日本ハムから巨人にトレードで移籍した吉川光夫投手（２８）が、ＭＶＰ奪取と２年連続日本一を誓った。
４日、東京・大手町の球団事務所で石川慎吾外野手（２３）とともに入団会見に出席。１２年に日本ハムでＭＶＰに輝いた左腕は、当時を超える成績を残し、過去２人しかいない両リーグＭＶＰの快挙に挑む意気込みを示した。両選手は、宮崎秋季キャンプに１０日から合流する。
４年前を思い返しながら決意の言葉を並べた。吉川光は、１２年に１４勝５敗、防御率１・７１の大活躍。メジャーに移籍したダルビッシュの穴を埋め、チームをリーグ優勝に導き、ＭＶＰに輝いた。その後は納得のいく成績を残すことができていないが、それで終わるつもりはない。「来年はその成績を少しでも超えられるようにやりたいと思っている」。新天地での飛躍へ心を躍らせた。
キャリアハイの数字を残し、チームにＶをもたらせば、それは２度目の栄誉にも値する。会見に同席した高橋由伸監督（４１）も「ＭＶＰを取っていますし、そういう力のある選手だというのは分かっていますし、当然それくらいの活躍を期待しています」とハッパをかけた。両リーグでのＭＶＰ獲得となれば江夏豊（７９年・広島と８１年・日本ハム）、小笠原（０６年・日本ハムと０７年・巨人）に続き史上３人目。巨人の左腕がＭＶＰを獲得すれば史上初の快挙となる。
移籍して即成績を残すのは簡単ではない。これまで巨人で移籍１年目で１５勝を挙げた日本人投手は、１９７６年に太平洋から移籍してきた加藤初だけ。それでも、移籍が決まってたった２日の左腕の頭の中は、早くも切り替わっていた。
「セ・リーグの球場は少し狭いイメージがあるので、ホームランは出やすいと思う。なので、しっかりインコースをうまく使わないとすごく飛ばされるイメージがある。インコースをしっかりうまく使って抑えていけたらいいんじゃないかなと思います」
持ち味は１５０キロを超える剛球。制球力や投球術に秀でた巨人の内海、杉内、田口といった左腕陣の中にあっては、貴重な存在だ。「パワーピッチングができるストレートを磨いて、もっとストレートでどんどん勝負していけるようにやっていきたい」。内角をえぐり、打者を打ち取るイメージはできあがっている。由伸監督も「先発ローテーションの１人として、１年間投げてくれればなと思っています」と期待した。
初々しい表情で背番号２１のユニホームに袖を通した。年俸も現状維持の９５００万円でサインした。「元いたチーム（日本ハム）は今年日本一になったので、今度はジャイアンツで日本一になれるように、少しでも戦力になれるように頑張りたい」。巨人の日本一はその１２年に日本ハムを倒して以来、ない。吉川光がＭＶＰ級の活躍を果たせば、頂点に大きく近づくはずだ。（安藤 宏太）
◆吉川に聞く
―巨人にトレードが決まったときの心境は。
「ビックリしたというのが正直な気持ち。突然来るんだなと。あとは本当に期待されてこのチームに来させてもらっているので、期待に応えられるように頑張りたい」
―巨人に対するイメージは。
「強いチームだと思っているので、その強いチームの一員になれたことを本当にうれしく思っています」
―由伸監督の印象は。
「打席での印象は本当に左のすごいバッターだと思ってマウンドでは投げさせてもらったけど、選手と監督としてふれあえた時は本当に、すごく優しい雰囲気の方だなと思いました」
―巨人選手と連絡は取ったか。
「（広陵の後輩の）小林がすぐ『一緒に頑張りましょう』というメッセージをくれたので、すぐに電話した。するとそのすぐ近くに（元日本ハムの）乾がいたので、その２人とはしゃべりました」
―巨人には杉内、内海、田口ら好左腕が多く在籍している。
「いい左ピッチャーがたくさんいるので勉強をするところは見習って、その中でも競争に勝ち残っていけるように頑張っていきたいなと思います」
◆吉川 光夫（よしかわ・みつお）１９８８年４月６日、福岡市生まれ。２８歳。広島・広陵高で２年春からエースも２、３年夏の県大会はいずれも４強止まりで甲子園出場なし。０６年高校生ドラフト１巡目で日本ハム入団。０８年から１２連敗していたが、１２年に１４勝を挙げてパＭＶＰ、ベストナイン、最優秀防御率を受賞。通算１６２試合に登板し、４８勝５６敗３セーブ、防御率３・７１。１７８センチ、７６キロ。左投左打。