まだこれも氷山の一角なのかもしれない。野球賭博への関与を理由に巨人を解雇され、NPBから無期失格処分を受けた笠原将生氏(25)を、サンケイスポーツが独占取材したスクープから表沙汰になった巨人の円陣での「声出し金銭授受」の問題。阪神の四藤慶一郎球団社長も15日、「うちでも似たようなことがあったことは否定しない。ノックでの罰金や円陣での金銭のやり取りがあった」と“発表”。西武の鈴木葉留彦球団本部長も、同日、似たような「ゲン担ぎ」と称したチーム内の現金のやりとりや、投手陣が練習中のノックのエラーなどで罰金を徴収、オフの選手会イベントで使っていた事例を明らかにした。両球団共にNPBの報告したが、おそらく、今後、さらに他球団でも過去の事例が出てくる可能性は高い。
私が知っている限りでも、複数の球団が、罰金を小さい単位の額で、徴収して積み立て、オフのゴルフコンペの賞金にしたり、裏方さんへのお礼をかねた特別ボーナスに回していた。“円陣声出し”のように選手間同士で、現金が動くケースに加えて、監督賞などの各種報奨金の現金授受は、ほとんどの球団で行われてきた。
NPBは、昨年の巨人の内部調査の段階でこの件を把握していたが、「小額であることと敗退行為につながらないこと」を理由に不問に付した。しかし拡大解釈すれば、野球協約の第18章、第177条 (不正行為)の「選手、監督、コーチ、又は球団、この組織の役職員その他この組織に属する個人が、次の不正行為をした場合、コミッショナーは、該当する者を永久失格処分とし、以後、この組織内のいかなる職務につくことも禁止される」の(6)所属球団が直接関与する試合について賭をすることーーに触れる。不問にしたのは、もし“拡大解釈”すれば、巨人だけに留まらないことがわかっていたからだ、と推測される。
確かに「円陣声出し金銭授受」と、反社会勢力とつながる野球賭博への関与の問題は、まったく別次元の話だが、一般の野球ファンからすれば、同じ金と賭けが絡んだ“黒い醜聞”である。
そして「円陣声出し金銭授受」や遊び半分の罰金などを許す甘い環境が、野球賭博への関与問題につながる背景にあるとも考えられる。
この日、熊崎コミッショナーは、「もとより『円陣声だし』事案が協約違反に該当しなくても、かかる行為は許されるものではない上、先の巨人軍3選手の賭博問題を引き起こす要因、背景の1つになったと捉えており、こうした要因、背景のすべてを根絶し、協約違反の行為に至らないよう、かかる行為を含めた野球に関する金銭授受を一切禁止する旨の通達を1月29日に発令し、再発防止策を実施しているものであります。したがってコミッショナー通達以降は、かような行為を行うようなことはないものと確信いたしておりますが、それ以前においては同様の行為が行われている可能性を否定できず、現在、全球団において鋭意、再度確認調査中であります」という声明を出した。
早々と身内の調査結果を表に出してコンプライアンスを厳格に守ろうという姿勢を強く打ち出した阪神と西武の動きは、むしろ評価しなければならないだろう。サンスポの記事に掲載された笠原氏の発言につつかれて事実を認めた“臭いものに蓋をする”巨人のコンプライアンス意識の低さとは対象的だ。
巨人OBで西武、ヤクルトで監督を務めた球界の“大御所”である広岡達朗氏も「円陣声出し金銭授受」の問題については、一定の理解を示した上で、こんな考えを提案する。
「選手同士で声出しをする選手にお金を払っているなんて馬鹿げている。プロなのだから同じチームであっても選手同士はライバル。ゲン担ぎの意味やチームワークの意味を履き違えている。ただ、こういうチーム内での金銭授受の動きは昔からあった。厳密に言えば違いはあるだろうが、大なり小なり、どこの球団でも現金は動いている。
球団や監督から報奨金という形で、活躍した選手に現金が動くし、罰金をとって選手に還元するような場合もあって、どこの球団もやっているだろう。私が広島のコーチ、ヤクルトの監督時代は断じてなかったが、西武の監督になったときに、球団から勝ったゲームに関して、活躍した選手などに、ボーナスのようなお金は出た。私は、こういう風習は良くないと考え、当時の責任者だった根本さん(故・根本陸夫氏、当時西武の編成、管理部長)に“やめましょう”と訴えたが、“球団が出すんだからもらっとけ”と言われ、継続していたことがある。
野球賭博の関与とはまったく違う問題だが、もうここまで色々な問題が出てきた以上、全球団が洗いざらいすべての過去を明らかにした上で、今後、一斉にチーム内の金銭授受はやめる、と線引きすべきだ。コミッショナーも、まるで他人事のような声明を出すだけでなく、もっと責任あるリーダーシップをとるべきで、今後、チーム内での金銭授受が判明したときには、どういう罰則を設けるのかも明文化すべきだと思う。
違反かどうかの判断も第三者委員会の弁護士に任せるのではなくコミッショナーがすべきである。今回、野球協約に照らしてみればという発言も、コミッショナーや巨人のフロントのトップから多く聞かれるが、あの難解な野球協約を理解し頭に叩き込んでいる選手が何人いるのだろう。専門家を呼び野球協約の勉強会も開く必要もある。根本からプロの責任と役割、そして社会人としてのモラルを教育し直す仕組みも作るべきだ」
次から次へと新しい事実が発覚する前に、各球団が早急に“膿を出して”再出発に切り替えなければ、ファンの信頼をますます失い、まともに開幕を迎えることができないのかもしれない。
私が知っている限りでも、複数の球団が、罰金を小さい単位の額で、徴収して積み立て、オフのゴルフコンペの賞金にしたり、裏方さんへのお礼をかねた特別ボーナスに回していた。“円陣声出し”のように選手間同士で、現金が動くケースに加えて、監督賞などの各種報奨金の現金授受は、ほとんどの球団で行われてきた。
NPBは、昨年の巨人の内部調査の段階でこの件を把握していたが、「小額であることと敗退行為につながらないこと」を理由に不問に付した。しかし拡大解釈すれば、野球協約の第18章、第177条 (不正行為)の「選手、監督、コーチ、又は球団、この組織の役職員その他この組織に属する個人が、次の不正行為をした場合、コミッショナーは、該当する者を永久失格処分とし、以後、この組織内のいかなる職務につくことも禁止される」の(6)所属球団が直接関与する試合について賭をすることーーに触れる。不問にしたのは、もし“拡大解釈”すれば、巨人だけに留まらないことがわかっていたからだ、と推測される。
確かに「円陣声出し金銭授受」と、反社会勢力とつながる野球賭博への関与の問題は、まったく別次元の話だが、一般の野球ファンからすれば、同じ金と賭けが絡んだ“黒い醜聞”である。
そして「円陣声出し金銭授受」や遊び半分の罰金などを許す甘い環境が、野球賭博への関与問題につながる背景にあるとも考えられる。
この日、熊崎コミッショナーは、「もとより『円陣声だし』事案が協約違反に該当しなくても、かかる行為は許されるものではない上、先の巨人軍3選手の賭博問題を引き起こす要因、背景の1つになったと捉えており、こうした要因、背景のすべてを根絶し、協約違反の行為に至らないよう、かかる行為を含めた野球に関する金銭授受を一切禁止する旨の通達を1月29日に発令し、再発防止策を実施しているものであります。したがってコミッショナー通達以降は、かような行為を行うようなことはないものと確信いたしておりますが、それ以前においては同様の行為が行われている可能性を否定できず、現在、全球団において鋭意、再度確認調査中であります」という声明を出した。
早々と身内の調査結果を表に出してコンプライアンスを厳格に守ろうという姿勢を強く打ち出した阪神と西武の動きは、むしろ評価しなければならないだろう。サンスポの記事に掲載された笠原氏の発言につつかれて事実を認めた“臭いものに蓋をする”巨人のコンプライアンス意識の低さとは対象的だ。
巨人OBで西武、ヤクルトで監督を務めた球界の“大御所”である広岡達朗氏も「円陣声出し金銭授受」の問題については、一定の理解を示した上で、こんな考えを提案する。
「選手同士で声出しをする選手にお金を払っているなんて馬鹿げている。プロなのだから同じチームであっても選手同士はライバル。ゲン担ぎの意味やチームワークの意味を履き違えている。ただ、こういうチーム内での金銭授受の動きは昔からあった。厳密に言えば違いはあるだろうが、大なり小なり、どこの球団でも現金は動いている。
球団や監督から報奨金という形で、活躍した選手に現金が動くし、罰金をとって選手に還元するような場合もあって、どこの球団もやっているだろう。私が広島のコーチ、ヤクルトの監督時代は断じてなかったが、西武の監督になったときに、球団から勝ったゲームに関して、活躍した選手などに、ボーナスのようなお金は出た。私は、こういう風習は良くないと考え、当時の責任者だった根本さん(故・根本陸夫氏、当時西武の編成、管理部長)に“やめましょう”と訴えたが、“球団が出すんだからもらっとけ”と言われ、継続していたことがある。
野球賭博の関与とはまったく違う問題だが、もうここまで色々な問題が出てきた以上、全球団が洗いざらいすべての過去を明らかにした上で、今後、一斉にチーム内の金銭授受はやめる、と線引きすべきだ。コミッショナーも、まるで他人事のような声明を出すだけでなく、もっと責任あるリーダーシップをとるべきで、今後、チーム内での金銭授受が判明したときには、どういう罰則を設けるのかも明文化すべきだと思う。
違反かどうかの判断も第三者委員会の弁護士に任せるのではなくコミッショナーがすべきである。今回、野球協約に照らしてみればという発言も、コミッショナーや巨人のフロントのトップから多く聞かれるが、あの難解な野球協約を理解し頭に叩き込んでいる選手が何人いるのだろう。専門家を呼び野球協約の勉強会も開く必要もある。根本からプロの責任と役割、そして社会人としてのモラルを教育し直す仕組みも作るべきだ」
次から次へと新しい事実が発覚する前に、各球団が早急に“膿を出して”再出発に切り替えなければ、ファンの信頼をますます失い、まともに開幕を迎えることができないのかもしれない。