↑真剣な表情でバットを見つめる陽
巨人に新加入した選手の本音に迫る「巨大戦力が来た」。第2回は日本ハムからFA(フリーエージェント)移籍した陽岱鋼外野手(30)にスポットを当てる。走攻守3拍子そろった台湾のスタープレーヤーは、なぜ新たな戦いの場に巨人を選んだのか。5年契約で巨人に骨をうずめる覚悟を示した男が、頼りにしているチームメートの名前から守備の極意、そして引退後の夢まで、本音を語った。(聞き手・長井 毅)
達筆な字で「優勝」の二文字を記した。宮崎キャンプ初日。陽は宿舎近くの青島神社の絵馬に願いを込めた。
「チームとしてはリーグ優勝、そして日本一。個人としては143試合全試合に出ること」
力強い口調で今季の目標を語る姿には常勝軍団の一員となった自覚が表れていた。
1月末の合同自主トレから2週間が経過し、自身を支えてくれる存在もできた。主将の坂本勇だ。2歳下の“弟分”とはすでに何度も食事に出掛けた。
「いろいろ教えてくれて、チームの決まりや、門限とか。(出発時間より前に集合する)ジャイアンツタイムとか」
初めは環境の変化に戸惑いもあった。
「練習の長さも明らかに違いますし、周りにスターがそろっているので、気持ちの面でやられる部分もある。首脳陣も監督をはじめ、江藤打撃コーチ、二岡打撃コーチ。若い頃から憧れていた人たちが自分のコーチをしている。キャンプ初日は緊張しましたね」
11年間、慣れ親しんだ球団から巨人のユニホームに袖を通すことを選んだ。
「11年間、日本ハムでプレーさせていただいて本当に感謝していますし、自分もさらに成長しないといけないと思い、移籍しました。悩んだし、『もっともっと成長しないといけない』と自分にいつも言い聞かせてきた。巨人はスター選手が大勢いる。その中でレギュラーを勝ち取りたい、勝負したいと思い、決断した」
巨人は球界屈指の選手層の厚さを誇る。FA加入の選手も例外なく競争が待っている。
「若い選手もグイグイ頑張っているのでプレッシャーを感じている。怖い部分もありますけど、勝負の世界。まだ若い選手に負ける気はしない」
今年は対戦経験の少ないセ・リーグの投手に挑む。パ・リーグの投手との違いは何なのか。
「セ・リーグの投手は打席に立つので、打者目線の投球ができると思う。そういう考え方がおもしろい。打者の気持ちが分かる部分です。交流戦で対戦した時に配球の読みが外れたことも結構あった」
待っている球は何か、そして苦手なコースをどう攻めれば攻略できるかを打者目線で探るのが得意だと感じている。だが、それを「おもしろい」と捉えられるのが陽の強さだ。そして、まだ超えられていない壁に挑む挑戦者としての自覚も忘れていない。
「毎年3割を目標にしてきて、『3割の壁』を感じました。今年は何としても3割打ちたい」
昨季は打率2割9分3厘だった。それでも広島との日本シリーズでは控えに回る屈辱も味わった。探求心が衰えていないからこそ、巨人入団を選択をした。
守備では昨季、2年ぶりにゴールデン・グラブ賞を獲得。守備範囲の広さと確実性は最大の武器で、2年連続通算5度目のタイトルに照準を合わせる。
「守備面も僕のウリ。毎年取れるようにと思っている。セ・リーグも守備がうまい選手がそろっている。その中でも勝たないといけない。自分のところに飛んだら投手が安心してくれるのが理想。センターに打ったら陽がいるから大丈夫だなと安心してくれたらいい」
右、左中間はもちろん、フェンス際の打球をさばく能力も高いが、重きを置いているのは最初の一歩目だ。
「予備知識を頭に入れておかないといけない。ただ打席に立っている人のことだけを考えるのではなく、次の打者が誰だとか味方の投手の特徴とかも頭に入れないと、一歩目のスタートが切れない。投げる前にデータを整理しないといけない」
9日からは最終クールが始まる。より実戦に近いメニューが増える。レギュラーに近い位置にいることは間違いないが、安泰ではない。ここからのアピールが大切だ。
「巨人には良い打者がたくさん。打順はどこでもいい。理想の打球は左中間、右中間に鋭い打球を飛ばすこと。それを考えながらやっていきます」
5年総額15億円超という大型契約を結んだ。「生涯巨人」を望む声も多い。
「まずは結果を出さないとそうも言えない。そうなればいいですけど、まずは今年の結果です」
いずれは引退の日を迎えることになる。その時のことをすでに考えているのも、明るい陽らしさなのかもしれない。
「(バイクの)ハーレーダビッドソンが好き。かっこいいですよね。めっちゃ乗りたい。引退したら、ツーリングしたいんですよ。後はサーフィンもしたい。やったことないんですけど」
まずは東京Dのファンに華麗な守備と勝負強い打撃を披露しなくてはいけない。これまでお立ち台では「サンキューで~す!」が決めぜりふだったが、今年はどうするのか。
「まだ決まってないですが、球団がOKなら自由にやらせてほしい。楽しみにしていてください。その前に活躍しないといけないですけどね(笑い)」
◆陽 岱鋼(よう・だいかん)1987年1月17日、台湾生まれ。30歳。国民体育中から福岡第一高に野球留学した。2005年高校生ドラフト1巡目で日本ハムに入団。12~14、16年と4度のゴールデン・グラブ賞獲得、13年には盗塁王。台湾代表として06、13年のWBCに出場した。183センチ、89キロ。右投右打。
巨人に新加入した選手の本音に迫る「巨大戦力が来た」。第2回は日本ハムからFA(フリーエージェント)移籍した陽岱鋼外野手(30)にスポットを当てる。走攻守3拍子そろった台湾のスタープレーヤーは、なぜ新たな戦いの場に巨人を選んだのか。5年契約で巨人に骨をうずめる覚悟を示した男が、頼りにしているチームメートの名前から守備の極意、そして引退後の夢まで、本音を語った。(聞き手・長井 毅)
達筆な字で「優勝」の二文字を記した。宮崎キャンプ初日。陽は宿舎近くの青島神社の絵馬に願いを込めた。
「チームとしてはリーグ優勝、そして日本一。個人としては143試合全試合に出ること」
力強い口調で今季の目標を語る姿には常勝軍団の一員となった自覚が表れていた。
1月末の合同自主トレから2週間が経過し、自身を支えてくれる存在もできた。主将の坂本勇だ。2歳下の“弟分”とはすでに何度も食事に出掛けた。
「いろいろ教えてくれて、チームの決まりや、門限とか。(出発時間より前に集合する)ジャイアンツタイムとか」
初めは環境の変化に戸惑いもあった。
「練習の長さも明らかに違いますし、周りにスターがそろっているので、気持ちの面でやられる部分もある。首脳陣も監督をはじめ、江藤打撃コーチ、二岡打撃コーチ。若い頃から憧れていた人たちが自分のコーチをしている。キャンプ初日は緊張しましたね」
11年間、慣れ親しんだ球団から巨人のユニホームに袖を通すことを選んだ。
「11年間、日本ハムでプレーさせていただいて本当に感謝していますし、自分もさらに成長しないといけないと思い、移籍しました。悩んだし、『もっともっと成長しないといけない』と自分にいつも言い聞かせてきた。巨人はスター選手が大勢いる。その中でレギュラーを勝ち取りたい、勝負したいと思い、決断した」
巨人は球界屈指の選手層の厚さを誇る。FA加入の選手も例外なく競争が待っている。
「若い選手もグイグイ頑張っているのでプレッシャーを感じている。怖い部分もありますけど、勝負の世界。まだ若い選手に負ける気はしない」
今年は対戦経験の少ないセ・リーグの投手に挑む。パ・リーグの投手との違いは何なのか。
「セ・リーグの投手は打席に立つので、打者目線の投球ができると思う。そういう考え方がおもしろい。打者の気持ちが分かる部分です。交流戦で対戦した時に配球の読みが外れたことも結構あった」
待っている球は何か、そして苦手なコースをどう攻めれば攻略できるかを打者目線で探るのが得意だと感じている。だが、それを「おもしろい」と捉えられるのが陽の強さだ。そして、まだ超えられていない壁に挑む挑戦者としての自覚も忘れていない。
「毎年3割を目標にしてきて、『3割の壁』を感じました。今年は何としても3割打ちたい」
昨季は打率2割9分3厘だった。それでも広島との日本シリーズでは控えに回る屈辱も味わった。探求心が衰えていないからこそ、巨人入団を選択をした。
守備では昨季、2年ぶりにゴールデン・グラブ賞を獲得。守備範囲の広さと確実性は最大の武器で、2年連続通算5度目のタイトルに照準を合わせる。
「守備面も僕のウリ。毎年取れるようにと思っている。セ・リーグも守備がうまい選手がそろっている。その中でも勝たないといけない。自分のところに飛んだら投手が安心してくれるのが理想。センターに打ったら陽がいるから大丈夫だなと安心してくれたらいい」
右、左中間はもちろん、フェンス際の打球をさばく能力も高いが、重きを置いているのは最初の一歩目だ。
「予備知識を頭に入れておかないといけない。ただ打席に立っている人のことだけを考えるのではなく、次の打者が誰だとか味方の投手の特徴とかも頭に入れないと、一歩目のスタートが切れない。投げる前にデータを整理しないといけない」
9日からは最終クールが始まる。より実戦に近いメニューが増える。レギュラーに近い位置にいることは間違いないが、安泰ではない。ここからのアピールが大切だ。
「巨人には良い打者がたくさん。打順はどこでもいい。理想の打球は左中間、右中間に鋭い打球を飛ばすこと。それを考えながらやっていきます」
5年総額15億円超という大型契約を結んだ。「生涯巨人」を望む声も多い。
「まずは結果を出さないとそうも言えない。そうなればいいですけど、まずは今年の結果です」
いずれは引退の日を迎えることになる。その時のことをすでに考えているのも、明るい陽らしさなのかもしれない。
「(バイクの)ハーレーダビッドソンが好き。かっこいいですよね。めっちゃ乗りたい。引退したら、ツーリングしたいんですよ。後はサーフィンもしたい。やったことないんですけど」
まずは東京Dのファンに華麗な守備と勝負強い打撃を披露しなくてはいけない。これまでお立ち台では「サンキューで~す!」が決めぜりふだったが、今年はどうするのか。
「まだ決まってないですが、球団がOKなら自由にやらせてほしい。楽しみにしていてください。その前に活躍しないといけないですけどね(笑い)」
◆陽 岱鋼(よう・だいかん)1987年1月17日、台湾生まれ。30歳。国民体育中から福岡第一高に野球留学した。2005年高校生ドラフト1巡目で日本ハムに入団。12~14、16年と4度のゴールデン・グラブ賞獲得、13年には盗塁王。台湾代表として06、13年のWBCに出場した。183センチ、89キロ。右投右打。