには誰よりも野球がうまくなりたい。小さい頃から野球を始めてから、その延長線上です。自分よりもすごい選手がいたら、その選手よりもうまくなりたいと練習するだけです」
長「これは本当にプロとしての気持ちが出ているよね。そういう気持ちでどんどんやってほしい」
―長嶋さんにとって世界一の選手は。
長「ジョー・ディマジオかな。野球だけではなく、人間としてもいい。彼の生き方は他にはない素晴らしいものがある。ディマジオは男だけでなく、女性も『ディマジオはいい。男らしい男だ』と言う。それで、マリリン・モンローと結婚した。大谷くんも(マリリン・モンローのような女性と)結婚して、米国で男だけでなく、女性からも『大谷はいい選手だな』と実力や生き方を認めてもらえるようにね。そのくらい力をつけてほしい」
大「恐れ多いです(笑い)。まだ(世界一の選手とは)明確にはないです。野球のスキルだけではないと思う。人間性も含めて、『この人すごかった』と最終的に言ってもらえるように頑張りたいです」
―5年目の今季はどんなプレーをしたいか。
大「まずはWBCがある。そこを目指すべきだと思います。優勝すれば、世界に日本の野球のレベルを知ってもらえる。それが一番大事かなと」
長「まだまだ若い。やりたいこともあるし、若い時は失敗を怖がることはない。失敗があるから美しさが生まれる。失敗をしたら、という気持ちでプレーするのはプロとしてはダメ。失敗しても平気でやることが大事だよ」
―長嶋さんは今季、大谷にどういう活躍を期待するか。
長「まずは168、169キロまで出してほしいね。(打者としては)20本塁打なんて大したことないよ(笑い)。20本くらいなんか目をつぶってでも打てる。大谷君には、今は投球の方にウェートを置いてほしい。打撃は後からついてくるような感じで。もう打撃はできているから」
大「20本は大したことないと言えるように頑張ります(笑い)」
長「打てば30本は打てると思うよ」
↑バッティングを披露する大谷(左)とミートポイントを確認する長嶋茂雄・読売巨人軍終身名誉監督
日本ハム・大谷翔平投手(22)と、巨人・長嶋茂雄終身名誉監督(80)=報知新聞社客員=のスペシャル対談が実現した。2人の顔合わせはもちろん初。4年目の昨季は10勝&22本塁打など投打で圧倒的なパフォーマンスを見せ、チームを4年ぶりのリーグVと10年ぶりの日本一に導いた。スーパースター論やメジャーリーグ、今年3月に開催されるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)まで大いに語り合った。(取材・構成=小谷 真弥)
―長嶋さんは「ファンの声援が力になって、実力よりもすごい結果を出せる」と話していた。ファンの力が自分のパフォーマンスにつながったことはあるか。
大谷(以下大)「ありますね。165キロを出した時は本当にそういう感覚だったので。雰囲気だったりとか、声援が後押しみたいなものを感じました。あの時は特別でした。野球をやってきて一番の声援でした」
長嶋さん(以下長)「球場のコールが何ともいえない、間合いというかがあるんだよね。大谷君と同じ気持ちになったね。それは本人が全部作り出すものだからね」
大「本当に打たれる気もしなかったです。それは僕の力がどうこうではなく、球場全体がそういう雰囲気にさせてくれた。相手の打者も嫌だったと思います。球場のそういう雰囲気を、札幌のファンが作ってくれた」
―栗山監督は「次世代のミスターを作る」と話している。
長「どうぞ、作ってください(笑い)」
大「監督からは素晴らしい人間になってほしいと言われますけど、自分ではそんな人間になれると思っていないです。精いっぱい努力はしますけど、それを評価してくれるのは周りの人かなと思っています」
―長嶋さんはアテネ五輪(予選)で監督だった時に初めて負けられない重圧を感じたと言っていた。
長「初めてだね。重圧を感じたのは。あの時のアテネ五輪の試合は。(現役時代に)国内では全く重圧を感じたことはない。全然、普通にやっていましたけどね」
大「それこそ今年、WBCが僕にとっては初めての大きな国際大会。どのくらい緊張するのかなというのは楽しみだと思っています」
長「ああいう国際試合の場合、自分自身の力があるかないか。やっぱり大きな国際的な試合になると、重圧を感じますよ。でも、それは(大谷にとって)初めての良い経験になるよ」
大「(侍ジャパンでは)年齢も下。どういう気持ちでというか、日の丸を背負って戦うか。大会に臨むのは僕自身初めてなので、そういう時にゲームに臨むのかというのは気になりますね」
長「そういう気持ちは誰しも起きること。日の丸を背負って戦う時は、日本の野球、日本の国のために頑張るんだということを思ってやればいいかと。そういう気持ちを持ってやることで、また大きくなれる」
―日本ハムが大谷の今オフ以降のポスティングシステムによるメジャー挑戦を容認した。
大「今季が終わって、どう思うかは分からないですけど、そう(メジャーに行くと)思うのかもしれない。その時に球団は『応援する』と言ってくれている。僕の意思、気持ちを尊重してくれるのは、ありがたいことですし、うれしいことです」
長「『いずれ米国へ行くんだろう』という話を大リーグの人はしていた。2、3年では早いなと思っていたが、昨年(の成績)ならもう仕方ないね。栗山監督と話をするけど、(成長して)『違う』と話していた。(今オフ以降のメジャー挑戦を容認したのは)昨年の活躍があるからだろうね」
―長嶋さんもメジャーリーグに憧れていた。
長「昭和36年(1961年)、巨人がドジャータウンで1か月キャンプ、オープン戦をやって、ドジャースが日本の野球を見て。それで『長嶋を米国へ行かせて(メジャーでプレーさせて)みないか』と。でも、諸条件が合わなくて結局ダメだった。学生の時からよくメジャーの話をしたり、立大3年時は『メジャーに行ったらどうか』という話があった。あの時、行けば(長嶋監督自身、日本の球界が)変わっていたかもしれないね。もし、大谷君とメジャーでプレーできたら? やってみたいと思うね。そりゃ、そう思うよ」
―大谷は12年ドラフト前に一度はメジャー挑戦を表明。ドジャースから熱心に誘われていた。なぜメジャーへ憧れたか。
大「日本のプロ野球よりは先に『やってみないか』という誘いをもらっていたので。一番最初に、というのが大きかった。高校1年で入って、何もない状態で、どこもすごくなかった。ただ僕の可能性だけを見て誘ってくれた。良くなってから誘いをもらうケースはたくさんあるけど、早い段階から僕の可能性にかけてくれた人たちに、かけてみたい気持ちがありました。そこはすごく大きかったです」
長「高校1年で? なるほどね。ドジャースもいいからね。新聞紙上ではシカゴ・カブスとかドジャースだと言っているけど、米国の場合はどこのチームを選ぶかが難しい。ヤンキースもいい。(ファンが熱いから)勝った、負けたでいろいろ言われるけど、名門だからね。ユニホームも昔から変わらなくてね。カブスもそうだけど。歴史があるチームは、いいもの(雰囲気や伝統)がある」
―1年でも早く挑戦すべきだと思うか。
長「そう思う。決まっている以上はやるべき。栗山監督もそういう気持ちがあると思う。球団全体がいい仕上げ、いいゲームをして(メジャーへと)思っていますからね」
―メジャーでも二刀流でやりたいか。
大「それは向こう側(メジャー球団)がどう使うかの問題。僕は提供するものは提供しますし、自分は打撃も投球も最高のものをつくり上げるだけ。ただ、投打両方で使いたい、と思うだけのものを提供できればいい」
長「そりゃメジャーでも(二刀流で)見たいね。栗山監督も投手も野手もやってほしい気持ちを持っている。投打両方を評価して、これまで4年間挑戦させたんだから。えらいよね。(二刀流の素質のある選手と)ご縁があってもできなかった監督も多かったと思うけど、栗山監督は社長やGMにも言うことはビシッと言う。そして(二刀流のような斬新な手を)やる。今の(二刀流での成功は)栗山監督の力が大きいね」
―将来的にも二刀流を貫きたいか。
大「今もそうですけど、入団してから、自分がどういう活躍をするかは全然想像できなかった。10年後のことを想像しますけど、なかなか明確にやるのは難しい。本当に今頑張って、1年後どうなりたいかが精いっぱい。その継続でいいかなと今は思っています」
長「もし米国へ行ったら、先に評価されるのは投手。そこから打撃に入っていくことになるだろうね。165キロを投げる力を持っているんだから、170キロを出すようなこともあると思う。169キロまで出たらチャップマンと同じ(評価)。169キロが出たら、次は170キロと、いつも最高を目指そうという気持ちになれば。プロとして大切なのは、その気持ち」
―世界一の選手になりたいと言っている。
大「やるからには誰よりも野球がうまくなりたい。小さい頃から野球を始めてから、その延長線上です。自分よりもすごい選手がいたら、その選手よりもうまくなりたいと練習するだけです」
長「これは本当にプロとしての気持ちが出ているよね。そういう気持ちでどんどんやってほしい」
―長嶋さんにとって世界一の選手は。
長「ジョー・ディマジオかな。野球だけではなく、人間としてもいい。彼の生き方は他にはない素晴らしいものがある。ディマジオは男だけでなく、女性も『ディマジオはいい。男らしい男だ』と言う。それで、マリリン・モンローと結婚した。大谷くんも(マリリン・モンローのような女性と)結婚して、米国で男だけでなく、女性からも『大谷はいい選手だな』と実力や生き方を認めてもらえるようにね。そのくらい力をつけてほしい」
大「恐れ多いです(笑い)。まだ(世界一の選手とは)明確にはないです。野球のスキルだけではないと思う。人間性も含めて、『この人すごかった』と最終的に言ってもらえるように頑張りたいです」
―5年目の今季はどんなプレーをしたいか。
大「まずはWBCがある。そこを目指すべきだと思います。優勝すれば、世界に日本の野球のレベルを知ってもらえる。それが一番大事かなと」
長「まだまだ若い。やりたいこともあるし、若い時は失敗を怖がることはない。失敗があるから美しさが生まれる。失敗をしたら、という気持ちでプレーするのはプロとしてはダメ。失敗しても平気でやることが大事だよ」
―長嶋さんは今季、大谷にどういう活躍を期待するか。
長「まずは168、169キロまで出してほしいね。(打者としては)20本塁打なんて大したことないよ(笑い)。20本くらいなんか目をつぶってでも打てる。大谷君には、今は投球の方にウェートを置いてほしい。打撃は後からついてくるような感じで。もう打撃はできているから」
大「20本は大したことないと言えるように頑張ります(笑い)」
長「打てば30本は打てると思うよ」