↑WBCで千賀とバッテリーを組んだ小林(左)
↑試合前、ホームベースを触り集中する小林
今年1年、巨人はバッテリーのミスが少なかった。チーム投手成績を見ると、143試合で暴投(ワイルドピッチ)は12球団最少のわずか25(捕手・小林の時は22)。菅野、マイコラスはじめ、投手の制球が良かったこともあるが、私は捕手の小林が体を張ってワンバウンドの球を必死に止めたことも大きかったと思っている。
小林は今季、137試合でマスクをかぶって捕逸(パスボール)も2つだけ。130試合以上マスクをかぶって捕逸2は、92年のヤクルト古田以来25年ぶりだった。規定以上では広島・石原が76試合で捕逸1、會澤が106試合で捕逸2、パ・リーグでもソフトバンク・高谷が92試合で捕逸2、オリックス・若月が99試合で捕逸2だが試合数を比較すれば小林が「最もそらさない男」と言えるだろう。もともとワンバウンドを止める技術には定評があったが、本人にこのことを聞くと「千賀のフォークを止められなかった。あれが大きかったですね」と話した。
昨年11月の侍ジャパン強化試合。小林はソフトバンク・千賀とバッテリーを組んだが、大きな落差から「お化けフォーク」と呼ばれるワンバウンドのフォークを後逸し、悔しい気持ちを味わった。
「こういう球を止められるようにならないといけないんだなと思いました。WBCでも千賀とバッテリーを組みました。すごい緊張感、重圧で緊張はしましたが、千賀だけでなく、他のピッチャー全員の球を絶対に止めたろうと思って守っていました」
普段のシーズン中のNPB球に比べ、滑りやすいとされるWBC球。ただでさえ、慣れない他球団の投手とバッテリーを組むのに、鋭い変化球の曲がりがさらに大きくなったり、投げている方でも想像以上の軌道を描くこともあった。小久保ジャパンの正捕手としてそんな十人十色の一流投手陣の球を、強い気持ちで受け止め、ワンバウンドを懸命に前に落とした経験は大きな財産となったという。
シーズン中、試合前練習ではワンバウンドのストップの練習を毎日、一球一球丁寧に行う姿が印象的だった。WBCでも侍ジャパンのバッテリーコーチを務め、巨人でも小林を指導した村田善則前バッテリーコーチ(今季終了後、スコアラーに転任発表)は「誠司はもともと止めるのはうまかったし、技術はあった。去年まではたまに集中力が切れて雑なプレーがあったけど、今年は最後まで気を集中してしっかり守ってくれた」と評価する。日の丸を背負った経験が、心も技も成長させてくれた。
今季、巨人のチーム総失点504はリーグ最少。防御率3・31はリーグ2位だった。「鉄壁の守り」は正捕手としてほぼ全試合でマスクをかぶり、ワンバウンドを止め続けた小林の力が大きかった。
小林は盗塁阻止率も2年連続12球団の捕手でトップとなる3割8分。2年連続セ・リーグ1位は、巨人では森昌彦以来、55年ぶりの快挙だった。今年は相手の企画数(盗塁を仕掛ける数)も少なく、強肩でスタートを切らせなかった点も光った。
チームは4位に終わり「捕手は勝ってナンボですから」と満足はしていない。この秋は課題の打撃向上へバットを振り込むが、投手の信頼をつかむ高い守備力は誰にも負けない大きな武器と言えるだろう。(記者コラム・巨人投手担当・片岡優帆)
↑試合前、ホームベースを触り集中する小林
今年1年、巨人はバッテリーのミスが少なかった。チーム投手成績を見ると、143試合で暴投(ワイルドピッチ)は12球団最少のわずか25(捕手・小林の時は22)。菅野、マイコラスはじめ、投手の制球が良かったこともあるが、私は捕手の小林が体を張ってワンバウンドの球を必死に止めたことも大きかったと思っている。
小林は今季、137試合でマスクをかぶって捕逸(パスボール)も2つだけ。130試合以上マスクをかぶって捕逸2は、92年のヤクルト古田以来25年ぶりだった。規定以上では広島・石原が76試合で捕逸1、會澤が106試合で捕逸2、パ・リーグでもソフトバンク・高谷が92試合で捕逸2、オリックス・若月が99試合で捕逸2だが試合数を比較すれば小林が「最もそらさない男」と言えるだろう。もともとワンバウンドを止める技術には定評があったが、本人にこのことを聞くと「千賀のフォークを止められなかった。あれが大きかったですね」と話した。
昨年11月の侍ジャパン強化試合。小林はソフトバンク・千賀とバッテリーを組んだが、大きな落差から「お化けフォーク」と呼ばれるワンバウンドのフォークを後逸し、悔しい気持ちを味わった。
「こういう球を止められるようにならないといけないんだなと思いました。WBCでも千賀とバッテリーを組みました。すごい緊張感、重圧で緊張はしましたが、千賀だけでなく、他のピッチャー全員の球を絶対に止めたろうと思って守っていました」
普段のシーズン中のNPB球に比べ、滑りやすいとされるWBC球。ただでさえ、慣れない他球団の投手とバッテリーを組むのに、鋭い変化球の曲がりがさらに大きくなったり、投げている方でも想像以上の軌道を描くこともあった。小久保ジャパンの正捕手としてそんな十人十色の一流投手陣の球を、強い気持ちで受け止め、ワンバウンドを懸命に前に落とした経験は大きな財産となったという。
シーズン中、試合前練習ではワンバウンドのストップの練習を毎日、一球一球丁寧に行う姿が印象的だった。WBCでも侍ジャパンのバッテリーコーチを務め、巨人でも小林を指導した村田善則前バッテリーコーチ(今季終了後、スコアラーに転任発表)は「誠司はもともと止めるのはうまかったし、技術はあった。去年まではたまに集中力が切れて雑なプレーがあったけど、今年は最後まで気を集中してしっかり守ってくれた」と評価する。日の丸を背負った経験が、心も技も成長させてくれた。
今季、巨人のチーム総失点504はリーグ最少。防御率3・31はリーグ2位だった。「鉄壁の守り」は正捕手としてほぼ全試合でマスクをかぶり、ワンバウンドを止め続けた小林の力が大きかった。
小林は盗塁阻止率も2年連続12球団の捕手でトップとなる3割8分。2年連続セ・リーグ1位は、巨人では森昌彦以来、55年ぶりの快挙だった。今年は相手の企画数(盗塁を仕掛ける数)も少なく、強肩でスタートを切らせなかった点も光った。
チームは4位に終わり「捕手は勝ってナンボですから」と満足はしていない。この秋は課題の打撃向上へバットを振り込むが、投手の信頼をつかむ高い守備力は誰にも負けない大きな武器と言えるだろう。(記者コラム・巨人投手担当・片岡優帆)