↑復活を目指す松坂
↑10月2日、楽天戦に登板した松坂
すっかり冬の気配が訪れ、プロ野球界も秋季キャンプが終わって本格的にシーズンオフへと入った。1年間戦い抜いた選手たちはシーズンの疲れを癒やしつつ、来季に備えて準備を進めていく時期となった。
そんな中で、36歳のベテランが再起を賭けて、新たなチャレンジに乗り出そうとしている。右肩手術からの復活を目指すソフトバンク・松坂大輔投手である。冬の間も実戦登板の機会を求め、プエルトリコ・ウィンターリーグに参戦する。
所属するのは、巨人の平良拳太郎投手、高木勇人投手、岡本和真内野手の3人もプレーしているヒガンテス・デ・カロリナ。今月中にも日本を離れて当地に渡り、1か月ほど、異国の地のマウンドに上がる計画だという。
2015年に日本球界に復帰し、ソフトバンクに加入した松坂。ただ、ここまでの2年間は苦闘の連続だった。復帰1年目の春季キャンプ中に、既に右肩の違和感に悩まされ、その中でも何とか投げられるようにと、試行錯誤してきた。ただ、状態が上向くことはなく、シーズンが始まってからも、思うように投げられない日々が続いた。右肩の手術を決断し、8月、投手の命とも言える右肩にメスを入れた。
半年間のリハビリを経て、迎えた復帰2年目。右肩の不安はほとんど消えたが、思い描くものとはかけ離れた投球が続いた。10月2日の楽天戦(コボスタ)で日本球界復帰後初めて1軍のマウンドに上がったが、1回3安打4四死球で5失点。目を覆いたくなるような内容に、スタンドも異様な空気に包まれていた。
来季は3年契約の最終年。プロ18年目を迎える「平成の怪物」がこの時期に、若手のメジャーへの登竜門とも言われるウィンターリーグへの参加を望んだのは、復活に賭ける強い思いの現れだろう。
「強く思っているのは、とにかくヤフオクドームのマウンドに立ちたい、そのマウンドで投げたい、その気持ちだけでずっとやってきた。そこに立てたら、またここからだ、と思えるんじゃないかな。ようやくスタートが切れる。そこで立てて、満足するわけじゃない。満足は出来ないですし、立ててようやくスタート、そこからサポートしてくれた人たちに恩返ししたい」。今年の春季キャンプでインタビューを行った際の言葉が深く印象に残っている。
世には松坂ファンは多いが、その一方で批判的な声も多い。ただ、その声には異議を唱えたい。どれだけ、松坂大輔という男が夢や希望、興奮、歓喜といったものを我々に与えてくれたか。横浜高校時代の甲子園春夏連覇、PL学園との延長17回の死闘、決勝でのノーヒットノーラン、イチローらとの名勝負、2大会連続MVPに輝いた2度のWBC…。数え上げれば、キリがない。
投手が命である右肩にメスを入れるということが、どれだけの恐怖であり、不安であるか。そこから、復活を目指す道のりが、どれだけ困難で、苦しいものであるか。それをどれだけの人が分かるだろうか。いま、その困難な状況と「もう1度投げたい」という思いで、戦っているのである。
右肩の状態に問題がなく、実戦登板の中で投球やフォームの感覚を磨き、来季を迎えたいという、松坂自身の切なる思いから、ウィンターリーグ参戦という道を選んだのだろう。数々の実績を積み上げてきた「平成の怪物」の覚悟。松坂大輔に胸躍らせてきた1人として、彼の復活を願っている。(記者コラム・福谷佑介)
↑10月2日、楽天戦に登板した松坂
すっかり冬の気配が訪れ、プロ野球界も秋季キャンプが終わって本格的にシーズンオフへと入った。1年間戦い抜いた選手たちはシーズンの疲れを癒やしつつ、来季に備えて準備を進めていく時期となった。
そんな中で、36歳のベテランが再起を賭けて、新たなチャレンジに乗り出そうとしている。右肩手術からの復活を目指すソフトバンク・松坂大輔投手である。冬の間も実戦登板の機会を求め、プエルトリコ・ウィンターリーグに参戦する。
所属するのは、巨人の平良拳太郎投手、高木勇人投手、岡本和真内野手の3人もプレーしているヒガンテス・デ・カロリナ。今月中にも日本を離れて当地に渡り、1か月ほど、異国の地のマウンドに上がる計画だという。
2015年に日本球界に復帰し、ソフトバンクに加入した松坂。ただ、ここまでの2年間は苦闘の連続だった。復帰1年目の春季キャンプ中に、既に右肩の違和感に悩まされ、その中でも何とか投げられるようにと、試行錯誤してきた。ただ、状態が上向くことはなく、シーズンが始まってからも、思うように投げられない日々が続いた。右肩の手術を決断し、8月、投手の命とも言える右肩にメスを入れた。
半年間のリハビリを経て、迎えた復帰2年目。右肩の不安はほとんど消えたが、思い描くものとはかけ離れた投球が続いた。10月2日の楽天戦(コボスタ)で日本球界復帰後初めて1軍のマウンドに上がったが、1回3安打4四死球で5失点。目を覆いたくなるような内容に、スタンドも異様な空気に包まれていた。
来季は3年契約の最終年。プロ18年目を迎える「平成の怪物」がこの時期に、若手のメジャーへの登竜門とも言われるウィンターリーグへの参加を望んだのは、復活に賭ける強い思いの現れだろう。
「強く思っているのは、とにかくヤフオクドームのマウンドに立ちたい、そのマウンドで投げたい、その気持ちだけでずっとやってきた。そこに立てたら、またここからだ、と思えるんじゃないかな。ようやくスタートが切れる。そこで立てて、満足するわけじゃない。満足は出来ないですし、立ててようやくスタート、そこからサポートしてくれた人たちに恩返ししたい」。今年の春季キャンプでインタビューを行った際の言葉が深く印象に残っている。
世には松坂ファンは多いが、その一方で批判的な声も多い。ただ、その声には異議を唱えたい。どれだけ、松坂大輔という男が夢や希望、興奮、歓喜といったものを我々に与えてくれたか。横浜高校時代の甲子園春夏連覇、PL学園との延長17回の死闘、決勝でのノーヒットノーラン、イチローらとの名勝負、2大会連続MVPに輝いた2度のWBC…。数え上げれば、キリがない。
投手が命である右肩にメスを入れるということが、どれだけの恐怖であり、不安であるか。そこから、復活を目指す道のりが、どれだけ困難で、苦しいものであるか。それをどれだけの人が分かるだろうか。いま、その困難な状況と「もう1度投げたい」という思いで、戦っているのである。
右肩の状態に問題がなく、実戦登板の中で投球やフォームの感覚を磨き、来季を迎えたいという、松坂自身の切なる思いから、ウィンターリーグ参戦という道を選んだのだろう。数々の実績を積み上げてきた「平成の怪物」の覚悟。松坂大輔に胸躍らせてきた1人として、彼の復活を願っている。(記者コラム・福谷佑介)