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ケガをしたら意味がない 元巨人・鈴木尚広が野球教室で中学生にまず教えたこと?

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↑野球教室を行った鈴木尚広さん

 昨年限りで現役を引退した元巨人の鈴木尚広さん(39)が4月末に、大阪・藤井寺ボーイズのグラウンドで同チームを対象にした野球教室を行った。私も取材で同行した。現役時代は、試合開始の6時間前から本拠地・東京ドームで準備をするなど、ストイックな姿勢を見てきたが、興味があった。子供たちにどのようにして「神の足」と呼ばれた走塁術を教えるのか―。

 「みなさん、こんにちは!」。鈴木さんが笑顔であいさつすると、中学1年生から3年生まで約60人の選手たちの目は輝きまくっていた。同チームの顧問を務め巨人、西武で投手として活躍した岡本光さん(56)は「この子たちが大人の話をこんなにちゃんと聞いていることはないですよ」と感心?するほど、さすがは昨年までの現役選手。自己紹介などを終えると早速、指導へ。鈴木さんを中心に選手が輪になって広がった。

 「はい、じゃあ、まずはストレッチからやります」。

 まずは手と膝をついた状態から、片足を空に向かって、垂直に上げるような動作でふくらはぎを伸ばした。その動作に子供たちは悪戦苦闘。保護者もマネしてみたが、大人でもきつい。その後も股関節を動かす運動を繰り返すなど、野球の技術指導ではなく、体の使い方、ケガをしない体作りについてなどを伝えた。走塁術を伝えたのは、野球教室の終盤の数分だった。

 鈴木さんは子供たちに言った。

 「ケガをしてしまっては野球が楽しくないでしょ? 僕はみんなにケガをしないで野球を楽しんでもらいたいんだ」。

 晩年は走塁のスペシャリスト、代走の切り札として活躍したが、入団間もない頃はケガとの戦いだった。「1年間に3度、骨折することもあって付いたチーム内であだ名は『骨折くん』でした」「うちの母親に『ケガのデパート』と呼ばれてしまった」など、その後、藤井寺市内で行った月刊ジャイアンツ主催のトークショーで笑いを巻き起こしていたが、鈴木のプロとしての成功は、ケガをしない体を作り上げることができたから。強靱な体を作るために大事だったのが、ストレッチであり、体のケア、そして心の準備だった。

 チームで1、2の足の速さを誇る山本勇次くん(中学3年生)は「僕は腰椎分離症で時々、痛みがあります。ケガがあると一番、良くないと鈴木さんが言っていたことに本当にその通りだな、と痛感しました。鈴木さんの体は想像していた以上に柔らかく、驚きました」と感激。チームスタッフによると、野球教室の後、チームではアップやストレッチの時間に多く割くようになり、一生懸命に取り組むようになったという。

 ナインからしてみれば、一生に一度、あるかないかのプロ野球選手の直接指導。鈴木さんはわかりやすく、丁寧に言葉で伝えた。うまくストレッチができない子にも寄り添いながら、教えていた。関係者を通じ、「僕の人生における最高の経験でした、本当にありがとうございました」と山本くんからのメッセージをもらった。鈴木さんにそれを伝えると「何かを吸収しようと感じてくれていることが嬉しいです」と刺激を受けたようだ。多量の汗をかくストレッチには鈴木さんにとって、大きな意味がある。いつか、この60人の中から鈴木さんと再会できる選手が出てきて欲しいなと心から思った。

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