高橋由伸監督(41)就任1年目の巨人の戦いが終わった。セ・リーグ優勝の広島に17・5ゲームの大差。なんとか2位は死守したが、クライマックスシリーズ(CS)ファーストステージでは、3位の横浜DeNAに1勝2敗で敗退した。下克上を許す結果となり、敗軍の将は「私の力がなかった」と肩を落とした。公式戦V逸をきっかけに、チームにたるんだ空気が蔓延。首脳陣は引き締めを図ったが、逆に“学級崩壊”ともいえる状況を呈した。惨敗の舞台裏に迫る。 (笹森倫)
引き分け以上で勝ち抜けが決まる10日のCSファーストステージ第3戦(東京ドーム)。だが3-3の延長11回、6番手の田原誠が嶺井に勝ち越打を許し、由伸巨人は早すぎる終戦を迎えた。
青いユニホームを着込んだDeNAファンは、ベンチ前で歓喜するラミレス監督らベイ戦士を拍手喝采。一方、高橋監督以下巨人ナインは、今季の声援に感謝するためベンチ裏に待機し、嶺井のヒーローインタビューが終わってから再びグラウンドに現れ右翼席の前に整列し頭を下げたが、すでに失意のG党ファンの多くが帰宅の途に就いた後。最後までちぐはぐな印象を拭えなかった。
V逸が決まったのは9月10日。毎年優勝をノルマに課される常勝軍団ゆえに、ここで主力らの緊張の糸は切れた。
だが、本拠地でのCSファーストステージ開催権がある2位を死守するため、休養させたり、若手を抜擢したりはできなかった。その結果、つまらないミスや集中力を欠いたプレーが目立ち、シーズン残り2試合でようやく2位を決めた。
CSに向け再始動となった今月3日には、ルイス・クルーズ内野手(32)が出場選手登録を抹消されファーム行きを通告された。シーズン終盤に全力プレーを怠ったことが理由だった。
今季加入した助っ人は翌日から川崎市・ジャイアンツ球場で3軍に合流。しおらしい態度で練習するメキシカンに、チーム内からこんな“同情論”もわき上がった。
「確かにアイツはやる気のない日もあるが、それなら普段から全力疾走しないベテランたちはどうなんだ。主力を干すとチーム内がゴタゴタするし、戦力的にもマイナスが大きいから、アイツが見せしめにされたようなものだ」
クルーズは緩んだチームを引き締め直すための、“スケープゴート”に過ぎなかったのではないかという見立てだ。
そのクルーズは第3戦の試合前に1軍に呼ばれ、練習に参加。「しっかり準備し、(ファイナルステージで)チャンスがあれば貢献したい」と神妙に語ったが、願いはかなわなかった。
また、ナインはファーストステージ期間中、短期決戦では恒例だが、都内のホテルに合宿。夜間外出禁止令も出ていた。仮にファイナルステージに進出していれば、広島の宿舎ホテルでも同様の態勢が敷かれていたはずで、「ガキ扱いかよ」と吐き捨てる選手もいた。
長期政権で絶大な権力が集中していた、原前監督が昨季限りで退任。今季は青年監督のもと、各自が持てる力を発揮しやすいよう打順が固定されるなど、選手が大人扱いされてきた。だが結果が伴わず、最後に引き締めを図った格好だ。戸惑いと不信感が渦巻いたまま、最初のシーズンを終えた。
高橋監督は「結果が全てと選手にも言ってきたが、一生懸命やってくれた。責任を取るという問題じゃないが、結果的に私の力がなかった」と責任を背負い込んだ。
心の準備もないまま現役を引退させられ就任した経緯を考えれば、支援体制が不十分だったと言わざるを得ない。指導者に立場が変わった途端に一線を引き、昨季までの同僚をコマとして統制するのは至難の業だ。そういう意味で、“学級崩壊”を未然に防ぐため、嫌われ役を買って出る“風紀係”が不在だったことも大きな敗因に挙げられる。来季へ向けコーチ陣のテコ入れは避けられないところだ。
引き分け以上で勝ち抜けが決まる10日のCSファーストステージ第3戦(東京ドーム)。だが3-3の延長11回、6番手の田原誠が嶺井に勝ち越打を許し、由伸巨人は早すぎる終戦を迎えた。
青いユニホームを着込んだDeNAファンは、ベンチ前で歓喜するラミレス監督らベイ戦士を拍手喝采。一方、高橋監督以下巨人ナインは、今季の声援に感謝するためベンチ裏に待機し、嶺井のヒーローインタビューが終わってから再びグラウンドに現れ右翼席の前に整列し頭を下げたが、すでに失意のG党ファンの多くが帰宅の途に就いた後。最後までちぐはぐな印象を拭えなかった。
V逸が決まったのは9月10日。毎年優勝をノルマに課される常勝軍団ゆえに、ここで主力らの緊張の糸は切れた。
だが、本拠地でのCSファーストステージ開催権がある2位を死守するため、休養させたり、若手を抜擢したりはできなかった。その結果、つまらないミスや集中力を欠いたプレーが目立ち、シーズン残り2試合でようやく2位を決めた。
CSに向け再始動となった今月3日には、ルイス・クルーズ内野手(32)が出場選手登録を抹消されファーム行きを通告された。シーズン終盤に全力プレーを怠ったことが理由だった。
今季加入した助っ人は翌日から川崎市・ジャイアンツ球場で3軍に合流。しおらしい態度で練習するメキシカンに、チーム内からこんな“同情論”もわき上がった。
「確かにアイツはやる気のない日もあるが、それなら普段から全力疾走しないベテランたちはどうなんだ。主力を干すとチーム内がゴタゴタするし、戦力的にもマイナスが大きいから、アイツが見せしめにされたようなものだ」
クルーズは緩んだチームを引き締め直すための、“スケープゴート”に過ぎなかったのではないかという見立てだ。
そのクルーズは第3戦の試合前に1軍に呼ばれ、練習に参加。「しっかり準備し、(ファイナルステージで)チャンスがあれば貢献したい」と神妙に語ったが、願いはかなわなかった。
また、ナインはファーストステージ期間中、短期決戦では恒例だが、都内のホテルに合宿。夜間外出禁止令も出ていた。仮にファイナルステージに進出していれば、広島の宿舎ホテルでも同様の態勢が敷かれていたはずで、「ガキ扱いかよ」と吐き捨てる選手もいた。
長期政権で絶大な権力が集中していた、原前監督が昨季限りで退任。今季は青年監督のもと、各自が持てる力を発揮しやすいよう打順が固定されるなど、選手が大人扱いされてきた。だが結果が伴わず、最後に引き締めを図った格好だ。戸惑いと不信感が渦巻いたまま、最初のシーズンを終えた。
高橋監督は「結果が全てと選手にも言ってきたが、一生懸命やってくれた。責任を取るという問題じゃないが、結果的に私の力がなかった」と責任を背負い込んだ。
心の準備もないまま現役を引退させられ就任した経緯を考えれば、支援体制が不十分だったと言わざるを得ない。指導者に立場が変わった途端に一線を引き、昨季までの同僚をコマとして統制するのは至難の業だ。そういう意味で、“学級崩壊”を未然に防ぐため、嫌われ役を買って出る“風紀係”が不在だったことも大きな敗因に挙げられる。来季へ向けコーチ陣のテコ入れは避けられないところだ。