ブルペン入りした畠は、松井臨時コーチ相手に投げ込む(左は高橋監督)
畠の厳しい内角のボールを慌ててよける松井臨時コーチ(カメラ・中島 傑)
巨人の畠世周投手(23)が7日、強気の内角攻めで松井秀喜臨時コーチ(43)=ヤンキースGM付特別アドバイザー=の“合格”を勝ち取った。木の花ドームのブルペンで打席に立ったレジェンドに対して31球中16球、内角をえぐり「直球に力がある」と驚かせた。
高鳴る鼓動を、必死に抑えた。畠は打席の松井臨時コーチをキッと見つめ返し、大声を上げた「内角、お願いします」。捕手が内寄りに構えると、大先輩も声を返してきた。「遠慮なく当ててもいいから」。吹っ切れた。内角攻め宣言から3球目。インローの直球で、腰を引かせた。あわや、という球に周囲は肝を冷やしたが「オッケー!」と松井コーチはサムアップ。認められた瞬間だった。
休養日となった5日を除いて、ブルペン皆勤を続ける右腕。この日、39球を投げ終えた所で松井臨時コーチが打席に立った。6日にあいさつした際、そばにいた高橋監督から「打席に立ってもらったら?」と促され、前もってお願いしていた。「テレビの中の方」を相手に緊張で体をこわばらせながら、まずは外角に8球。その後、内角に15球続け、再び外角へ7球、最後の1球を内角に投げ込むと、再び松井氏が親指を立てて夢の時間は終わった。全て直球で31球。2度のけぞらせながら「ナイスボール」の声を6度、引き出した。「直球に力あるなと感じました。現役やめて5年たったんで分からないけど、今の私にはかなり速く見えました」と褒められた。
松井氏は打席に立ち、内角を攻める重要性を伝えたかった。常々、投手は内を使わないと勝負にならないと力説する。この日も「次は当てるくらいのつもりで来てほしいか」と問われ「もちろん。だって俺、今はけがしてもいいからね。頭だけはちょっと(ダメだけど)ね」と即答。覚悟を持って攻め切れ―。そんなオーラに「すごい『タイミングが合っているな』『あっ、打たれる』と逃げてしまうような感じで、外しちゃうようなところはありました」と畠も圧倒された。
打席に立つ前、「投手も真剣味が出る」と松井コーチは関係者にバットを用意させた。現役時代同様、ミズノ社製の白木のバットを構え、試合さながらの雰囲気をつくり出した。昨年、後半だけで6勝をマークした畠の存在は松井氏の耳にも届いていた。気になる存在へのプレゼントだった。
思えば14年2月4日、当時プロ2年目だった菅野は打席に立った松井臨時コーチの内角をえぐり「キレと低めの制球がいいことは十分、分かりました」と認めさせた。その年は12勝5敗、最優秀防御率となる2・33で、セ・リーグMVPに輝いた。畠も同じ2年目。“対ゴジラ”をさらなる飛躍のきっかけにする。「しっかりと(打者を)攻めていけると思います」。日米通算507発のレジェンドにも臆さなかった強心臓で、師匠・菅野の足跡をたどる。(西村 茂展)