↑紅白戦3回1死、坂本の三ゴロを三塁手・伊藤が処理する
春季キャンプ中の2月某日、ベンチに張られた紅白戦のスタメンを見て目を疑った。三塁の守備位置に「22」の背番号が記してある。オリックスの22…そう、扇の要として日本代表にも選出されたことのある伊藤光捕手(27)だ。
オープン戦が始まってからも、三塁でスタメンに名を連ねる日が多くなってきた。今季でプロ10年目。かつては捕手としてゴールデン・グラブ賞も獲得した伊藤は、今何を思っているのか。
意外にも、自ら進んで捕手を選んだわけではなかった。小学校で野球を始めた際には投手兼内野手。当時から地元では有名な選手だったという。幼少期は「野球をやるなら捕手以外で、と思っていた。」と冗談まじりに笑うが、中学からチーム事情もあって捕手に転向。その後、女房役としても才能を開花させた。明徳義塾高にも捕手として入学したが、2年時にチーム事情で一時的に三塁にコンバートされたことがあった。当時を思い出し「楽しかったな~。野手だと、守って次は打席のことを考えられるから」と振り返った。
それだけに三塁挑戦を知らされても抵抗はなかった。それどころか「感覚が鈍ってなかった。『意外とできるやん』って自分でもビックリした」と手応えも感じたという。キャンプ中は市販のものや、小島に借りたグラブを使っていたが、3月からはマイグラブで試合に臨む。11日の巨人戦(ほっと)の5回には、石川の三塁線への強い当たりを逆シングルで捕球し観客を沸かせた。軽やかな動きと持ち前の強肩は、見ている側に安心感すら与える。
昨年はライバルの若月が台頭し、出場機会が減少した。試合に出たくても出られない悔しさ。「自分の立場は分かっているから、キャッチャーじゃないといけない気持ちはない。そりゃ、キャッチャーで最後までっていうのが理想ではあるけど。試合には出てナンボ。試合に出られなくて、チームで必要ないってなるのは寂しい。サードでも使えるって評価があるから、頑張れる。やっぱり勝ちたいから」。そう話す目は真っすぐ前を向き、少年のようにキラキラしているようにも見えた。
とはいえ後輩が捕手として試合に出て、自分は違うポジションに就いている。気持ちが腐ってしまっても不思議ではない話だ。なのに、伊藤は「やることをやっているだけ。普通だよ、普通」と笑みを浮かべる。外見だけじゃない、中身までイケメンなのがこの男の怖いところだ。捕手としてこれまで数々の勲章を手にしてきたが、背番号22にとってはそれらはすべて「おまけ」。とにかく試合に出たい、チームの勝利に貢献したい、この強い思いが今の伊藤を突き動かしている。
伊藤が三塁に就くことで、チームには良い効果も生まれている。試合中に捕手が投手の元に行けるのは3回。その回数を使うほどではないが、間を取りたいときが伊藤の出番だ。誰から指示されるわけでもなく、三塁から投手の元に駆けより声をかける。この少しの間があることで、投手は嫌な流れを断ち切り、首脳陣も次の手を考える時間を作れる。そんな姿に風岡内野守備走塁コーチも「ベンチから行けないタイミングでいってくれる。光に触発されて、内野手みんなが(投手の元に)いくようになった」と効果を実感している。
さらに同コーチはこう続けた。「今はチームが変わる時期。小谷野や中島もいるけど、光がサードを守ることで新しいオリックスが見られるのかなと思う。もう1回、輝いてほしいね」。来月で28歳。まだまだ老け込む歳ではない。その名の通りチームの光となってほしい。伊藤のひたむきな姿を見ていたら、そう思わずにいられない。
春季キャンプ中の2月某日、ベンチに張られた紅白戦のスタメンを見て目を疑った。三塁の守備位置に「22」の背番号が記してある。オリックスの22…そう、扇の要として日本代表にも選出されたことのある伊藤光捕手(27)だ。
オープン戦が始まってからも、三塁でスタメンに名を連ねる日が多くなってきた。今季でプロ10年目。かつては捕手としてゴールデン・グラブ賞も獲得した伊藤は、今何を思っているのか。
意外にも、自ら進んで捕手を選んだわけではなかった。小学校で野球を始めた際には投手兼内野手。当時から地元では有名な選手だったという。幼少期は「野球をやるなら捕手以外で、と思っていた。」と冗談まじりに笑うが、中学からチーム事情もあって捕手に転向。その後、女房役としても才能を開花させた。明徳義塾高にも捕手として入学したが、2年時にチーム事情で一時的に三塁にコンバートされたことがあった。当時を思い出し「楽しかったな~。野手だと、守って次は打席のことを考えられるから」と振り返った。
それだけに三塁挑戦を知らされても抵抗はなかった。それどころか「感覚が鈍ってなかった。『意外とできるやん』って自分でもビックリした」と手応えも感じたという。キャンプ中は市販のものや、小島に借りたグラブを使っていたが、3月からはマイグラブで試合に臨む。11日の巨人戦(ほっと)の5回には、石川の三塁線への強い当たりを逆シングルで捕球し観客を沸かせた。軽やかな動きと持ち前の強肩は、見ている側に安心感すら与える。
昨年はライバルの若月が台頭し、出場機会が減少した。試合に出たくても出られない悔しさ。「自分の立場は分かっているから、キャッチャーじゃないといけない気持ちはない。そりゃ、キャッチャーで最後までっていうのが理想ではあるけど。試合には出てナンボ。試合に出られなくて、チームで必要ないってなるのは寂しい。サードでも使えるって評価があるから、頑張れる。やっぱり勝ちたいから」。そう話す目は真っすぐ前を向き、少年のようにキラキラしているようにも見えた。
とはいえ後輩が捕手として試合に出て、自分は違うポジションに就いている。気持ちが腐ってしまっても不思議ではない話だ。なのに、伊藤は「やることをやっているだけ。普通だよ、普通」と笑みを浮かべる。外見だけじゃない、中身までイケメンなのがこの男の怖いところだ。捕手としてこれまで数々の勲章を手にしてきたが、背番号22にとってはそれらはすべて「おまけ」。とにかく試合に出たい、チームの勝利に貢献したい、この強い思いが今の伊藤を突き動かしている。
伊藤が三塁に就くことで、チームには良い効果も生まれている。試合中に捕手が投手の元に行けるのは3回。その回数を使うほどではないが、間を取りたいときが伊藤の出番だ。誰から指示されるわけでもなく、三塁から投手の元に駆けより声をかける。この少しの間があることで、投手は嫌な流れを断ち切り、首脳陣も次の手を考える時間を作れる。そんな姿に風岡内野守備走塁コーチも「ベンチから行けないタイミングでいってくれる。光に触発されて、内野手みんなが(投手の元に)いくようになった」と効果を実感している。
さらに同コーチはこう続けた。「今はチームが変わる時期。小谷野や中島もいるけど、光がサードを守ることで新しいオリックスが見られるのかなと思う。もう1回、輝いてほしいね」。来月で28歳。まだまだ老け込む歳ではない。その名の通りチームの光となってほしい。伊藤のひたむきな姿を見ていたら、そう思わずにいられない。