↑壁に立てかけた鏡でメイクを直す尾上右近
スーパー歌舞伎2「ワンピース」(11月25日まで東京・新橋演舞場)の舞台事故で左腕骨折の重傷を負った市川猿之助(41)の代役を急きょ務めることになったのが、若手注目の歌舞伎俳優・尾上右近(25)だ。
猿之助が病床から出した「僕のいない穴は若手たちがしっかりと埋めてくれます。安心して劇場へお越しください」のコメントは、確かな根拠があってのもの。猿之助が松竹上層部に直談判して決まった若手抜てきの特別マチネ「麦わらの挑戦」が、いま並行して上演されている。右近はこの8日、猿之助が演じるルフィとハンコック役を「―挑戦」でお披露目したばかりだった。評判も良い。
一般の人には、まだなじみが薄いかもしれないが、右近は、曽祖父が6代目尾上菊五郎、母方の祖父が映画スター・鶴田浩二。優しそうな顔つきや輪郭は、祖父ともダブる。目覚ましい芸の成長ぶりは、若手注目の筆頭株にあげられる。
多くが思い描くような“突貫工事”的な代役とはまったく異なる。じっくり時間をかけて役と向き合い、練り上げられている。猿之助のコメントの行間には、そのことが込められている。
右近もまさか、代役まで回ってくるとは予想だにしなかっただろう。9月のスポーツ報知のインタビューでは、「―挑戦」への抜てきの経緯の話もしていた。昨年、大阪公演前のけいこで猿之助が、自身の役を客観的に見る際、右近が部分的に“代役”を務めており、これがきっかけになっている。
「そのときの早替わり体験や自分の内面の変化は、初めて経験するものでした」。でも「麦わらの挑戦」でのルフィ決定時は、半信半疑。「本当にやっていいんですか?と思いました」と控えめな口調で話していた。
「猿之助さんは僕とは比べものにならないくらい歌舞伎の古典を熟知されています。そして、その応用でルフィも演じておられる。自分にはまだその引き出しはなく、足元にも及ばない。でもルフィと年齢が近い。それを支えに役に一心にぶつかっていきたい」と。代役は、半端ないプレッシャーとの闘いだろうが、託された限り、自分を信じて舞台に立って欲しい。
実は右近は、来年2月に、江戸浄瑠璃清元家元の父(清元延寿太夫)の前名、清元栄寿太夫を襲名することになっている。清元とは、三味線音楽の一流派で、高音で歌う技巧的な発声が特徴だ。あまり例のない歌舞伎俳優との二刀流の道。“歌舞伎界の大谷翔平”でもあるのです。(記者コラム・演劇担当)
スーパー歌舞伎2「ワンピース」(11月25日まで東京・新橋演舞場)の舞台事故で左腕骨折の重傷を負った市川猿之助(41)の代役を急きょ務めることになったのが、若手注目の歌舞伎俳優・尾上右近(25)だ。
猿之助が病床から出した「僕のいない穴は若手たちがしっかりと埋めてくれます。安心して劇場へお越しください」のコメントは、確かな根拠があってのもの。猿之助が松竹上層部に直談判して決まった若手抜てきの特別マチネ「麦わらの挑戦」が、いま並行して上演されている。右近はこの8日、猿之助が演じるルフィとハンコック役を「―挑戦」でお披露目したばかりだった。評判も良い。
一般の人には、まだなじみが薄いかもしれないが、右近は、曽祖父が6代目尾上菊五郎、母方の祖父が映画スター・鶴田浩二。優しそうな顔つきや輪郭は、祖父ともダブる。目覚ましい芸の成長ぶりは、若手注目の筆頭株にあげられる。
多くが思い描くような“突貫工事”的な代役とはまったく異なる。じっくり時間をかけて役と向き合い、練り上げられている。猿之助のコメントの行間には、そのことが込められている。
右近もまさか、代役まで回ってくるとは予想だにしなかっただろう。9月のスポーツ報知のインタビューでは、「―挑戦」への抜てきの経緯の話もしていた。昨年、大阪公演前のけいこで猿之助が、自身の役を客観的に見る際、右近が部分的に“代役”を務めており、これがきっかけになっている。
「そのときの早替わり体験や自分の内面の変化は、初めて経験するものでした」。でも「麦わらの挑戦」でのルフィ決定時は、半信半疑。「本当にやっていいんですか?と思いました」と控えめな口調で話していた。
「猿之助さんは僕とは比べものにならないくらい歌舞伎の古典を熟知されています。そして、その応用でルフィも演じておられる。自分にはまだその引き出しはなく、足元にも及ばない。でもルフィと年齢が近い。それを支えに役に一心にぶつかっていきたい」と。代役は、半端ないプレッシャーとの闘いだろうが、託された限り、自分を信じて舞台に立って欲しい。
実は右近は、来年2月に、江戸浄瑠璃清元家元の父(清元延寿太夫)の前名、清元栄寿太夫を襲名することになっている。清元とは、三味線音楽の一流派で、高音で歌う技巧的な発声が特徴だ。あまり例のない歌舞伎俳優との二刀流の道。“歌舞伎界の大谷翔平”でもあるのです。(記者コラム・演劇担当)