巨人の大型補強がストーブリーグの話題を独占した。
日ハムとの吉川光夫、石川慎吾と、大田泰示、公文克彦との2対2トレードに始まり、FAで横浜DeNAの山口俊、ソフトバンクの森福允彦、そして、日ハムの陽岱鋼の入団も秒読み段階となっている。3人同時のFA獲得は史上初で、そこに新外国人として元楽天のケーシー・マギーと契約を交わし、ブルペン強化に今季、パイレーツ、マリナーズで57試合に登板したアルキメデス・カミネロをリストアップしている。
FAは、いずれも複数年契約を提示してのもので外国人も含めた補強総額は、20億円以上と見られているが、20億円という巨額マネーを聞いて思い浮かべるのが、同じく超大型補強をしたものの実を結ばなかった2015年のオリックスの悪夢だ。大型補強イコール優勝の方程式が100パーセントでないのが、143試合を戦うプロ野球の摩訶不思議な魔力なのである。
前年に最終決戦までソフトバンクと優勝を争ったオリックスは2厘差でペナントを逃した。宮内オーナーの号令下、優勝へ足りなかったワンピースを埋めるために、日ハムからFAした小谷野栄一を西武との争奪戦の末に獲得、メジャー挑戦中だった中島裕之の凱旋を巡っては、阪神、楽天、西武、中日らとの競争に勝ってゲットした。さらに中日、横浜でプレーしていたブランコ、先発投手陣強化のため広島から9勝8敗のバリントンまで補強した。FA金子千尋の残留も決まり、総額30億とも40億とも言われる大型補強に成功、開幕前にはダントツの優勝候補として名前が挙がった。しかし、スタートからチームの歯車が噛み合わずに最下位を低迷。6月初旬の交流戦時に、早々と森脇監督が途中休養となった。
そのオリックスの過去の惨劇が今オフの巨人の補強に重なってファンの憶測を呼ぶことになっている。
巨人もオリックスの二の舞になりやしないか? という懸念だ。
「あの時のオリックスとは補強の中身が違う。故障持ちの小谷野は、1年フルに働けない危険があったし、中島もアメリカでの故障があった。ブランコは膝に不安があって、そもそもガラスのような脆さのある補強だった。しかも、中島の守備位置もなかなか確定しないなど、明確なチームの弱点を埋めるのではなく、選手を揃えて層を厚くすることが目的の補強だったのでバランスが崩れてチームにハレーションを起こしていた。
だが、今回は山口はシーズン終盤に肩を痛めたものの頑丈さが定評だし、森福にも故障不安はない。マギーは日本での実績があり外国人にしてはリーダーシップもとれる選手。トレード組では吉川はDHがないセでは結果を出すと思う。脇腹を痛めていた陽については不安はあるが、ピッチャーだけはいくら増えてもしわ寄せは生まれず、センターラインにターゲットを絞った補強のバランスは評価できる。私は、オリックスのときような大型補強のマイナス要素は出ないと予想する」
阪神、ダイエー、ヤクルトでプレーした評論家の池田親興氏は、今回の巨人の大型補強が2年前のオリックス化する危険性は低いと見ている。
横浜DeNAに敗れたCSの戦いが顕著だったように、今季、先発で2桁をマークしたのは田口麗斗一人だけで、エースの菅野智之に続く先発陣が不安だった。その巨人の最大のウィークポイントを先発実績を持つ山口、吉川の2人で埋めたことへの期待は大きい。また好不調の波が出てきた中継ぎ左腕の山口鉄也の負担を森福は軽減するし、新外国人は長いシーズンを考えると、マシソン、沢村らのサポートにもなる。
FAで移籍してきた選手には、「自分のことしか見えない、考えられない」という傾向が生まれるが、ピッチャーだと、そういう利己主義はチームのマイナス要素にはならない。
広島とチーム本塁打数差が25本あったことを考えると、一発のあるマギーが加わることは、その差を埋める作業となるし、2年目のギャレットが不安定のままなら、クルーズを含めて外国人に競争意識を持たせ、好不調、怪我などのアクシデントに備えることにもなる。備えで言えば、マギーの存在は、村田、阿部らベテラン勢が、内野に居座るチームの不安を解消することにもなるだろう。
巨人がバランスに気を配った大型補強を仕掛けたのは自身が持つトラウマかもしれない。
1994年に、伝説の10・8決戦で高木・中日を破って優勝、日本一となった長嶋巨人は、連覇を狙ってそのオフに大型補強を仕掛けた。ヤクルトから広沢克己とジャック・ハウエル、広島から左腕エースの川口和久をそれぞれFA補強。資金力と巨人ブランドを背景にした大補強で、開幕前にはV2有力と評論家予想されたが、終わってみれば川口がわずか4勝、広沢は20本塁打、72打点の数字にまとめたが開幕直後は大不振で、結局、ペナントレースでは3位に敗れ、野村克也監督のヤクルトが優勝した。
「あのときの巨人は、広沢、落合、ハウエル、松井と大型バッターをそろえたが、小技や機動力を持ってつなぐバッターがいなかったためバランスが崩れた。ビッグネームを揃えれば勝てるというわけでなく、チームバランスが重要。今回は、野手で言えばスピードのある陽を若手がポジションを奪いきれなかった外野の一角に加え、ベテランの村田任せとなっていた三塁、チャンスに弱かったギャレットをマギーで埋めようという補強だから、バランスも取れている。
それと失敗の可能性が低いのは、他球団の補強状況にもある。横浜DeNAは、2桁勝利の山口を抜かれ、その穴は未知の新外国人。広島は2桁勝ったチーム支柱の黒田が引退した。阪神は糸井をFAで取ったがゴメスが退団して一塁が空いたまま。他チームとの相関関係で考えても、巨人の戦力プラスが目につく。間違いなく優勝候補でしょう」と、前述の池田氏。
他球団にすれば大型補強した巨人の死角を探したいだろうが、マギーの加入で、外国人と村田の起用についてポジションがだぶり、ベンチが迷う部分と、陽がフル活動できるのか、吉川がセ・リーグの野球にアジャストできるのか、の3点くらいしかネガティブな要素は見つからない。勝って当然のプレッシャーをはねのけて外国人起用の問題を2年目の高橋由監督がどう裁くのか。いずれにしろ大型補強に成功した巨人を中心に来季のペナントレースは動きそうだ。
日ハムとの吉川光夫、石川慎吾と、大田泰示、公文克彦との2対2トレードに始まり、FAで横浜DeNAの山口俊、ソフトバンクの森福允彦、そして、日ハムの陽岱鋼の入団も秒読み段階となっている。3人同時のFA獲得は史上初で、そこに新外国人として元楽天のケーシー・マギーと契約を交わし、ブルペン強化に今季、パイレーツ、マリナーズで57試合に登板したアルキメデス・カミネロをリストアップしている。
FAは、いずれも複数年契約を提示してのもので外国人も含めた補強総額は、20億円以上と見られているが、20億円という巨額マネーを聞いて思い浮かべるのが、同じく超大型補強をしたものの実を結ばなかった2015年のオリックスの悪夢だ。大型補強イコール優勝の方程式が100パーセントでないのが、143試合を戦うプロ野球の摩訶不思議な魔力なのである。
前年に最終決戦までソフトバンクと優勝を争ったオリックスは2厘差でペナントを逃した。宮内オーナーの号令下、優勝へ足りなかったワンピースを埋めるために、日ハムからFAした小谷野栄一を西武との争奪戦の末に獲得、メジャー挑戦中だった中島裕之の凱旋を巡っては、阪神、楽天、西武、中日らとの競争に勝ってゲットした。さらに中日、横浜でプレーしていたブランコ、先発投手陣強化のため広島から9勝8敗のバリントンまで補強した。FA金子千尋の残留も決まり、総額30億とも40億とも言われる大型補強に成功、開幕前にはダントツの優勝候補として名前が挙がった。しかし、スタートからチームの歯車が噛み合わずに最下位を低迷。6月初旬の交流戦時に、早々と森脇監督が途中休養となった。
そのオリックスの過去の惨劇が今オフの巨人の補強に重なってファンの憶測を呼ぶことになっている。
巨人もオリックスの二の舞になりやしないか? という懸念だ。
「あの時のオリックスとは補強の中身が違う。故障持ちの小谷野は、1年フルに働けない危険があったし、中島もアメリカでの故障があった。ブランコは膝に不安があって、そもそもガラスのような脆さのある補強だった。しかも、中島の守備位置もなかなか確定しないなど、明確なチームの弱点を埋めるのではなく、選手を揃えて層を厚くすることが目的の補強だったのでバランスが崩れてチームにハレーションを起こしていた。
だが、今回は山口はシーズン終盤に肩を痛めたものの頑丈さが定評だし、森福にも故障不安はない。マギーは日本での実績があり外国人にしてはリーダーシップもとれる選手。トレード組では吉川はDHがないセでは結果を出すと思う。脇腹を痛めていた陽については不安はあるが、ピッチャーだけはいくら増えてもしわ寄せは生まれず、センターラインにターゲットを絞った補強のバランスは評価できる。私は、オリックスのときような大型補強のマイナス要素は出ないと予想する」
阪神、ダイエー、ヤクルトでプレーした評論家の池田親興氏は、今回の巨人の大型補強が2年前のオリックス化する危険性は低いと見ている。
横浜DeNAに敗れたCSの戦いが顕著だったように、今季、先発で2桁をマークしたのは田口麗斗一人だけで、エースの菅野智之に続く先発陣が不安だった。その巨人の最大のウィークポイントを先発実績を持つ山口、吉川の2人で埋めたことへの期待は大きい。また好不調の波が出てきた中継ぎ左腕の山口鉄也の負担を森福は軽減するし、新外国人は長いシーズンを考えると、マシソン、沢村らのサポートにもなる。
FAで移籍してきた選手には、「自分のことしか見えない、考えられない」という傾向が生まれるが、ピッチャーだと、そういう利己主義はチームのマイナス要素にはならない。
広島とチーム本塁打数差が25本あったことを考えると、一発のあるマギーが加わることは、その差を埋める作業となるし、2年目のギャレットが不安定のままなら、クルーズを含めて外国人に競争意識を持たせ、好不調、怪我などのアクシデントに備えることにもなる。備えで言えば、マギーの存在は、村田、阿部らベテラン勢が、内野に居座るチームの不安を解消することにもなるだろう。
巨人がバランスに気を配った大型補強を仕掛けたのは自身が持つトラウマかもしれない。
1994年に、伝説の10・8決戦で高木・中日を破って優勝、日本一となった長嶋巨人は、連覇を狙ってそのオフに大型補強を仕掛けた。ヤクルトから広沢克己とジャック・ハウエル、広島から左腕エースの川口和久をそれぞれFA補強。資金力と巨人ブランドを背景にした大補強で、開幕前にはV2有力と評論家予想されたが、終わってみれば川口がわずか4勝、広沢は20本塁打、72打点の数字にまとめたが開幕直後は大不振で、結局、ペナントレースでは3位に敗れ、野村克也監督のヤクルトが優勝した。
「あのときの巨人は、広沢、落合、ハウエル、松井と大型バッターをそろえたが、小技や機動力を持ってつなぐバッターがいなかったためバランスが崩れた。ビッグネームを揃えれば勝てるというわけでなく、チームバランスが重要。今回は、野手で言えばスピードのある陽を若手がポジションを奪いきれなかった外野の一角に加え、ベテランの村田任せとなっていた三塁、チャンスに弱かったギャレットをマギーで埋めようという補強だから、バランスも取れている。
それと失敗の可能性が低いのは、他球団の補強状況にもある。横浜DeNAは、2桁勝利の山口を抜かれ、その穴は未知の新外国人。広島は2桁勝ったチーム支柱の黒田が引退した。阪神は糸井をFAで取ったがゴメスが退団して一塁が空いたまま。他チームとの相関関係で考えても、巨人の戦力プラスが目につく。間違いなく優勝候補でしょう」と、前述の池田氏。
他球団にすれば大型補強した巨人の死角を探したいだろうが、マギーの加入で、外国人と村田の起用についてポジションがだぶり、ベンチが迷う部分と、陽がフル活動できるのか、吉川がセ・リーグの野球にアジャストできるのか、の3点くらいしかネガティブな要素は見つからない。勝って当然のプレッシャーをはねのけて外国人起用の問題を2年目の高橋由監督がどう裁くのか。いずれにしろ大型補強に成功した巨人を中心に来季のペナントレースは動きそうだ。