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【球界ここだけの話】巨人・鈴木が現役引退 “スペシャリスト”の日常とは...

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↑2016年5月18日のDeNA戦(福島)の八回に代走で出場した鈴木は、実松の送りバントで二塁へ。この瞬間のため、気が遠くなるような準備を重ねた

スポットライトの当たらないベンチの裏側にこそ“スペシャリスト”の日常があった。巨人・鈴木尚広外野手(38)が今季限りで現役を引退。野球に対してストイックで、代走として塁に立つまでに気が遠くなるような準備を重ねた職人だ。
20年間の現役生活を振り返った13日の引退会見では、思い出に残っているシーンについて打ち明けた。
「ベンチの裏側の(ウオーミング)アップするところ。自分がいつ行くか分からない戦いをずっと見つめながら、準備していく。そういう時間の方がとにかく長い。失敗することもあれば、成功することもある。でも、次の日にはそこに立っていなければいけない。僕の野球人生の中で準備が全て。僕にとっては一番の、思い出の場所になると思います」
“代走の切り札”としてプロ野球人生の多くを過ごした鈴木は試合終盤に出番が巡ってきた。ベンチに座って戦況を見つめ、中盤からベンチ裏へ移動。走ったり、ストレッチをしたりして体を目覚めさせ、集中力を高めた。それはレギュラーシーズン143試合+ポストシーズン、すべて同じ。今季の出場は44試合。出場機会がない試合もあったが、常にベストな状態を作り上げるのが「仕事」であり、ベンチ裏こそが「職場」といえたかもしれない。
「毎日試合に出ている選手たちは“野生”の中でやっている。僕らはおりの中で飼われていて、急にほうり出されるようなもの。いつでも野生に順応できるように、おりの中で訓練していないと生きていけないんだよ」
以前、ベンチ裏での心得について、独特な言い回しで表現していたのが印象に残っている。回を追うごとに試合は緊張感を増す。突然、グラウンドの緊張感の中に飛び込み、試合の流れに乗らなければいけない。それが難しいからこそ、準備にすべてをささげた。
一年間、完全に体を休める日は一日もなかった。カバンには常に身体機能向上に関する書籍を忍ばせ、オフには専門家の元に出向いて身体構造について学んだ。外傷を防ぐため、外出先で素足は決して出さなかった。
家の中でも足を冷やさないため、常に靴下を履いた。「人よりも深く研究して、突き詰めて、積み重ねていくこと。それは一番やってきた自信があるかな」。レギュラーを張ったことのない「控え」の選手が20年もの間、競争の激しい巨人のユニホームに袖を通してこられた理由だ。
細く、長く生きた鈴木の野球人生には華やかなスター選手とはまた違った魅力がある。

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