↑30日の日本ハム戦で中越えに適時三塁打を放つ高城
その日、この男の周りにちょっとしたフィーバーにわき起こった。6月27日の広島戦(横浜)。DeNAの高城俊人捕手が、1960年に巨人・長嶋茂雄が記録した4試合連続三塁打のプロ野球記録に挑んだのだ。
高卒6年目の控え捕手が久しぶりにスポットライトを浴びた。いや、浴びせたと言った方がいいだろうか。実は、高城がこの記録に王手をかけていたことはほぼ誰も知らず、同日付の紙面で私が記事にしたことで一気に知れ渡ったからだ。
それもそのはず。異例づくしのチャレンジだった。まず、高城は主にドラ1左腕・浜口の専属捕手を務め、出場機会は1週間に1度程度。三塁打を記録したのは、5月30日の日本ハム戦(札幌D)、6月6日の楽天戦(山形)、同14日のロッテ戦(横浜)の3試合。連続試合とは言え、約1か月越しという超スロー挑戦だった。
しかも、高城は強肩を生かした守備面の評価は高く、高卒1年目から1軍でマスクをかぶっているが、お世辞にも打撃がいいとは言えない。その時までのプロ通算成績は、268試合に出場して打率1割7分2厘、1本塁打、29打点というものだった。
TBSでも紹介された子供成長応援サプ…
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足も速くない。俊足を武器に通算74三塁打を記録しているミスターに対し、高城は今季の3本を含めて4本だけ。そもそも、今季のヒット自体がその時点で8本しか打ってなかった。私が本人に取材した際に「誰も気にしてないから、何も言われてないですよ」と苦笑いしていたのも無理はなかった。
それが、当日朝にスポーツ報知の紙面とホームページに記事が掲載され、状況が一変した。家族や地元・福岡の友達、さらには高校時代の担任の先生からも連絡が来たという。球場入りすると、チームメートからはイジられまくった。球場内では、関係者が「ジョーが三塁打を打ったら、ミスターに並ぶらしいよ」とあちこちで話していた。
結果は、2打数無安打で無念の途中交代。ミスターに肩を並べることはできなかったが、試合後に「ボールは見えてたんです。三塁打はともかく、ヒットは打てたかなと思ったんですけど…」と悔しがっていた姿が印象的だった。試合前には「バッティングはどうでもいいです。大事なのはこっち」とミットを構えるポーズを取っていたからだ。
それは、高城のレギュラー奪取にかける思いにほかならない。現在、DeNAの正捕手は3割5分を超える得点圏打率を誇る戸柱が務め、左投手相手にしぶとい打撃を見せる嶺井と併用されている。出場機会を増やすには、打力の向上が絶対条件となっている。
まぐれで3本もの三塁打を打ったわけではない。小川打撃コーチの指導で打撃フォームを改善し、逆方向に強い打球が打てるようになってきた。連日、試合後に居残り特打をしたり、試合中に相手捕手の配球を分析するなど細かい工夫を重ねることで、少ない打席でも結果を出せるようになってきた。
高城は「取り上げてもらったことはうれしいし、みんなから注目してもらえてよかったと思います。ちゃんと見てくれている人はいるんですね」と、あの日を振り返る。もちろん、それで満足しているわけではない。「もっと先発出場を増やしたい。そのためにも、打てないといけないですよね」と話す。
一方で「キャッチャーは投手を勝たせるのが一番。守備がおろそかになっちゃったら意味がない」とも言う。確かに、捕手にとって守備と打撃の両立というのは非常に難しい問題だ。だが、私はアマ野球担当時代に、2011年のセンバツ高校野球で大会タイ記録となる8打数連続安打をマークした高城の姿を目撃している。まだ24歳。打てる捕手の誕生に期待したい。(記者コラム・片岡 泰彦)
その日、この男の周りにちょっとしたフィーバーにわき起こった。6月27日の広島戦(横浜)。DeNAの高城俊人捕手が、1960年に巨人・長嶋茂雄が記録した4試合連続三塁打のプロ野球記録に挑んだのだ。
高卒6年目の控え捕手が久しぶりにスポットライトを浴びた。いや、浴びせたと言った方がいいだろうか。実は、高城がこの記録に王手をかけていたことはほぼ誰も知らず、同日付の紙面で私が記事にしたことで一気に知れ渡ったからだ。
それもそのはず。異例づくしのチャレンジだった。まず、高城は主にドラ1左腕・浜口の専属捕手を務め、出場機会は1週間に1度程度。三塁打を記録したのは、5月30日の日本ハム戦(札幌D)、6月6日の楽天戦(山形)、同14日のロッテ戦(横浜)の3試合。連続試合とは言え、約1か月越しという超スロー挑戦だった。
しかも、高城は強肩を生かした守備面の評価は高く、高卒1年目から1軍でマスクをかぶっているが、お世辞にも打撃がいいとは言えない。その時までのプロ通算成績は、268試合に出場して打率1割7分2厘、1本塁打、29打点というものだった。
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足も速くない。俊足を武器に通算74三塁打を記録しているミスターに対し、高城は今季の3本を含めて4本だけ。そもそも、今季のヒット自体がその時点で8本しか打ってなかった。私が本人に取材した際に「誰も気にしてないから、何も言われてないですよ」と苦笑いしていたのも無理はなかった。
それが、当日朝にスポーツ報知の紙面とホームページに記事が掲載され、状況が一変した。家族や地元・福岡の友達、さらには高校時代の担任の先生からも連絡が来たという。球場入りすると、チームメートからはイジられまくった。球場内では、関係者が「ジョーが三塁打を打ったら、ミスターに並ぶらしいよ」とあちこちで話していた。
結果は、2打数無安打で無念の途中交代。ミスターに肩を並べることはできなかったが、試合後に「ボールは見えてたんです。三塁打はともかく、ヒットは打てたかなと思ったんですけど…」と悔しがっていた姿が印象的だった。試合前には「バッティングはどうでもいいです。大事なのはこっち」とミットを構えるポーズを取っていたからだ。
それは、高城のレギュラー奪取にかける思いにほかならない。現在、DeNAの正捕手は3割5分を超える得点圏打率を誇る戸柱が務め、左投手相手にしぶとい打撃を見せる嶺井と併用されている。出場機会を増やすには、打力の向上が絶対条件となっている。
まぐれで3本もの三塁打を打ったわけではない。小川打撃コーチの指導で打撃フォームを改善し、逆方向に強い打球が打てるようになってきた。連日、試合後に居残り特打をしたり、試合中に相手捕手の配球を分析するなど細かい工夫を重ねることで、少ない打席でも結果を出せるようになってきた。
高城は「取り上げてもらったことはうれしいし、みんなから注目してもらえてよかったと思います。ちゃんと見てくれている人はいるんですね」と、あの日を振り返る。もちろん、それで満足しているわけではない。「もっと先発出場を増やしたい。そのためにも、打てないといけないですよね」と話す。
一方で「キャッチャーは投手を勝たせるのが一番。守備がおろそかになっちゃったら意味がない」とも言う。確かに、捕手にとって守備と打撃の両立というのは非常に難しい問題だ。だが、私はアマ野球担当時代に、2011年のセンバツ高校野球で大会タイ記録となる8打数連続安打をマークした高城の姿を目撃している。まだ24歳。打てる捕手の誕生に期待したい。(記者コラム・片岡 泰彦)