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大田泰示が日本ハムで開花させた新たな魅力とは

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↑アリゾナキャンプで力強いスイングをみせる大田泰示

 アリゾナの青空に快音が響き渡る。巨人からトレードで日本ハムに新加入した大田泰示(26)は、1月29日の1軍合同自主トレ初日のフリー打撃で柵越えを連発した。確率の高さを求めてセンター方向中心の打撃が多かった昨年までと明らかに違う、力強いスイング。左中間の117メートルを軽々超える打球も披露し、栗山英樹監督(55)を「このポテンシャルの高さ持っていて、いままで活躍できなかった理由が分からない」とうならせた。

 2008年にドラフト1位で巨人に入団。8年間でレギュラーとして活躍した年はない。「どうしようかなというくらいの気持ち」で漠然と過ごしてきたこれまでのオフ。だが、急転直下のトレードが未完の大砲の意識を変えた。「やるしかない。自分のスタイルを確立したい」。考えた末に浮かんだのは、自分の力を100%ボールに伝えるスイングをすること。それは、ヒットを打つことを重視していた巨人時代には見失いかけていた自分自身。本来のストロングポイントである長打力を生かし、新しいチームで定位置を奪うと心に決めた。

 慣れない環境が大田の意識をさらに研ぎ澄ませた。新天地では知っている選手はほとんどいない。自分と向き合う時間が増えた。チーム全体で動く練習は巨人より2時間ほど短く、その後は個人に任される。慣れない環境は苦労もあるが、効率を考えながら自ら考えて動くことは新鮮だし、自分の力になっている実感もあった。宿舎に戻ってからはストレッチに時間を費やす。15年のオープン戦では好調を維持してレギュラーを期待されたが、左太ももを肉離れした。その反省が生かされている。

 元巨人で走塁のスペシャリストだった鈴木尚広氏(38)はこう話す。「良い選手になるためには、孤独な時間が絶対に必要になる。そこで自分にはどういう能力があってどこを伸ばしたらいいのか、どのようにチームに貢献できるか考えられるんです」。優しく、人懐こい性格で自然と周りに人が集まってくる大田が生まれ変わるためには、新天地はうってつけの場所かもしれない。

 取り組みは形となって現れ始める。現地で2月8日に行われた韓国KTとの練習試合に「3番・中堅」で先発し2本の二塁打を放つなど3打数2安打2打点と強烈にアピール。5回に放った二塁打は2球で追い込まれたが、ファウルで粘って6球目を左中間に運んだ。これまでは2ストライクから中途半端なスイングで打ち取られることが課題だったが、この日は甘く来た球をしっかりと叩けた。「100%のスイング」を心がけた結果だ。

 「泥臭く、心から野球を真剣に取り組みたい」と大田。持ち前のはじけるような笑顔に加えて、真剣な眼差しと孤独な表情を見せるようになった。自分のスイングを信じて野球人生の正念場に立ち向かう26歳は、被写体として、いままで以上の魅力に溢れている。(記者コラム 写真部・矢口亨)

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