↑12球団のジュニアコーチや野球振興担当者らを対象に行われたベースボール型授業の勉強会
小学校の体育で野球(ソフトボール)をした記憶がありますか? 20代から40代の大半の方は「NO」でしょう。日本人にとって最もなじみ深いスポーツであるはずの野球だが、1977年に小学校の学習指導要領から削除されていた(98年からは「選択科目」)。2011年にようやく「ベースボール型」科目が必修化され、野球が授業の場に戻ってきた。しかし、30年を超える“空白期間”はやはり大きい。何しろ教える先生の多くが「野球を習ったことも教えたこともない」のだから…。
先日、都内で行われたNPB(日本野球機構)主催の「『ベースボール型授業』勉強会」を取材した。参加したのは12球団で少年野球教室や学校訪問などを担当する職員で、その多くは元プロ野球選手。本来、子どもの指導には慣れている人たちなのだが、今回の勉強会にはもうひとつの大きな目的があった。子どもではなく先生を指導するためのノウハウ、つまり「教え方を教える」方法について学ぼうというものだ。
必修化されたとはいえ、現場の先生たちからは「野球は技術もルールも難しい」「授業の進め方が分からない」「バットや硬いボールを使うから危険だ」といった声が相次いでいるという。元プロ選手が学校訪問をしても、短い時間で子どもに伝えられることは限られている。子どもたちと同時に先生にも指導することができれば、その後の授業にも生きるはず―という算段だ。
子どもにも先生にも分かりやすく、が基本。例えば投げ方の指導(右投げ)なら、〈1〉横向きで左手を投げる方向に伸ばし〈2〉右手の甲を頭にトントンと当ててから〈3〉右手と左手をパチンと合わせる、という動作を体操風に繰り返す。ゲーム形式ならルールが分からなくても楽しめるように〈1〉打者がティーに置いたボールを打って走る〈2〉守備側は全員で打球を追い、捕った人の周りに集まってしゃがみ「アウト!」とコール〈3〉それまでに打者走者が2塁に進んでいれば2点、3塁なら3点(1ベース1点)〈4〉3アウトではなくチーム全員が打ったら攻守交代、といった形。
なるほど、これなら右投げなのに右足を前に出しちゃう子や、3アウトでチェンジって知らない子でも大丈夫。体育の科目にしては運動量が少ないという野球の“弱点”もカバーできそう。ちなみに「危険」なバットは、打って走る際に打席横のサークルにきちんと置けたら1点追加だそうだ。
参加した元選手の一人は「少年野球チームを教えるなら、右足を前に出す子はさすがにいないけど、小学校の授業だとあたりまえにいる。そんな子に教える学校の先生って、本当に大変だと思う。次に学校訪問をする時には、今回の内容を参考にしたい」と話した。「ベースボール型」と呼ぶ通り、やっていることは「野球」と少し違うものかもしれない。それでも興味を持つきっかけにはなるだろう。畑に種をまく。自分で耕すだけじゃなく、耕す人も育てる。時間はかかるだろうが、いつか大きな実を結ぶことを切に願う。
小学校の体育で野球(ソフトボール)をした記憶がありますか? 20代から40代の大半の方は「NO」でしょう。日本人にとって最もなじみ深いスポーツであるはずの野球だが、1977年に小学校の学習指導要領から削除されていた(98年からは「選択科目」)。2011年にようやく「ベースボール型」科目が必修化され、野球が授業の場に戻ってきた。しかし、30年を超える“空白期間”はやはり大きい。何しろ教える先生の多くが「野球を習ったことも教えたこともない」のだから…。
先日、都内で行われたNPB(日本野球機構)主催の「『ベースボール型授業』勉強会」を取材した。参加したのは12球団で少年野球教室や学校訪問などを担当する職員で、その多くは元プロ野球選手。本来、子どもの指導には慣れている人たちなのだが、今回の勉強会にはもうひとつの大きな目的があった。子どもではなく先生を指導するためのノウハウ、つまり「教え方を教える」方法について学ぼうというものだ。
必修化されたとはいえ、現場の先生たちからは「野球は技術もルールも難しい」「授業の進め方が分からない」「バットや硬いボールを使うから危険だ」といった声が相次いでいるという。元プロ選手が学校訪問をしても、短い時間で子どもに伝えられることは限られている。子どもたちと同時に先生にも指導することができれば、その後の授業にも生きるはず―という算段だ。
子どもにも先生にも分かりやすく、が基本。例えば投げ方の指導(右投げ)なら、〈1〉横向きで左手を投げる方向に伸ばし〈2〉右手の甲を頭にトントンと当ててから〈3〉右手と左手をパチンと合わせる、という動作を体操風に繰り返す。ゲーム形式ならルールが分からなくても楽しめるように〈1〉打者がティーに置いたボールを打って走る〈2〉守備側は全員で打球を追い、捕った人の周りに集まってしゃがみ「アウト!」とコール〈3〉それまでに打者走者が2塁に進んでいれば2点、3塁なら3点(1ベース1点)〈4〉3アウトではなくチーム全員が打ったら攻守交代、といった形。
なるほど、これなら右投げなのに右足を前に出しちゃう子や、3アウトでチェンジって知らない子でも大丈夫。体育の科目にしては運動量が少ないという野球の“弱点”もカバーできそう。ちなみに「危険」なバットは、打って走る際に打席横のサークルにきちんと置けたら1点追加だそうだ。
参加した元選手の一人は「少年野球チームを教えるなら、右足を前に出す子はさすがにいないけど、小学校の授業だとあたりまえにいる。そんな子に教える学校の先生って、本当に大変だと思う。次に学校訪問をする時には、今回の内容を参考にしたい」と話した。「ベースボール型」と呼ぶ通り、やっていることは「野球」と少し違うものかもしれない。それでも興味を持つきっかけにはなるだろう。畑に種をまく。自分で耕すだけじゃなく、耕す人も育てる。時間はかかるだろうが、いつか大きな実を結ぶことを切に願う。