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日ハム・田中の「併殺崩し」猛スライディングの是非

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北海道日ハムとソフトバンクの3回戦(3日・東京ドーム)で、その是非が問われるプレーがあった。シーンは、0-1で日ハムが1点を追う6回無死一、三塁。中田翔(26)の打球は、併殺におあつらえ向きの三塁ゴロ。ベース寄りのゴロをシングルキャッチした松田宣浩(32)は、三塁走者を牽制して二塁へ送球したが、ベースに入ったセカンドの川島慶三(32)の足元に田中賢介(34)が猛烈なスライディングを仕掛けた。両足を払われた川島は、転倒。その間に、三塁走者が同点ホームを踏んだ。

 工藤監督は、「走路を外れた危険なプレーではないか」と5分間にわたって猛抗議をしたが、審判団の判定は、「ベースに向かっていた」と、覆らずに守備妨害は取られなかった。
 川島は、痛みでプレーが続行できずに退場。病院で診察を受けたところ、骨に異常が見られない打撲で、大事に至らなかったことだけは幸いだが、ソフトバンクは、連盟に意見書を提出することになった。

 一方、このプレーから逆転に成功した栗山監督は、「どうスライディングをしたのかという細かいところは見ていないが、賢介(田中)としては仲間を助けるために一生懸命やったこと」と、“隠れたファインプレー”と評価した。

 このスライディングは果たして審判のジャッジ通りの併殺崩しに成功したプロの最高のテクニックを使ったチームプレーだったのか、それとも工藤監督が抗議するような危険なスライディングだったのか。

 元千葉ロッテの評論家、里崎智也氏は、ファインプレーという見立てだ。

「ひとつの方向からの映像しか見ていないのですが、田中のスライディングは足を上げていないし、スパイクの裏も見せていません。ベースを抱え込むように体の半分はセカンドベースに向かっていますから、守備妨害ではないと思います。今までもあれくらいのスライディングは何度もありましたし、チームの得点を誘いこむ好スライディングだと賞賛されてもいいと思います。メジャーでは今季から危険な併殺崩しのスライディングは禁止になるそうですが、現時点で日本では禁止されていません。ルールの範囲内でのプレーなわけですから問題はないでしょう」

 おそらく里崎氏の見立てが今回の審判団の見解と同じだろう。

だが、ビデオをよくよく見ると、川島は併殺を狙いにいったわけではなく、本塁を狙った三塁走者を封じ込めようと、ホームベース側に体を向け、走者に背中を見せて、ホームベース方向に送球しようとする動作をしていた。その川島に田中が、後ろから強烈な足払いを仕掛けたのだから、川島にすれば避けようがなかった。走路を外れた危険なスライディングと判定されて守備妨害を取られてもおかしくなかっただろう。
 
 メジャーでは今季から併殺崩しを狙う二塁ベース上の危険なスライディングを禁止とする新ルールが導入される。昨年は、二塁上での危険なタックルスライディングを受けたパイレーツの姜正浩が、左すね骨折と靱帯断裂を大怪我を負い、メッツのテハダも右すね骨折をするなど、選手生命を脅かす事故が多発して、選手会を中心に禁止のルール化を要望する声が強く生まれ、新ルールを導入するに至った。守備妨害だけでなく打者もアウトになるという厳しいルール。

 メジャーでプレーした日本人の内野手も、2009年に当時レイズの岩村明憲(現在BCリーグ福島)が左膝の前十字靭帯を断裂、2011年にはツインズの西岡剛(現・阪神)が左すねを骨折するなど、危険なスライディングの洗礼を受けている。

 日本でもメジャーに習い、今季から本塁での危険なクロスプレーを禁止する「コリジョンルール」が採用されたが、来季以降は二塁ベース上の危険なスライディングの禁止ルールの採用も前向きに検討されている。昨年の12球団監督会議では、二塁上の「併殺崩し」に関する意見も交わされた。
 
 ただ、現状のルールでは、走者がギリギリのプロの最高テクニックを使ったチームプレーを仕掛けることは合法である。内野手側にも、怪我を避けるための準備と、併殺崩しを成立させないテクニックが求められる。その攻防も、またプロの醍醐味なのかもしれないが、ファンも選手も怪我のシーンだけは見たくない。

 それを「未熟」のひとことでかたずけるのは乱暴だろう。審判団が、走路を外れ怪我を誘発する危険なスライディングであったか、どうかを見極めることが難しいことは確かだが、球界の流れが危険なスライディング禁止に向かっているのであれば、“明らかに”走路を外れた危険なスライディングに対しては、今まで以上に厳しく守備妨害と判定する方向性は必要だろうと思う。

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